パート先の、
時々話しかけてくる
正社員の人という印象だった。
仕事の話というよりは
とりとめない雑談が中心で、
とりわけ美味しいランチを出す店、
のような話題を好んだ。
仕事を頼まれた事は無い。
なんでもこなせるから、だ。
私はその頃
人より良いものなんて何一つ
持っていなかったけれど、
ただ毎日、理由もなく
楽しく生きていた。
「あのさ、たまには愚痴っても
いいかなあ。」
「なかなか話聞いてくれるヤツが居なくて。」
「私で良ければ。
気の利いたアドバイスはできないけれど。
話を聞くくらいならいつでもどうぞ。」
それが、彼との10年間の始まりだった。