土曜日の朝。
さすがに平日よりも交通量が少なく、流れもスムーズです。
今日は、今週の初めに突然舞い込んだケースについて、各所との連絡調整や書類作成に奔走しました。
ご本人は93歳の男性。私の勤める病院に入院中の方です。
長年患っておられる糖尿病の影響で、右足に壊疽(Wikipediaより
こちら
)を起こしています。
実際に患部の状態を見たことはないのですが、聞くところによれば「干し肉」状態だとか。
もはや手術(というより、切断ですが)できる体力は残されておらず、
感染症を起こせばもう一巻の終わりです。
痛みも強いようで、麻薬を処方されているほど。
もちろん、インスリン注射も欠かせません。
奥様を早くに亡くされ、山奥で長年独り暮らしを続けておられたのですが、
病院の近くにお住まいの実娘さんが、
「わずかな期間になるかも知れないが、悔いの残らないように自分が引き取りたい」と決断。
私が担当することとなったのです。
しかし、実娘さんがこの決断に至るまでには、相当な紆余曲折や葛藤がありました。
実娘さんご自身も数年前にご主人に先立たれ、独り暮らしをしていらっしゃいます。
周囲に頼れる人がいない上に、そういう状態のご本人の在宅介護をするのは、
並大抵のことではありません。
「母(ご本人の奥様)には何もしてやれなかったので、
せめて父にはできる限りのことをしてやりたい」という想い。
その一方で押し寄せてくる、果てしない不安。
初めてお目にかかった時、実娘さんは私に延々と不安を訴え続けました。
私はその言葉にじっと耳を傾け、最後にこう言葉をかけました。
「不安に思われるのが当然ですよ。ご本人の状態が状態なんですから。
それが当たり前だと思います。
ですが、あなたが独りで何もかも抱えてしまう必要はないんです。
そこをお手伝いさせていただくのが、僕らの仕事ですから。
あなたは独りじゃないんですよ」・・・と。
・・・その瞬間、これまでの人生においても人間関係に起因する多くのストレスを経験し、
失礼ながら年齢よりも随分やつれ、老けた印象の実娘さんの表情が、さっと変わりました。
「憑き物が取れた」とは、まさにこのこと。
「・・・そう言っていただけると、気持ちが凄く楽になりました。ありがとうございます・・・」
「結果的に短期間で終わってしまうかも知れませんが、それはそれでいいじゃないですか。
結局何もできないままで、後になって悔やむよりは。
そうなってしまったとしても、誰もあなたを責めたりなんかしませんよ。
それにご本人だって、住み慣れた我が家ではないにしても、
実の娘さんがいつもそばにいて下さるというのは、大きな力になるはずです。
案外、案ずるより生むが易し、ということもあるかも知れませんよ。
色んなことが起こるでしょうが、それも当然のことです。
むしろ、開き直るぐらいのお気持ちでいて下さればいいと思います」
・・・こうして、実娘さんは決断なさいました。
そうなれば、鉄は熱いうちに打て。
その決断が揺らがないうちに、話を進めなければなりません。
ご本人が入院されている病棟の看護師長と、法人内の訪問看護ステーションの管理者に連絡し、
退院前のサービス担当者会議の日時の調整と、訪問看護ステーションへの情報提供書の作成を行います。
・・・実は、この看護師長も管理者も、病院内においては「かなり変わった人」と目され、
周囲からも相当敬遠されている人物。
そうでなくとも、医療系の職種の方というのは、何かにつけて気難しく、近寄り難い印象がある。
正直、私自身も、なるべくならあまり関わりたくないな・・・というのが本音でした。
しかし、それではご本人と実娘さんの想いに応えることはできないのです。
とにかく、踏み込んでいくしかない。
それが自分自身のスキルアップにも繋がるのだし、
その「スキルアップ」こそが、転職のそもそもの目的でもあるのですから。
食わず嫌いでは、成長できない。
それ以前に、そんなことでは利用者さんのお役に立てない。
自分の中の苦手意識など、利用者さんには何ら関係のないこと。
踏み込んでいくしかない。
・・・結局、終業時刻までに、サービス担当者会議の日時及び退院日の決定、
ご本人の現状の再確認と、退院後のサービス内容の概要の決定、
そして訪問看護ステーションへの情報提供書の作成及び提出を、全て終えることができました。
これぞまさに、「案ずるより横山やすし、
もとい生むが易し」です
とにもかくにも、取りあえずはいい感じに今週を締めくくることができました。
これで心置きなく休めます。
明日は朝から、母のところに行きます。

