話を戻す。


この真面目な「超女狂いになった」経理部長たちは本社からの潤沢な資金と車やゴルフ会員権などベトナム人からすればハイソな生活を手にしたことによってこの映画の「カーツ大佐」に返身するパターンが多い。


これをわかりやすく例えると、中学時代真面目一本だった学生が高校に入って憧れのヤンキーグループに入った途端に今までの鬱憤を晴らすために一気に悪ガキに転じて人生を間違えていく様とよく似ている。


しかも悪いことに真面目一本なだけに経験がない為に転がり始めたら「ブレーキの効き」がすこぶる悪い。


そもそも日本国内にある本社からは何千キロも離れたベトナム支店のことであるのでその実情は本社の社長もわからない。


真面目な部長の心の中で傍若無人な「カーツ大佐」が芽生えるのも「むべなるかな」である。


そこで当初は真面目であった経理部長は、本社から与えられた仕事を真面目にこなすタイプと「見事なカーツ大佐」に変身する2通りのタイプに分かれる。


俺の経験では25%は確実に狂う。

つまり4人に1人の確率である。


人間という生き物は変われば変わるものである。


この「カーツ大佐」に変わったタイプはまずゴーバンナムにあるベトナム姉ちゃんの店に通いつめ、1年後には一緒にコーヒーショップか「海鮮レストラン」などの小さなレストランを開店する。


もちろん会社には内緒である。


次に経費をうまいこと使いながら自分の住んでるマンションとは別に姉ちゃんとの「愛の巣」の部屋を確保する。


これは何故かと言うと経理部長は単身赴任であるから時々日本からカミさんや家族が来ることがある。


この時に室内をチェックされたらやばいと言う理由でこのような処置を取る。


本国から来るカミさんは、まさしく「リットン調査団」と同じで、部屋の中にある長い髪の毛1本も見逃してくれない。


過去「リットン調査団」が予告なくベトナム視察に来て大ゲンカになった話を俺は経理部長に伝授してあるからそのあたりは抜かりない。


いいシェルパは常にリスクに対して用意周到である。