徳島新聞社説 担い手育成を急ぎたい

 農業従事者が数年前と比べて10%程度減少している、っていう記事は、しばらく前の「商経アドバイス」(主に、米販売業者が読む業界紙です)にも載っていました。確か全国での数字だったと思うので、その状況が徳島にだけ限定されているわけではないと思います。自分が感じている現況もそんな感じで、そしてこれからもっと加速しそうな勢いです。


 それに対して、農政はいろいろやろうとしているわけですが、なんだか遠い場所での話という感じがしてあまり興味が持てません。うち個人の感想ではありますが、というのも、農政は基本的には「JA中心」がまず前提としてあり、JAとほとんど取引をしない立場としてはほとんど蚊帳の外という気分なのでした。そして、それでも不具合は感じないというか。


 さて記事ですけど、

> 農林水産省は先月末「経営安定対策大綱」を決定した。
> すべての農家を対象にした品目別の補助金のばらまきをやめ
> 「担い手」と呼ばれる大規模農家などに助成を集中する施策である。

 社会全体に誤解があって、こういう表現は典型的だと思うんですが、農家には補助金なんかほとんど付いてません
 補助金がばら撒かれているのは実際のところ、JA、鉄骨屋、農機具メーカーなどであって、農家にお金が入ることはまずありません。


 今は新しい仕組みが検討されているのですが(記事にもある、「担い手」優遇政策)、過去の仕組みの場合は、農家がいくつか集まって営農組合を作り、何か新しい仕事を目標として計画した場合、機械や施設などにかかるお金をある程度の割合で(最高50%)出してもらえたのが、農業の補助金制度です。


 ちゃんと出てるじゃん、と思えますけど、実はこの中には

1:あくまで「新しい仕事」にしかお金は出ない
2:あくまで、機械や施設を導入するための補助
3:計画通りの仕事を、5年程度継続しないと全額没収
4:すべての取引はJA通し
5:100%補助と言うわけではない
6:個人には出ない

と言うそれぞれの問題がありました。

 1:つまり、今やっている仕事で新しい機械が必要になったと言っても補助は出ず、たとえば米農家なら野菜とか新しい米などを作る計画を立てないといけなくて、
 2:土などの消耗品に対してお金が出るわけでも、ましてや生活費に充てられるお金が支給されるわけでもなくて、お金はすべて農家の頭越しに機械メーカーや建材屋などに支払われ、
 3:「仕事がうまくいかなかった」「不慮の事故(怪我や、高齢化による仕事の継続不能)などによる離農も認められず、おかげで高齢化しつつある農村の現状にはまったく配慮されていない、さらに仕事の内容などはほとんど役所の言いなりになると言うことで、
 4:さらに、JAは定価販売+JAマージンが当然ですから、購入金額は恐ろしく大きく、購入する施設の内容まで口出しが入り、おかげで自分が本当に欲しいと思う機械が買える事はそんなになく、
 5:しかもせいぜい50%の補助しか出ないと言うことは、最低でも半額は自己負担。たとえば中古で買うなら100万で買える機械が、定価で買って300万、半分補助が出ても自己負担150万・・・あれ??
 6:組合にしか出ないと言うことは、3と組み合わせると、組合員の中に一人でもトラブルが発生すると、今後の活動に恐ろしく不具合が出て、それでも仕事は継続しないと補助金没収。

 と言う、とても使い勝手の悪いものだったのです。しかし補助金を出しておけば、「とりあえず仕事の体裁はたもてる」という役所と、補助金だろうがどういうお金だろうが、とにかく農機具メーカーや、特にJAは儲かるという両者の思惑により、ほとんど農家は食い物にされていると言っていい状態です。補助金をもらうために、赤字を出してまで必死に仕事、と言うのはなんだか矛盾していそうですがこれは本当です。


 これを緩和する政策が、農家に直接お金を支払うと言う補助金、「直接支払い」(そのままですな)なのですが、それを公約に掲げていた民主党は惨敗しました。
 担い手重点政策自体はともかく、その助成の中身が変わらなければ何の意味もないことです。反対に、小規模な兼業農家を排除する政策となるでしょう。まあ、兼業農家を全力で存続させるべきだ!と思っているわけでもないのですが、現在の日本の食料自給率はほとんど兼業農家のおかげで保っているのです。


 さて、記事の最後のほうについていた数字。


>  徳島県の農家一戸当たりの耕作面積は八十二アールで全国平均の半分余りだ。
> しかし、付加価値額を示す農業純生産は十アール当たり平均九万五千円と一・四倍あり、高付加価値の農業を営んでいる。


 こういう数字で、平均値を使うのは実は統計学的にすごくおかしいことなんです。 というのは、耕作面積なんて、専業農家と兼業農家で下手すると100倍くらい違うんですから、平均値のあたりが最も人数が多い、と言う分布には決してならないからです。
 しかしまあ、それに気づかないふりをしてちょっと考えてみましょう。耕作面積82aで、生産額95000円/10aということは、平均的な農家の年間売り上げは779000円ということになります。もちろん、これは利益ではなく売り上げの数字であって、ここから原価を引かなければなりません。農業の現状ってこんな数字である、と言うだけでもはや・・・米とか、安売りしてる場合じゃないんですよ。徳島は全国平均の半分、であってもならば全国の数字はといって約2倍すると年収160万円(原価・諸経費込み)?


 農業で生活していくためにはどうすればいいか、と言うのをまじめに考えていくと、農政で一番初めに手をつけなければならないのはなにより「JA全面改革」だと思うんですけどね。農業の原価や諸経費を一番アップさせてる元凶はJAだと思うんで。


koume