旅行から帰ってきたとたん、農業業界(稲作限定だけど)に大激震という感じのビッグニュースが入って超びっくりです。朝刊読んでたまげました。
全農 コメ前金引き下げ 市場価格反映、半額程度に
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2007080802039442.html
全国農業協同組合連合会(全農)は七日、理事会を開き、各県本部や農協などを通じ農家からコメの販売委託を受けた際に前金として支払う「仮渡し金」を大幅に引き下げることを決めた。
価格予想に基づき事前にほぼ全額を渡していた方式を改め、最初に支払う代金を低めに設定する。実需や市場価格をより反映した方式に移行することが狙い。一九七〇年代前半から続く政策の約三十五年ぶりの大幅改定となる。
今後、地域組織や全国農業協同組合中央会(全中)などとの協議を通じ価格水準を決め、今年秋からの実施を目指す。
コメの市場価格がほぼ定まる年末までに不足があれば、早期に追加代金を農家に支払う。関係者によると、銘柄や産地ごとに六十キロ当たり約一万円から約一万五千円だった「仮渡し金」を七千円程度に引き下げることを軸に検討している。
これまでは市場実勢が「仮渡し金」を下回った場合は、全農などJA(農業協同組合)グループが損失をカバーするケースが多かった。JAにとっては、事前に支払う額を減らし損失リスクを回避する効果もある。
ただ、生産者は収穫時の手取り金額が減る。農協によっては、全農が持つ全国の販売ルートに頼らず、独自ルートの流通量を増やしたり、農家側も有利な条件を求めて民間業者へ販売を委託する動きが広がりそうだ。
全農は近年、コメの消費量が減り価格予想が困難になってきたとしている。仮渡し金の情報を知った民間業者が、より安い価格でコメを販売し、市場価格の下落につながるケースも増えていた。
これはつまり、農家手取りの大幅値下げです。追加代金を支払うなんて言っていますが、そんな確約は全くありません。JAが小売相手に安価でマッチングしてしまえば追加なんか発生しないし、コメの在庫がだぶついて価格が定まらなければいつまでも追加しなくても構わない。しかも、それらを実行するのはJA自身なので、実際には市場実勢が例年並になったとしても農家には隠しておけばいいだけの話で、追加など正直に払う必要はなく、ごまかしに走るだろうとは容易に想像出来ます。
もともと、JAが小売相手に営業交渉して少しでも高くコメを入れようと動いているなんて話は聞いた事がありません。むしろ、消費者圧力に負け続けてガンガンに価格を下げ続けているのが実際の話で、農家のために頑張ろうなんてことは一切考えないのがJAクオリティです。
もちろんこの記事に書かれている情報からも、この制度がJAの都合のみによってひり出されたものであって、農家の都合など一切無視している事はよくわかります。また、この記事の最後の部分など噴飯物です。
> 全農は近年、コメの消費量が減り価格予想が困難になってきたとしている。仮渡し金の情報を知った民間業者が、より安い価格でコメを販売し、市場価格の下落につながるケースも増えていた。
新制度を入れても、仮渡し金7000円って言っちゃってるじゃん!市場価格がこれを元に動く事は見え見えじゃないっすか?
また、生産者にとっては収穫時の手取りが減るどころではありません。
稲作の出費は普通、春にその大部分が出ます。肥料や育苗資材などを買うのは全て春です。しかし収入はほとんどが秋です。というわけで、JAや最近ではホームセンターでは、春に買うものの支払いについてはツケを認めて、秋に収入があった時にまとめて払うというシステムがあります。この支払いに当たっていたのが仮渡し金です。
ところが仮渡し金がこれほど減額となると、ツケを全部清算できない可能性があります。というか、できません。何しろ4割引です。
こんなときのツケの支払いはJAは全然待ってくれません。追加代金がいつ出てくるか、というか本当に支払われるかどうかすら不明ですが、とりあえずJAへのツケを清算するために借金をする必要に迫られる事になり、農家に対してポンと金を貸す銀行などないし、肥料代などに適応する制度資金などもありません。たぶん消費者金融に手を出すしかないんじゃないかなと思います。
しかもこの制度、この秋からやるなんて言ってます。正気ですか?偉い人たちってのは本当に、自分たちが負担しない形の制度を施行するのは早い!自分たちが持つ既得権益を手放す方向への改革はちっとも進まないのに!
これではJAにコメを入れてる農家は農業を辞めろと宣言しているに等しいです。この秋からやるって事で、こんな馬鹿げた仕組みを回避する方法もありません。他の業者だって、仮渡しがどえらく安くなるのはわかってるんですから、値を吊り上げるなんてことは絶対しません。仮渡し7500円がせいぜいでしょうか。
こんな制度を出してくる意味は何なんでしょうか。農家に利益は一切ありません。農家の利益だけを考えろとは言いませんが、農家が潰れればJAも存在自体がなくなるはずです。また、理屈だけで言えば、農協法ではJAは私欲を追求せずに農家の利益をひたすら願わねばならないと決まっているのです。
実はコメの生産費だってちゃんとした資料があるんです。農水省は「60kg当り米生産費累年統計」なんてのを出していて、それによると60kg当り約15000円かかってることは内訳と共にしっかり出てるんです。現在ですら、それを完璧無視した価格でやってるというのに、ここからさらに値下げなんて、全農は財政諮問会議の糞たれどもの「米価は政策誘導で高値安定してしまっている」って妄言に誘導されたのでしょうか?
実は今日、ある会合があり、内部事情をちょっと知ってる人と話してたのですが、実際に現場にいるJA職員も困り果てているそうです。全農からこんな話が降りてきても、とても農家には伝えられないと。そりゃそうだと思います。ちなみにうちはJAには米一粒たりとも出してないので、他人事といえば他人事である意味顛末が楽しみなのですが、それにしてもうちだって市場価格にはある程度引っ張られるので大変です。そもそも、JAに出してる農家を全部潰してしまうような事態になれば、地域によってはこっちだって仕事の継続が難しくなります。
このニュースを読んだ時、あ、これでJAは潰れたと思いました。農家のJA離れはもともと(JAの中では)問題と言われていましたが、これはもうJA離れにターボチャージャーをつけたようなものです。一撃必殺北斗神拳ですね。というかこんな腐れ全農なんかぶっつぶれてしまえばいい。
ところで私がこれを知ったのは今朝の朝刊だったのですが、この記事のすぐ下に「原材料高騰 大企業5割『収益大きく圧迫』」ってのがあって、なんかのギャグかと思いました。コメだって原価上がってますけどー。この配置、狙ってるのだとしたら新聞記者のセンスも見直すべきかも。
koume