suzuさんも紹介してきたこの雑誌を買ってきました。
http://dw.diamond.ne.jp/number/070721/index.html
週刊ダイヤモンド(以下、WD)は去年も一冊買って、そのときはフード・ファディズムを取り上げたものでしたが、よかったです。今回も面白いです。ただし、去年買ったやつもそうでしたが、食品業界の中に本当にいる者としてはちょっと掘り下げ不足を感じます。日頃あまり食糧問題に触れていない方にとってはちょうど良いのかな。
今回はフード・ファディズム問題には触れず、日本の食料自給率や世界の食糧事情などについての特集で、かなり強く警鐘を鳴らすものとなっています。
日本の食料自給率は、低いことは国内でも有名ですが、数字だけの知識にとどまっていると感じます。それもまあ当然で、自給率40%といいながら飢えて困っている人など誰もいず、むしろ世界トップクラスの飽食国家となっています。これで食料の欠乏が目前に迫っているといわれても誰も信じません。
WDにも書いてありましたが、日本の食糧事情についての大きな問題は、食料なんか金を出せば何とでもなると誰もが思っていることです。確かに現在の日本は、相当のお金を出して食糧を買い集めています。その買い方もかなり贅沢で、ほとんどが高級品ばかり。最近の事情としては、非遺伝子組み換えのものばかり指定して買うという贅沢も見逃せません。ダイズやトウモロコシなど、世界的に見れば遺伝子組み換えでないものの方が珍しい食品はたくさんあります。
今後何が困るといって、最近はよくテレビでも報道されますが、バイオエタノール産業の拡大で穀物の価格が急騰することです。ブラジルなどでは他の作物を作るのをやめてトウモロコシに転換し、しかもそれでも足りないとなっています。
日本人の主食は米とされていますし、今でも実際にどこに行っても米を食べる機会が多いので「日本は米の国」との認識は結構一般的だと思いますが、実はそうではなくて日本はトウモロコシの国だとの見方があります。トウモロコシを日常的に食べている人などそうそういないので実感がありませんが、これの回答は簡単で、牛や豚などを育てる畜産の飼料として大量に消費しているからです。またビール、繊維、プラスチックなどへの消費もバカにならず、実際に国内消費量を比べると確かトウモロコシの方が米よりも多かったはずです。
しかも日本では、飼料用の穀物は未だに非遺伝子組み換えのものしか許されません。畜産には詳しくないのですが、許されないと言っても、法的に決まっているわけではなかったと思います。これはほぼ100%消費者への風評被害対策で、実質的には何の意味もない行為ですが、ある意味法律で決まっているよりも対応に困るタチの悪い事柄です。日本人は安心にどえらいコストを要求しますので(自分たちは払わないけど)。
近年はトウモロコシ自体の価格も上がっているのに非遺伝子組み換えのものなど余計に少なく、畜産業者は悲鳴を上げています。少ないだけならまだしも、今後はそもそも商品として魅力のない(日本の畜産市場くらいしか売るところがない)非遺伝子組み換え穀物など作らなくなることも予想されるので、今はまだ買えるだけマシなのかもしれませんが。
バイエタは燃料にはなっても食えませんので、増産するなら食料全体のパイを削ることになります。そうなると日本は本当に困ることになります。金を出しても食料が買えない状況が訪れるからです。
そもそも食糧の輸出は、ごく単純に見れば、自国で余った食料を外に出しているだけと言えます。自給率110%の国があれば、10%が輸出市場に流れます。その10%が、食品として輸出するよりも儲かる道があれば切り替えても特に問題はありません。その道にバイエタ産業が台頭しているわけです。自国を飢えさせてまでも日本に食糧を輸出する物好きがいない限り、金を出しても食料を買えないなんて事態は簡単に訪れます。商品のないスーパーではいくら金持ちでも用無しです。
今回のWDではほかにも中国の食糧輸入国化など、いろいろなことに触れた内容でしたが、悲しかったのは一部の政策に関する評価です。例えば41ページには
(前略)ある農水省関係者は、「最大の問題点は、米の生産調整が続いて高いままの価格が維持され、農地改革が忘れられていること」と指摘する。
生産調整をやめ価格が下がれば、やっていけない零細農家は農地を大規模農家に貸し出す。地代で稼ぐほうが得だからだ。国はその地代に相当する補助金を大規模農家に直接支払えばいいというのだ。
農家にとってみれば、規模が拡大すればコストは下がり、生産性は上がる。米の価格は下がるが、そのぶん米の需要増が期待できる。そうすれば農家側も増産する好循環になると言うわけだ。
これは以前、財政諮問会議の議事録にあったことと同じ内容ですが、馬鹿げています。米の価格が高止まり!?寝言も程々にしてもらいたい。今の米の価格で、充分な利益が出ているとでも思っているのか。
ある大規模農業法人の社長は、米の価格の原価は農家からの出荷価格で1俵17000円だと言っています。私もだいたいそんなものかと思います。しかし今の全国的な相場の平均はだいたい13000円ほどです。これはここ数年にわたって1割ずつくらい下がってきた価格で、全然高止まりなどしていませんし、今後も同じ程度下がり続けるだろうと言われています。今が底値だと信じたいところですが、そんな保障はどこにもありません。もちろんこれは平均なので、地方によっては12000円だとか9000円だとか言うところもあります。むしろ13000円なら御の字と言う人のほうが多いかもしれません。
大規模農家にしてみれば、こんな価格では、規模を拡大してもそのぶん赤字が増えるだけです。規模拡大でコストが下がるなんてのは机の上だけの話で、規模拡大とは何より人件費拡大となる農業では普通の工場と同じ理屈では動きません。
たぶんですが、諮問会議の馬鹿どもが高止まりと言うのは、ダイズや麦と比べて高いと言う意味だと思います。麦なんか米の半値ですからね。
しかし私は強く言いたいのですが、どんな高い米でも、茶碗一杯のご飯で絶対に100円しません。せいぜい30円くらいです。30円で買えるものはほかに何がありますか。米は5キロくらいまとめて買うことが多いので錯覚がありますが、充分に安いんです。
ほかにも、品目横断的経営安定対策について妙にピントずれなことが書いてあったり(あれはむしろ、医療行政もびっくりなハシゴ外しが本質)、細かく見るといまいちな内容もありましたが、全体的にはお勧めです。
ただ、一番書いて欲しかったことは、消費者へ向けて「これ以上安い食品を求めないで欲しい」との声です。これさえ徹底していただければ農政など何もいりません。ミートホープ事件も、根底にあったのはこの点だと思います。私はミートホープ社長の擁護をするつもりは一切ありませんが、気持ちはわかると言いたかった部分はあります。
koume
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