■ ティニャネロ 2000 アンティノリ


ぶどう品種:サンジョヴェーゼ70%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%
価格:¥1万円程度
飲んだ日:2005.8.8
個人的評価(10点満点):9点


 イタリアの、「スーパー・トスカーナ」を代表するワイン。というか、現代のイタリアを代表する赤ワイン。


 世界各国のワイン法はおおよそ、そのワイン生産地ごとに品種を特定してしまうという規制が目立ちます。具体的には、フランス・ブルゴーニュで有名な白ワイン「シャブリ」を作るぶどう品種は必ず「シャルドネ」でなくてはならず、ジュヴレ・シャンベルタンピノ・ノワールソーテルヌのワインを作る時はセミヨンとソーヴィニヨン・ブランを使った極甘口のワインでなければなりません。
 これは、特にワイン生産に長い歴史を持つ伝統国の場合、その土地その土地によって土壌や気候の条件が調べつくされており、その場所・条件にふさわしいぶどう品種というものが経験的に判明しているからで、「シャブリの土地ではシャルドネを作るのが、もっとも良質なワインを造る近道である」ということがすでに周知であるためにそれを法律で規定してしまおうとした面があります。
 「シャブリ」の畑で、シャルドネ以外の品種のぶどうを作ってもそれは別にかまわないのですが、しかしそのぶどうでワインを作っても「シャブリ」という名前で販売することは出来ません。「シャブリ」っぽい味わいにならないことがわかっているためです。


 しかし近年、ぶどうの栽培やワイン醸造の技術が向上してきたために、さまざまな土地で、以前は栽培が不可能だった品種のぶどうを高品質で生産することが出来るようになってきました。これによって様々な生産者が創作意欲を掻き立てられ、いろいろな品種を試してワインそのものの品質を向上させようと試みる動きが出てきていますが、それは各国のワイン法に違反する場合が多く、価格面で採算が合うような生産に成功しているような事例はあまり多くありません。


 このティニャネロは、成功したわずかな例外の一つです


 このワインの産地であるトスカーナでは、伝統的にサンジョヴェーゼという品種のぶどうがよく作られてきましたが、ティニャネロではこれにフランスの人気品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしました。イタリアの法律では、このカベルネを15%以上ブレンドすることは許されていないのですが、しかしこのワインは規制をあえて破り、原産地呼称を名乗らないままに販売されています。
 現在では、このワインはその高品質が広く認められ、結構な高額で販売されていますし、法律よりもそのワインの品質を重視する情熱は新しいワイン生産の流れを生み出しました。そういう意味でも、歴史的な、敬意を払うべきワインともいえます。


 このティニャネロ、抜栓した直後はものすごく硬くて渋くて、さすがに若かったかなーと思わせましたが、1時間もたつ頃にはその表情も激変。素晴らしく豊かで濃厚、様々なニュアンスを内包して大変に感動的なワインでした
 私はワインの感動を言葉に表すのはすごく苦手なので、なかなかうまく書けないのですが、生産者が込めた情熱は場所・時間を越えて飲み手に確かに感動を与えるものなのだなあ、と感嘆しました。


koume