米作農家の農業も、かなり佳境に近づいています。収穫が終わった田んぼもちらほら出てきました。
さて、農業において雑草を取る作業というのはかなり重要なウエイトを占め、春から秋までずーっとやり続けているといっても過言ではないのですが、雑草の中でも害の大きい雑草・小さい雑草というのが存在します。
どんな雑草が生えるかはその土地でもまちまちなのですが、私がいる地域では、その害の大きさでトップクラスに入るのがオニビエ、イボクサと並んでこの「クサネム」です。
写真のクサネムは、田んぼの中から引き抜いて、農道に置いた写真ですが、これには写真を取った後に除草剤をぶっかけました。除草剤を持っていない時は、この草は車の荷台などに載せて、遠くの田んぼが無い場所まで運んで捨てなくてはいけません。この草はとても害があるために、引き抜いてその場にただ捨てていく、というわけにはいかないのです。
雑草の害には何パターンかあります。前述の、オニビエやイボクサの場合は、作業の邪魔になるという害です。オニビエは根や茎がやたら硬く、しかも大きくなるために、生えっぱなしにしておいては稲刈りの際にコンバインを壊す恐れすらあります。
イボクサはものすごい繁殖力があり、上には大きくならずに平べったく広がるのですが放っておくとまるで緑の絨毯のようになり、蔓のように絡まって稲を地面に引き倒したりします。これも機械に絡まる恐れもあり、とても邪魔です。
クサネムは、生えているだけではさほど邪魔にはなりませんし、刈り取りもできます。がしかし、これの場合は刈り取れてしまうことがむしろガンであり、問題なのです。
写真をよく見ると、まるでサヤエンドウのような物がついているのですが、これはクサネムの種です。これがやばいんです。
稲は、刈り取りが終わるとまず乾燥機に入れて乾燥します。乾燥して水分をうまい具合に調整したら、次に脱穀を行い、その後選別をします。
選別は簡単に言うと、網に通して小さい物を振り落とす作業で、米の中でも未成熟な物や、米以外の雑草の種は粒が小さいために、そういうものを捨ててちゃんとした米だけを選り分けることが必要なのです。ちなみに網の目の大きさは品種や場合によって違いますが普通の米の場合はだいたい1.85mm~2mmくらいで、最初にその選別に勝ち抜いた米を一番米(ゴメ)といい、玄米となります。
余談ですが、その網でふるいにかけられ、こぼれた物は2番米といい、くず米になります。このくず米をもう一度、今度はもう少し目の細かい網にかけて、くず米の中でも比較的マシな物を取り出す作業をすることがあり、これによって得られる米を「中米(ちゅうまい)」といいます。中米にすらならなかった米は本当のくず米になり、しかし捨てられることなく、味噌やおせんべいなどの原料になったりします。中米は、主に農家自身で食べるための飯米になったり、安い米を求める外食産業系の業務用米になったりします。
話は戻りますが、クサネムがなぜ害かというと、クサネムの種は大きくありませんが厚みが普通の米と同じくらいあり、網の選別をくぐり抜けて一番米の中に混じってしまうのです。
クサネムの種は黒くて、玄米の中に混ざれば一目瞭然です。まるで最初からゴマを混ぜたような見た目となり、食べてもまぁ害はないでしょうが検査の等級は間違いなく2等以下になり、クサネム入りの米が1等になることはまずありえません。1等と2等の米は価格にして1俵(60キロ)あたり1000円は違うのでこれは結構大きいです。
また、クサネムの種は非常に生命力があり、ただ単に抜いて放ってあるだけでは、来年必ず、また同じ場所に生えてきます。雑草を抜く作業はできれば無いに越したことはないのですから、そのために、引き抜いたクサネムは遠い離れた場所に捨てに行きます。
こういう害のある雑草ですが、時たま冗談のように膨大な量のクサネムが生えている田んぼを見かけることがあります。よその農家さんが作っている田んぼなのですが、クサネムはそれ自体は結構目立つために、ちょっと離れた場所からでもすぐわかります。さてこの農家さんは、クサネムの害を知らないのでしょうか?
実は、本当に知らないんです。なぜなら、普通の農家は、自分で乾燥・選別作業をしないから、クサネムが混ざると黒いゴマが玄米の中に入り込むという事情を知らないんです。
ある程度大きな規模を持つ農家なら、自分で乾燥調整施設を持っていますが、兼業農家や、小さな規模の田んぼを作っている農家はそういうものを持っていません。米を刈り取ると、JAが運営する乾燥調整施設へ直接持って行き、作業を委託します。
では、JAの職員の側から、「クサネムが田んぼにあると、黒い種が混じって等級が下がるから、極力取ったほうがいいよ」という指導は入らないのでしょうか?いやあ、結構無視されるんですね。なぜなら、JA側としては、等級が下がって買い取り価格が安くなったほうが儲かるのですから。
クサネムの種は、それが混じった米を色彩選別機にかければ結構簡単に取れるのです。それを取れば1等米と変わらない、という米が1000円安く仕入れられるのですからJA側としては万々歳です。
では農家が色彩選別機を入れると・・・いやいやこれってものすごく高価な機械なんですよ。数100~1000万くらいします。しかも、米を直接販売する業者にしか、ほとんど意味の無い機械です。
まあ、いろいろそういうわけで私はクサネムを見つけるたびに恐怖におののき、すぐさま田んぼに入ってそれを排除しまくっているのですが、いやあなくならないもんです。雑草ってのは、踏んでも蹴っても倒れない存在だと誤解している人が主にスポーツ業界に多いですが、それは間違いで実は雑草ってのは抜いても抜いても生えてくるという実にうっとうしい存在なのです。
koume
