米やお肉などに関しては国産といえば安心・高品質の代名詞ですが、ワインに関しては事情はまるで異なります。山梨などで一部高品質なワインも造られているとは聞きますが、大部分の、特に低価格帯の日本国産ワインは、世界ワイン業界の異端(悪い意味での)となっています。
国産ワインの、特に安いものに使われている原料ぶどうは、外国産のものです。外国産のものを使ってなぜ国産ワインなどと言っているかというと、日本の法律では、醸造した国が生産国なのであり、ぶどうが生産された国は関係ないのです。国産ワインの多くはアルゼンチンやチリなどで作られたぶどうでワインを作りますが、果汁のみを輸入して日本で醸造を行っているために、これらは法律上国産ワインとなって、ラベルにもしっかり「国産」と書かれて販売されています。
また、外国でワインとして醸造されたものを輸入して、「国産」にブレンドしているものもあります。この場合は本来は、しっかりと「輸入ワインブレンド」などと表記しないといけないはずなのですが、たいていは無視されています。これははっきり言って法律違反だと思うのですが、厚生労働省か農林水産省か知りませんが、その辺はどうなんでしょうねえ。
例えばインドマグロを使って刺身を作ってもそれは和食だろう、というような屁理屈も考え付かないではないのですが、別の例を考えると、カリフォルニアの米を玄米で輸入して、日本で精米して「国産米」と表示して売るようなもので、誠実とは言えない方法だと思います。よその生産地のぶどうを使ってワインを造るのは、それ自体は別に珍しいことでも変なことでもないのですが、それならそうとしっかり表示するべきで、今の国産ワインの現状は「国産というブランドが付いていれば消費者の受けがいいだろう」という考えが透けて見えるだけです。
また、単なる果汁を輸入しているだけならまだいいのですが、実は国産ワインの4割近くは「濃縮マスト」というものから作られています。これはジャム状に濃縮されたぶどうジュースのことで、輸入されたそれを日本で3~4倍に希釈してから醸造されます。まるで「濃縮還元ワイン」みたいなものですが、ジュースにはありがちなこの手法がワインのラベルに表示されることはほとんどありません。濃縮還元100%オレンジジュースと、そうでない原果汁100%オレンジジュースでは味はまるで異なりますが、ワインでももちろん同じことです。世界的に見ても、こんな濃縮マストなぞで濃縮還元ワインを作っている国は日本以外には見当たりません。
なぜ濃縮マストなんかを使うのかというと、その理由はとても簡単で、輸入にかかるコストが段違いだからです。輸入する物品そのものを小さくまとめることができるのはもちろんですが、関税の額もまったく異なります。普通、750mlのワイン一本を輸入するときの関税額は一本あたり約70円ですが、濃縮マストの場合はただでさえ安い上に希釈するので、一本あたり約14円にまで圧縮できます。
で、できたワインが海外ものよりも安く上がるのか、というとどうもそんなことはなさそうです。海外のワインだって、探せば400円程度で買えるものがいっぱいあるのですから。それどころか、品質に比べるとやたら高いのが国産ワインの特徴だと思います。質的に良いものでも、割高感があるために、私は同じお金を払うならイタリアワインやニューワールドのワインを選択します。
安価な国産ワインのことばかり書いてきましたが、1985年には当時一本3万円という破格値の超高級国産ワインにも実は、輸入した果汁が使われていたことがわかりました。他所から輸入した安価なワインを瓶詰めしただけだったらしい、という事だったのです。別に、輸入したものをいくらで売ろうと販売者の勝手ですが、消費者を騙していた事は疑う余地もありません。
これは、その年にワイン業界を揺るがした大事件「不凍液混入事件」により発覚したのですが、日本の食糧に関する不祥事はほとんど中間または販売業者が作る、というのは昔から変わっていません。
日本の生産者にも、真面目な仕事をして秀逸なワインを作ろうという動きは無いでもないのですが、大手メーカーが行っているこれらの方法では国産ワイン全体のイメージ低下は避けられず、回復することも難しいでしょう。真面目にやると損をする、という業界はワインだけではありませんが、それでも真面目にやるしかやりようは無い、という因果な商売です。大手メーカーだろうがJAだろうが、一生懸命自分の首を絞めている現状に早く気づいてほしいものです。
ちなみに、先日suzuさんが紹介したマンズワインは、珍しくも「濃縮果汁使用」が明記されたワインです。本来はこれがまともで、消費者に対して誠実な対応だと思うのですが、こういうことをすると業界的には煙たがられるというのがまた日本の社会の妙なところでもあります
koume