いろんな経済評論家が、農業の現場で大規模化・効率化を導入すればコストダウンが出来る、とよく言います。現在行われている集落営農なんかまさにそういう観点からの政策でしょうが、現場にいるものとして、農業を効率化するってことがどうもピンときません。
普通、製造業などで「効率化」として行われるのは、大きく分けると二つの方向があると思います。
a:一つの品物にかかる手間・時間を減らす。
b:一定の時間あたりで出来る仕事量を増やす。
この二つは普通は同時に行われ、aを目指した結果bも達成されることが多く、式や記号で表現するとまるで同じことになりますが、現実的には両者に違いはあります。aは仕事の成果を一定とするのに対し、bは時間が一定になります。
そして稲作の場合、aの方針を採ることが無理なのです。ここが農業の特別な点で、農業において効率化するとなるとbのみを行う事になります。
なぜaが無理かというと話は単純で、稲作において、例えば夏にどれだけ仕事を工夫して頑張っても、収穫時期が早くなるわけではないからです。基本的に稲作は5月に田植えして9月に稲刈りするというスケジュールは不変で、7月にメチャクチャ仕事をしたから8月上旬に収穫なんてわけには行きません。また、1年1作も不変です(よほど気候条件に恵まれた場所ならば2期作が出来たりはしますけど)。つまり頑張っても時間は短くならないし、よしんば多少短くなったとしても単に暇になるだけなのです。
となると可能な効率化は、少ない人数でたくさんの田んぼを作り、1年・1人当たりの収穫量を増やす事になります。
いや、暇な時間が出来るなら出来るで、他の作物を作ったらどうだ?との指摘もあるかと思いますが、他の作物だって作るべき時期がありますし、そもそもどんな作物であっても、一人前に市場に出せるようなものを作るのはかなりの投資と技術の蓄積が必要です。なおかつ儲けるとなると、そんな簡単な品物などもはや存在しません。
自家消費程度の野菜なら作る事は出来ますが、一般に販売するとなるとこれはもう全然別物と言っていいです。
さて稲作で効率化となれば本質的に大量生産の道となることは先ほど書きましたが、しかし、現在は過剰作付け・過剰生産で困っているのが米です。大量生産なんてしてもらっちゃ困るんですね。つまり、こっちの方向でも実はダメなんです。
先日のNHKのライスショックで、農地を集約して大型機械を入れる、集落営農を行えばコストは2割カットできるとしている、と紹介していました。これは例えば、5人の農家が作業に4時間ずつ費やしていたところに対し、大型機械を入れて早い作業が出来るようになれば、2人の農家が8時間ずつの労働で出来るようになり、20時間対16時間で2割減だ、と言ったことでしょう。
しかしこれは計算間違いです。4時間減った、という事は数字上は一人ぶんの作業が浮いた事になりますが、実際の現場ではこの一人がどっかに行ったわけではなく、ちゃんと存在しているのです。つまり2割削減は単に無駄な暇人を作り出しただけなんです。普通の会社ならば無駄な人員をクビにするなりすればコストカットになりますが、集落営農では全員が主体ですからカットするわけには行きません。
では浮いた時間分新しい農地を増やせばどうか、といっても集落営農の場合は最初に集まった土地以上の面積は絶対出てきません。そういう縛りを外したとしても、それでも農地は有限で、しかもその限界はアメリカや中国などと比べて遥かに小さいものです。面積で負けるとどうしようもないのはここなのですね。
大型の農業機械についても問題です。例えば、従来の3倍の効率で仕事が出来る機械を導入して、それのイニシャル及びランニングコストが従来の2倍程度で済むなら経費節減になりますが、農業機械の場合は3倍の効率を持つ機械はちゃんと3倍のお値段になります。農業機械やそれの修繕費を値引きしてくれれば、すごいコストカットになるんですけどねえ。
農業の効率化とはぶっちゃけると、いかに小規模農家を潰して、そのぶんの面積を大規模農家に集めるかが鍵なのです。小規模農家を潰せば、そこにかかっていた経費は節減出来ます。しかしそこにはもちろん批判が集まっていますし、簡単に出来る事ではありませんが。
そして、だからこそ集落営農は絶対成功しないのです。集落営農ではいくら農地が集約できても人員が減るわけではありません。人が暇になっても分け前ゼロなんてことには絶対になりません。先日のNHKの放送でもありましたが、集落営農の為の打ち合わせを持っても、参加者全員が自らの利益について主張する為、話はまずまとまりません。主張を潰そうとすれば、その人は集落営農から外れていくので、組織そのものが瓦解するでしょう。
だいたい、実は、効率化を勧める役所とかJAが指導してるやり方って典型的な高コスト農業なんですよね・・・はっきり言って今どき、JAから農業機械や資材を買っている時点でダメ。集約営農の場合は、土木工事や機械購入などはJAを通すように強力に指導されますからね。
・・・んー、なんかまとまらないなあ。
koume