前回、日米交渉が決裂寸前まで行き、その元凶である山岡が政治家たちから責められる中、同僚の栗田が助け舟。事の収拾は私に任せて欲しいと願い出ますが、最悪の事態を引き起こした人物の同僚に収拾を任せるのは、普通は絶対避けることでしょう(笑
で、なぜか栗田と仲のいい美食界の大物・海原雄山が、彼女の依頼で一肌脱ぐことに。アメリカ上院議員フォスターに備前焼、鮒寿司、日本酒を振舞います。これらは米と繋がりが深く、そういう事例を紹介して「日本では米作とは重要な文化であり、そうそうカリフォルニア米を受け入れるわけにはいかない」と言うようなことを言い、フォスターは一応納得します。
ただ私に言わせると、米を日本の文化だと言う人はたいてい、米を作っていない勝手な評論家です。実際に米を作っている農家の数を見てみろ。圧倒的少数じゃないか・・・まあ日本の伝統芸能ってどれもそんな感じですけど。いっそのこと、大規模農家を無形文化財扱いにしろ。
で、いい感じで終わりそうだったところにまた山岡がしゃしゃり出ます。「日本猿を見に行きませんか。」
ここで舞台は「猿の楽園」と言う場所に移ります。動物園なのかサル園なのかはよくわかりませんが、モデルは地獄谷野猿公苑でしょうか。この話に出てきた関係者も一堂に集まり、山岡の説明を待ちます。
そして登場するのが、生来腕に異常を抱える奇形の猿。
(以下引用)
角丸副総理 「なぜだ!?なぜそんなにハンディキャップのある猿が、こんなに生まれたんだ。」
猿園管理人 「当園は40年ほど前に開園しましたが、こんなにハンディキャップのある猿は昔は生まれなかった。
何年か前にハンディキャップを持って生まれてくる猿が現われ、その数が一時は増え続けたのです。
大原社主 「理由は何なんです?」
猿園管理人 「農薬と除草剤だと言われています。」
角丸 「なに!」
(以上引用)
猿の奇形は、1984年くらいに話題になりました。四肢の無い猿の写真が紹介され、原因が飼料の残留農薬とされ、「こんな危険な農薬を・・・」と言うエコノミストがたくさん登場しました。
さてこの話ですが、まあ農薬と除草剤を別にしているのはご愛嬌ですが、それは別として酷い欺瞞です。何故か。猿の奇形は農薬のせいではないからです。
農薬を最初に疑ったのは特に科学的な根拠があったわけではなく、残留農薬と奇形の発生との間には何の関連も無かったことは1986年の農薬学会ですでに発表されています。現在では、この奇形の原因は「人間による餌付け」と言う人工的な生育環境、ずっと同一の群れの中で、個体が移動しない為に起こった近親相姦による不自然な血統の配合等が考えられています。
で、1984年にそういう話をするならともかく、山岡君は92年ごろにこういう話を出しているのだから、最新のニュースを知らないか、あるいはわざと他人を騙す為にこういうことを言っているわけです。もちろん、猿園の管理人も同罪です。
まあ100歩譲って、「農薬のせいだと言われています」と言うのは正しい。今でもこんな話をする人はいるからです。ただ「言われているだけで、真実ではない」という事です。
そもそも野性の奇形猿という存在はどういうものか?生まれてすぐ死ぬか、生まれてすぐ殺される(猿に限らず動物は、奇形児を殺してしまう習性がある。生き延びていけないから)ものです。猿園の場合は人工的に管理されているために、生かすことができると言うだけのことです。監視していれば、奇形児の発生もすぐわかります。実は奇形は野生の猿にも結構生まれるそうです。わからないだけで。
1984年11月、日本モンキーセンターで「’84いのちのフェスティバル」が開催されました。このとき奇形猿に関するシンポジウムが持たれたのですが、その総括が某大学教授によって某新聞に記事として載ったそうです。全体的に農薬を疑う文章だったそうですが、最終的には「農薬の催奇形性の調査に関して、自治体や国も積極的に取り組むべきである」という趣旨のことが書かれたそうです。
しかし実は、農薬はもともと、催奇形性について徹底的に調べられている物質なのです。この大学教授が言うような事は、すでにやっている。山岡君たちが知らないだけです。
農薬による催奇形性はラットとウサギで実験され、3世代分調べられます。餌に農薬を混ぜて与えたラットから生まれたラットに農薬を食べさせ、出来た子供に奇形が無いか、調べます。少しでも奇形があれば農薬として認められません。ラットと人では種差があるのはもちろんですが、農薬の残留基準は種差を考慮した安全率が掛けてある上に、このときラットに与えられる農薬は桁違いの量です。
もっと決定的には、農家は普通の消費者の数百倍、農薬工場で働く人はさらにその数百倍の農薬に暴露されていますが、それらの人の子供に奇形児が多いというデータは一切ありません。
「農薬を悪者にしておけば、とりあえず安心」と言う考え方は昔からあり、奇形猿の事例などはその代表的なものだと思いますが、そんな悪質な誤解のせいでいったい今までいくらの無駄が出ているか、考えるだけで恐ろしい。実際、毎年「風評被害が怖い」と言うただそれだけで、安全性などに何の問題も無い大量の農産物が廃棄され、農薬の登録にはすさまじく厳しい試験が必要な為に、その試験結果を示すデータはファイルにして厚さ2メートルに及ぶほどです。
実際、いわゆる化学物質の中で、農薬ほどに調べつくされているものはほかに類を見ません。農薬の害を言う人はいったい、他の物質に対して何を知っているのでしょうか?
koume