世間の方はあまりご存知でないようですが、大規模専業農家といっても田んぼや畑などの農地を全部自前で持っているわけではありません。20ヘクタール作っているとか言ってもほとんど9割以上が借地であって、農家自らが所有している農地など微々たる物です。理由は簡単で、農地を取得したり所有する事が非常に不利な仕組みになっているからです。
最近よく読ませていただいているブログの「あめんぼ通信」
では、新規に田舎に行って就農するならば農地は必ず借地で賄うべきであって、購入などもってのほかとよく書かれていますが、私も同感です。
さてまず取得となるとネックになるのが農地の評価額です。農地には、そこで行われうる農業生産に関する評価に加えて、宅地や商業地に転換した際の評価まで加味されます。つまり農地取得には純粋に農業用地として考える場合をはるかに超える金額がのしかかるわけです。
これを本当に農地のみの評価としてしまうと、最初っから用途転換を考えてる人にとって有利すぎると言う理屈がつきそうですが、不動産の事は何にも知らずに言いますが、それならそれで用途転換する際に費用が発生するという仕組みには出来ないものなんでしょうか?今のままでは農業する人のみにコストが押し付けられていると感じます。
次に、農地は土地ですが、農家にとっては生産設備に相当するものだと思います。他のものに例えれば、農地は工場のようなものであって、工場が建っている土地とはちょっと性質が違うような気がします。
しかし、農地は減価償却の対象になりません。ということは農家の経営においては、農地を取得したらそれを手放すまでずーっと莫大な資金が固定されてしまうわけで、大きな無駄となっています。農地は老朽化しないと言われればそれまでかもしれませんが、不公平感は感じます。
さて冒頭に書いたとおり、農地のほとんどは借地です。
ここまでは所有する事の不利を書きましたが、借地であるからこその問題もあります。土地の所有者と耕作者の間にある問題です。所有者と言っても最近は昔と違って大地主みたいな人はいませんが、細かく分割された土地を様々に借り受けて耕作しています。ちなみに遊休農地対策で斡旋、なんて仕組みでもほとんどは貸し出す形での斡旋であって、購入を勧めるものではありません。
農家は地主から土地を借り、そこでの耕作については自由な裁量があります(耕作権)。例えばどんな作物・品種を作るかとか、どういう作り方を行うかなどです。ただ耕作権があるとはいっても所有権までが移動するわけではないので、その間の板ばさみで問題が起こる事があります。例えば地主は未だに、土地を貸したら取られるんじゃないかとの恐怖感があるようで、長期の貸し出しは出来ないとか、そもそも貸し出す事に抵抗を感じる人はいるようです。
ほかに所有者と耕作者が違う事によるすれ違いで大きいものに、設備投資が出来ない点が上げられます。農地の設備投資とは、主に用水路、農業用道路、及び客土です。
これらは耕作者には必ず必要なものですので、例えば用水路がろくに機能していない田んぼはぜひ予算を入れて整備したいところですが、耕作者にとって自分の所有物ではない田んぼに勝手に工事を入れることにはためらいがあるし、そもそもなんで他人の土地を整備してやらにゃならんのだの気持ちもあります。実際、せっかく素晴しい用水路を作ったとしても、地主から「この田んぼは宅地にしちゃうから、来年からはもう作らないでくれ」と言われれば全くの無駄になります。
では整備は地主に頼もうかと思っても、用水路などは地主にとっては必要かといえばそうとは限りませんので、ほとんど期待は出来ません。安い金で出来る事でもないし、耕作の苦労もよくわからない事がほとんどなので、整備に積極的な地主などヤンバルクイナくらい珍しいのではないでしょうか。
また、先ほど大地主はいないと書きましたが、実際に田園地帯に行くと田んぼ一枚ごとに所有者が違う事もあります。ところで用水路や農道はある1枚の田んぼ専用と言う事はほとんどなく、たいていは何枚もの田んぼで共用となります。ということは整備する場合、ある1枚の田んぼ部分のみを整備しても意味がないのでして、ある用水路を整備するならその用水路の恩恵を受けている田んぼの地主全員が納得した上での作業と言う事になります。なので、時たま整備に熱心な地主がいたところで、たいていは意味がないのです。1人でも消極的な人がいれば頓挫してしまうのです。
なので、用水路や農道が整備されるのは、自分たちの仕事ではなくて県や市の整備事業となるような予算が付かない限りほとんど無理となります。
ただ、農業振興を国策などと民主党あたりが言うのであれば、こんな用水路や農道の整備などは国が全て率先して行うべきではないかという考えもあります。このようなものは多分に公共的な性質を持っていると感じるからです。他の、なんだかよくわからない補助金などよりははるかに実になると思いますし、それでこそ初めて中山間地の遊休農地が少し条件良くなるかもしれません。
なんか細かい事ばかり言ってる感じですが、全部切実です。
koume