世間的には、社会は規制緩和がどんどん進められていますが、その流れを完全に無視して規制強化に突き進んでいるのが、我らが農業業界です。
で先日、あくまで噂ですが、将来実行されそうな規制の話を聞きました。
米の販売業者は、その米袋(商品パッケージ)に、その米の残留農薬量を表示しなければならなくなるかもしれない、んだそうです。
もう、誰が考えたのか知らないけど、これを考えた官僚の方には馬鹿、無知、無能のレッテルを思い切り貼らせてもらおうと思います。そんな改正が通ったら米屋のいくつかは間違いなく潰れるぞ。
理由はいつもどおり、消費者保護のためとか何とからしいのですが、木っ端役人め、それさえ言ってればなんでも通ると思うなよ?
・「馬鹿」の理由
規制とは、困ったことが起こった際、あるいは起こることが予想された場合に行われるはずです。マルチ商法が世間的に問題になると関係法規が強化されたり、海外でテロが活発になると国内ではテロ行為が行われていなくてもそれの対策のための法整備がなされたりという具合です。
今、国産農産物の残留農薬で誰か困ってます?米を食って、農薬中毒にかかった患者って、近来の過去数年で全国にどれだけいるんですか?普通の新聞、業界紙、テレビのニュースを見ている限り私はそんな事例は知らないんですけど。
また、新しく表示を追加するということですが、これってこれまでの法律の下では処理できないような問題ですかね?実は全然そうじゃありません。農薬取締法でも食品衛生法でもJAS法でも景品表示法でもなんでもどうにでもなります。新しい規制を導入する理由が全くわかりません。
今現在でも、市場に並ぶ農産物の残留農薬量を検査する、いわゆる抜き打ち検査は普通に行われているのですが、それだけではなぜダメなのでしょうか。
・「無知」の理由
それぞれの生産農家によって、農薬の使用量は違います。では残留農薬量の検査は、各農家ごとに検体一つでOKでしょうか?
厳密に検査を行おうとすると、全然、そんなことはありません。業務用には米は30キロ袋に入れられますが、しっかりした検査を行おうとすると、その袋一つ一つ全てにおいて検査が必要となるでしょう。
なぜなら、農薬の使用量は、各農家ごとに違うだけでなく、各田んぼごとにも違うからです。虫が大量に発生した田んぼには殺虫剤を撒くだろうし、まるで発生しなかった田んぼには撒きません。雑草の量・種類によって各田んぼでも除草剤の種類などはまちまちになります。
各田んぼでも収穫ごとに農薬量に違いが出る可能性がある以上、規制は恐ろしく細かな検体で行われる必要があるはずで、そうでないならわざわざ規制する意味はなくなります。ただし、30キロごとに一つずつ検査を行うというのは費用・手間とも膨大にかかりすぎます。
要するに、この規制に対する答えは「手抜きでいい加減な対応をする」または「手間を反映して、非現実的な商品価格にする」のどちらかしかありえないということです。
さらに、この残留農薬検査、簡単にはできません。各販売業者が行うのは無理でしょう。研究機関など専門業者に委託になります。そんな機関は全国に山ほどある・・・わけではありません。
さて農産物にはそれぞれ旬の時期という物があるわけですが、米の場合は当然、秋です。新米がどばっと出る時期、米屋としては年間最大の勝負時期なのですが、ここに1週間から1ヶ月間という「農薬検査期間」が新たに発生することになります。一日も早く新米を出したい業者にとって、ものすごく水を注される事でしょう。検査機関にしても、検査依頼がいきなり集中するわけですから、かなりの混雑で時間がかかることが予想されます。だからといって冬にのんびり検査するというわけにも行かないのが農産物という物です。
・「無能」の理由
しかし本来、全ての米に関して検査を行う必要はありません。なぜなら、農薬取締法に準じる限り、米に対して残留農薬が出るはずはないからです。農薬の使用量制限は、そういう観点で決められています。恐ろしく厳しい規制です。
しかし、それでもわざわざ「表示せよ」というからには、それはすでに制定されている農薬規制に効果が見られない、ということと同義です。農薬取締法は失敗だったと自ら告白しているも同じなのですが、だからといって官僚は責任を取らないのですから気楽な物です。
残留農薬って、世間ではほとんど話題にもなってないような気がしますが、仮にわずかにあったとしても、調理の前に水洗いすればそれで落ちるような物です。農薬は直接摂取しない限り、農産物から取ってやばい物は(海外の農産物を除けば)ないはずですが、それをことさらにあおっているのはむしろお役所のほうで、いちいちいらないことをしなきゃいいのにと思います。
だいたい残留農薬って、「基準値以内ならほぼ安全」ってものなのに、それをわざわざ表示したら、余計なかんぐりで逆に不安が広がりそうです。基準値内ではあってもどうたらこうたらと、世間知らずなやつらが一杯いるんだから。平時に火を放たなくてもいいのに。
役所側は適当に法律を決めて「これやれー」と通達すればそれでいいだけの気楽な商売ですが、こっちは本気で生き死にに関わる商売なんだよ。このくそ税金泥棒らめ!
この規制が本気で行われたら、たいていの場合は「検査せずに、残留ゼロと表示して販売」という方法を取らざるをえないでしょう。規制の意味が全く無いわけですが、しかし実務上はこれでかまわないわけです。だって生産が間違いなければほんとに残留はないはずだし、生産や流通に間違いがあればそれはそれの責任で、表示がどうであろうと処罰になるからです。
ちなみに
http://www.maff.go.jp/syohi/kokusan14.pdf
平成14年の、野菜等に関する残留農薬の調査結果です。
695検体中、基準値を超えて農薬が残留していた物件はなんとゼロ!!
いやあ、日本の農産物って素晴らしいですね(笑
koume