メイショウタバルと天才武豊が駆ける凱旋門賞まで24時間を切った。宝塚記念当日の僥倖を思い出して3年ぶりにブログを書く。

 

あまりに出来過ぎのことが起きて信じられない宝塚記念だった。心の奥底でずっとしていた雨乞いが通じた。生きているとこんな不思議なことに出会うのか。

 

武豊メイショウタバルが勝つところを見に阪神競馬場に向かった。勝ってほしい、勝つだろうと信じるようにしていたが、何度頭の中でレースを走らせても、どうしてもクロワデュノールがゴール直前で差してしまう。雨さえ降ってくれれば何とかなるのに、と思っていたが、午後1時前に着いて見上げた空はそんなことは夢物語だと笑っていた。朝に見た天気予報も到底雨が期待できるものではなかった。しかしダメだろうとは思いながらずっと雨乞いを続けざるを得なかった。

 

レースが進む。9Rが終わったあたりから雲行きが怪しくなってきた。期待はしたが、現代の競馬場の水はけはすごい。少しぐらい降ったところで馬場には影響しない。良馬場開催ではレコードタイムを更新するぐらいのつもりで捨て身で行くしか勝ち目はないと覚悟した。

 

10Rが終わった頃に3コーナー方面を見ると、はっきりとした雨柱が見えた。周囲の人も気づき始めた。かなり強い雨なのが窺えた。「レースまでなんとかもってほしい」とつぶやく男の人もいたが、私は逆だった。「早くこっちへ来い。」であった。雨柱がだんだん大きく見えるようになってきた気がする。また、豪雨直前の冷たい風も吹いてきた。いずれ降る。でも11Rまで時間があまりない。短時間で生半可な雨では馬場状態には影響しない。集中豪雨でなければダメなのだ。

3時20分をまわり、本馬場入場が近づいてきた。何となく水滴を顔に感じた。もしやと思い、空を見上げると、さらにもう1滴水滴が落ちてきた。雨だ。本当に雨乞いが通じた。さらにパラパラ降り始めたが、「こんなもんじゃどうにもならないな。」と思った瞬間、

ブワーーーーーーッ、バチバチバチバチ、ザザザーーーーーーーーーッとものすごい音を立てて雨が競馬場を、私を、観客を叩き始めた。

 

豪雨がやってきた。叩きつけるばかりか強風で横にも吹き付けてくる。下を向いていないと苦しいくらいだ。体が濡れて冷えるばかりでなく、気温も一気に下がったせいで本当に寒くなった。足下を水がどんどん流れる。あっという間に別世界だ。レースができるのだろうかと心配になるほどの降りだ。

 

苦しい中で私は天に感謝した。この凄まじい雨量、勝てる、と。こんなことが本当に起きてくれるのかと怖くなったくらいだった。私を含め「タバル派」は大雨の中でもっと降れと歓喜していた。異様な光景だ。

 

建物の中へ避難する人も少なくない中、豪雨の下で耐えている人間にはいつの間にか仲間意識が生まれる。川崎から来たというクロワデュノールファンのお兄ちゃんが、下を向かないとしゃべりにくいような中で、話に乗ってくれた。あれは嬉しかった。ありがとう。

 

さて、本馬場入場となった。馬たちが雨に驚かないかと不安になったが、さすが歴戦の古馬たち。一頭たりとも動じずに返し馬を行った。レースが刻一刻と近づく。タバルの単勝人気は降れば降るほど上がっていった。

 

ファンファーレは例年生演奏だが、この雨で中止。レースのポイントの一つだったミステリーウェイとのハナ争いは、ミステリーウェが控えたために生じず、代わりに、というべきか横山武史騎手のコスモキュランダが思い切ってハナを切った。タバルは二番手。引っ掛かる素振りを見せたが、コスモキュランダが離して逃げてくれたおかげで、ギリギリで踏みとどまり、あとは淡々とした流れ。

    

 

 

4コーナー手前辺りから武豊騎手が3番手以下を引き離しにかかる。タバルをマークするような位置のクロワデュノールが虎視眈々。やはり相手はこの馬。直線でどれだけ踏ん張り切れるかの勝負になった。

 

直線に入り、タバルがスパート。セーフティリードを作れたかに見えたが、外からやはりクロワデューノールが襲い掛かってきた。差されるかとも見えたが、朝から何度も頭の中で回したレースの光景にはならなかった。雨のおかげでそこまでスピードに乗り切れなかったのだろう。ジリジリとしか差が詰まらない。タバルが先頭でゴールを駆け抜け、武豊騎手の手が上がった。

 

レースが終わると雨が上がった。レースの前後だけ降った豪雨だった。

 

そして鞍上の言うとおり、あの雨は先代のオーナーが降らせてくれたとしか思えないタイミング、ピンポイントの凄まじいものだった。長く競馬に接しているとたまに信じられない僥倖に出会う。こんな状況の中で先頭ゴールインする武豊騎手は、やはり千両役者。もう馬乗りの技術どうこうを超えたところにいる。なお、レース後のユタカコールを始めたのは私だと自負している。 極度の興奮に襲われた中、レース後、馬に助手の上籠さんが駆け寄るお姿、そして、いつもどおり実直そのものの石橋先生のお姿を見てほっと一息だった。

 

 

 

 

 

 

 

表彰式はさすが宝塚市というところ。そして、通いなれた東京競馬場に比べて式が近くて見やすい。雨は見ての通りきれいにやんで華やかな式となってよかった。レースの写真とまったく明るさが違う。

 

 

G1馬にマックイーンの血が流れているのは何とも嬉しい。言ってみれば宝塚記念変則3代制覇ということになる。

 

帰路では、シャツやズボンより靴の中がビショビショなのが気になった。若菜そば 阪急西宮北口店さんで早めの夕食。食事の間も、帰りの新幹線も、ずっと靴も靴下も脱いでリラックスしていた。相当疲れていたと思うが、嬉しいと疲れは感じないもの。何歳になってもね。

 


また、この日のような名馬面に出会えますように。