私はいつも、農薬批判を批判していますが、無農薬栽培の技術やそれによって出来た作物そのものが気に食わないわけでは決してありません。気に食わないのは「間違った」有機礼賛であり、「間違った」農薬批判です。普通の農家や農薬そのものにも非難されるべき点は当然にあり、正しい批判まで叩こうなどとは全く考えていません。特に、化学合成農薬の主成分のほとんどは石油由来であり、エネルギー問題から見てもこのまま農薬を使い続けられる保証はどこにもなく、そういう意味では農薬の使用量を減らす正しい減農薬栽培技術は必要かつ重要です。(余談ですが、この点で最も期待がもてる技術が遺伝子組み換えなのですが、これはこれで意味なく忌避されているのが現状ですね)

 ただし重要なのはあくまで「正しい技術」であって、なんでもかんでも減農薬あるいは有機が正しいわけではないのがいつもの私の考えです。


 有機農法には大きく分けて2種類あります。もちろんそれは正しい有機と間違った有機の2つですが、具体的には、「工夫・人力・諦めに基づいた有機栽培」と「無登録農薬栽培」です。

 前者は病害虫防除や除草などの農薬が受け持っていた仕事を工夫でこなす技術で、大概の場合は大幅な手間を伴います。あるいは防除しきれないという諦めも必要です。重要なのは、害虫や病気などの発生そのものを抑えることです。それらの害は一旦出てしまえば、農薬を使わずに完全に防除することは非常に難しく、お手上げとなります。それでも有機栽培にメリットを見出すならそれは余人が口出しすべきでなく、成功するなら正しい有機農法と言えるでしょう。

 後者は「農薬」は使わないが、代わりに別の物質を使って病害虫の被害を押さえ込もうと言う方法です。有名な資材として例えば、木酢液HB-101などがあります。農薬じゃない物質を使っているから無農薬なのだと言う理屈ですが、これはいろいろ問題のある方法で、簡単に言えば法律違反も含んでいます。


 まず一つは、代わりになる資材自体の安全性は確保されているわけではありません。農薬は全て、多様でものすごく厳しい試験をクリアして登録されるのですが、反対にHB-101などはそれらの試験を受けていません。社内での、本来の試験に比べるとごく簡単としか言えない自主検査が行われているだけです。これではどう考えても、代わりになる物質のほうが本当の農薬よりも高リスクであるといわざるを得ません。木酢液などはかなり高い発ガン性が予想されます。これらの資材は「原料が天然素材である」などとわけのわからない理由で販売されていますが(ホームセンターや、なんとJAの窓口でも!)、天然物質にも危ない物はいくらでもありますし、だいたい本物の農薬だってかなりの種類が天然素材のみによって作られています。

 次に、農薬と言う名称は本来は機能名です。人が座るのに都合がいい構造をしていればかなり変わった形でも椅子と呼ぶように、農薬とは、害虫や病気を防除したり雑草を枯らしたりなど、栽培作物を生産するに当たって使用される薬の総称なのですね。このように使用目的での分類で言えば、先にあげた、代わりになる資材だって立派な農薬の一つです。ただ、農薬として使用されるには本来は、決められた試験を課して登録を行う必要がありますから、木酢液などは違法な無登録農薬と言うことになります。

 そういう意味で私は、「代わりの資材」を使う有機農法のことを「無登録農薬栽培」と呼びます。これは農薬取締法違反な上、生産者にとっても消費者にとってもハイリスクです。


 有機栽培でも慣行栽培でも減農薬でも、何をやってもかまわない。しかし本当に重要なのは作物の味や安全性、生産性であって、どういう方法で作られていても美味しければいいと思うのですが、そういうことをないがしろにして単に「有機」にこだわった結果が無登録農薬栽培だと思います。「有機栽培」自体に価値などありません。美味しい野菜を造るために有機栽培を行う、となったとき初めて価値が出るのです。しかし、今の世の中には間違った価値がつけられた「有機」が蔓延しています。


koume