あいつ | バイきんぐ小峠の「見ル前ニ跳べ」

あいつ

どうもみなさんこんにちは、カンダタです



相方との出会いでも書きましょうかね



なげーですよ





一番最初に出会ったのは自動車学校なんです



俺は19で高3



相方は18で高3



相方ひとつ下なんでね



このお互い高3の夏休みの時に、大分県の築地(つきじ)という街にある自動車学校合宿所に、俺は福岡から、相方は兵庫から、免許を取りに来ていたんです



3週間くらいの合宿やったかな



その時は一言もしゃべってないんやけどね






それから年を越しての2月



俺は17歳の時不合格だった、NSC(吉本の養成所)の面接に再チャレンジ



当時は600人くらい受けに来てて、人数が多いので、土日に振り分けられ、さらに8人で10分間づつの集団面接という風にかなり細分化されていた



俺は少し早めに面接会場付近に到着



適当に時間を潰した後、気合を入れて面接会場に向かった



扉の向こうの部屋ではすでに前組の8人が面接を行っており、俺はライバルになるであろう他の7人と、名前を呼ばれるその時まで廊下の椅子に座って待った




どんな奴がおんねやろと、その7人の顔を一人一人こっそり盗み見る



”あんまりおもろそうな奴おらんやんけ・・・”



そう思いながら、最後の一人を見た時



驚愕した




あいつや!!!




なんと、あの自動車学校合宿所にいた、あいつがいる



3週間一言もしゃべってないけど、合宿最終日、帰りの福岡行のバスに向かって大きく両手を振っていたあいつがいた



日にちも時間も大分細かく分けられている、この8人づつの集団面接



何とその8人の中に俺と今の相方がいたのです



「運命」というものを感じられずにはいれませんでした





それからすぐに名前を呼ばれ、8人で部屋の中へ



俺は今の自分に出来る精一杯のアピールをした



10分後面接が終わって、部屋を後にし、エレベーターで下に降りた時に、あいつに話かけた




「あのーすみません。大分の免許の合宿で・・・」



「あー!!!」




これが一番最初に西村と交わした会話



約八ヶ月振りの再会でした




あまりの偶然にお互いしばらくおさまらない興奮



「相方っておるん?」



俺は早速聞いてみた



「いや、いてない」



「じゃあ組もうや!こんな偶然ないやろ!これ絶対誰かが組めって言ってると思う」



「俺もそう思う!一緒にやろう!」



こんな感じで、まだNSCに入る前の面接の段階に、一応コンビが結成されたのでありました





当時は今ほど携帯電話が普及しておらず、ポケベルがブイブイいわせてた時代



俺たちはとりあえず自宅の電話番号を交換しようとしたが、ふとある考えが頭をよぎり思いとどまる




「連絡先、交換するのやめようか?」



「えっ!?何で?」



「連絡先交換しないで、4月1日の夜7時にどこかで待ち合わせるっていうのはどう?」



「・・・それおもろそうやな!」



「お互い今日の面接、合格してても落ちてても、とりあえず4月1日にどこかで待ち合わせて会おうや!」



「うん、そうしよう!」



「どこかいい所ある?」



「うーん・・・ほな”ひっかけ橋”にしようか!阪神が優勝した飛び込むあの橋」



「おお!いいやん!じゃあそこの真ん中ら辺にしよう!」



「了解!」



「じゃあ4月1日の夜7時、ひっかけ橋の真ん中ら辺で再会しようや!」



「うん!ほな!」




と言って俺たちは連絡先を交換せずに別れた



バカみたいでしょ



何をドラマチックにしようとしてんねん






この時まだ2月



次の日俺は福岡に戻り、残りの高校生活を送った





そして卒業して一週間ほど経った3月上旬・・・




自宅の部屋にいると、おかんがハガキを持ってきた




NSC合格を知らせる通知だった





それまでの人生で



一番嬉しい瞬間だった





俺はバイトをしてお金を貯め、3月24日に家を出た(何かしらんけど覚えてる)



そして友達の家に居候させてもらいながら、約束の日を待った




そして4月1日・・・





俺はドキドキしながら、ひっかけ橋の真ん中に行った



時間は午後7時少し前



右から来るのか左から来るのか、俺は終始キョロキョロしていた



でも約束の時間を過ぎても来ない




10分経って



30分経って



50分経った・・・




どうしたんやろ?



面接落ちたんかな?



でも合格でも不合格でも来るっていう約束やったのに



エイプリルフールやから?





時計が午後8時を廻った時、俺は諦めて家に帰った・・・






それから数日後、俺はNSCに行きだした



ずっとやりたかったお笑いを、やっとやる事が出来た



もうただそれだけで嬉しかった




すでにコンビを組んでいる者、相方を探している者、色んな奴らがいた



授業内容は主に講師の先生にネタを見せてダメ出しを頂くというもの



俺はコンビを組みたかったけど、誰でもいいという訳ではなかったので、とりあえずピンでネタをやり始めた




入学当初は一応クラス分けされていた



A・B・Cと3クラス



五十音順でね




基本クラスで別々にネタ見せ授業があんねんけど、月に1度全クラス集まっての合同授業があった



そんなに広くない部屋に200人近くの生徒が押し込まれた




この日はネタ見せはなく、講師の先生の話を聞くだけというものだった




初めての合同授業だったので、初めて見る顔の生徒も沢山いる



先生の話そっちのけで、おもろそうな奴おらんかなーって探してたら、なんとビックリ



前方斜め前に、西村がいたのだ



あいつや!!!



バカ面下げて真剣に先生の話を聞いている




何でや!



何であいつがおるんや!




当然今すぐ話かけたい衝動に駆られるが、とりあえず授業が終わるのを待つ




授業終了




みんなが一斉にエレベーターに向かう中、俺は部屋の出口で待った



しばらくすると西村が相変わらずのバカ面を引っ下げてやってきた




「なあなあ」



「うわー!!!」



「何や、NSC来てたんや?」



「うん」



「・・・何で4月1日来てくれへんかったん?俺ずっと待ってたんやで!」



「ごめん!ホンマごめん!実はあの日・・・」





聞くところによると、あの日のちょうどあの時間に、どうしても、本当にどうしても抜け出せだせない用事が出来たらしく、仕方なくいけなかったとの事



申し訳ないと思ったけど、連絡先わからんから、どうしようもなかったと



「そうなんやー。じゃあまあしゃーないな」



「ホンマにごめん!」



「で、今は相方おるん?」



「いや、いてない」



「よし!じゃあ俺と組もうや!」



「ええよ!」





よく晴れた天気のよい



5月あたまの出来事でした





こんな感じで組んだんですよ



なかなかおもろいでしょ



お互い一番最初に組んで、それからずっと一緒ですからね



非常に珍しいケースですよ



こんだけ売れてなくて、ずっと相方が一緒というのは





アホですね