倒伏


 刈り取り前に稲が倒れてしまうことを倒伏(とうふく)と言います。割とよく見られる光景です。


 写真くらいの倒伏はまだ大したことがありませんが、酷いのになると田んぼ全面がべったり倒れることがあります。倒伏が酷くなると稲刈り作業に大きな負担となり、手間も時間もものすごくかかりますし、米の品質にも悪影響が出ます。


 さてこの倒伏について、有機農法信者のウェブページなどでは、農薬を使ったり化学肥料で育てた米は倒れるが、有機農法なら大丈夫、的な意見をよく見ることが出来ますが、それは違います。
 倒伏に大きく関与する要素は肥料と水の管理です。化学肥料を使うよりも有機肥料を使ったほうが倒れにくい、と言うことはたしかに出来ますが、どちらにしてもそれらを適切に使うことが重要です。つまり肥料を使いすぎず、少なすぎず、使うタイミングを誤らずです。あまり肥料を与えすぎると稲の背がひょろ高くなってしまい、高い稲は倒れやすくなります。また施肥の時期を誤ると、本来は横に太るはずの稲がやはり縦に伸びることがあり、倒れやすくなります。
 有機肥料を使うほうが根が深く入り倒れにくくなるのですが、使い方が間違っていれば意味がありません。逆に化学肥料も巧く使えば問題ありません。


 水管理も重要です。今年の8月はほとんど雨が降らずに大変な天気になりましたが、だからと言って田んぼにずーっと水を入れずに乾かしておいたら秋にはぐっしゃり倒れます。かといって逆に、ずーっと水を入れっぱなしにしておくと、土がゆるゆるに柔らかいままではやはり倒れます。今年は倒伏の田んぼ、多いです。


 結局は手間と技術が物を言うわけです。安易に農薬のせいになどは出来ません。


 ところで、倒伏には2種類あります。ひとつは、稲の田面からの生え際は上に向かって立っているが、途中からだらんと曲がって穂に至っては地面についてしまっていると言うもので、これは「曲がっている」と言います。もう一つは、生え際からしてすでに折れて、べったり地面についてしまっているもので、こちらは「折れている」と言います。そのまんまですが。


 稲刈りの作業に当たっては、曲がっている状態ならそう問題ではありません。しゃんとした状態に比べれば手間はかかりますが、さほど重態とはいえません。曲がっているだけなら、稲もまだ生きています。
 しかし倒れているのは本当に困りもので、こちらは重症です。稲はすでに死んでいます。と言っても籾までいきなり死ぬわけではありませんが、刈り取りにかかる手間は曲がっている稲に比べても遥かにかかります。
 両者の違いは田面付近を見なくてもわかり、つまり曲がっている稲はまだ緑色を保っていますが、折れている稲は死んでいるので茶色くなります。よく言う藁の色です。非常に柔らかく、脆くなり、根っこごと簡単に抜けるようになり、コンバインの中に泥とともに入っていって内部を傷つけます。
 また、生きている稲についている籾は、曲がって地面に触れ水に漬かってもどうと言うことはありませんが、折れた稲が地面についた場合、放置しておくと発芽します。稲穂に籾がついたままに発芽している図は結構気持ち悪いものがあります。稲が生きている時は決して発芽しないのが面白いところです。


 倒伏の方向によっても作業性が変わったり(コンバインの進行方向に対して、横や向こう側に倒れているなら刈り取りできるが、こちら側に向かって倒れこんでいる稲はものすごく難しいです【迎え刈りと言う】)、単純に見える作業ですが結構細かくいろいろあります。


koume