Blur(ブラー):左から
ギター:グレアム・コクソン
ベース:アレックス・ジェームズ
ボーカル:デーモン・アルバーン
ドラム:デイブ・ロウントゥリー

ブラーは90年代英国を代表するバンド。3rd『ParkLife』(1994)が大ヒットしてブリットポップムーブメントを巻き起こした。

90年代はオアシスと共に英国音楽を盛り上げるが、2004年頃に活動休止。その後は時々再結成したりしてマイペースな活動が続いている。

2023年、今週末のサマーソニックで久々の来日を果たした!





「The Ballad of Darren」はブラーの9作目のアルバム。2023年7月21日にリリースされ、英国初登場1位を記録した。また意外なことにバンドとして初の米国トップ10入りを果たし、8位を記録したようだ。

2015年の「Magic Whip」以来の8年ぶりのアルバムとなる本作は、ギター、ベース、ドラムを基本としたバンドサウンドに回帰しており、落ち着いた曲調が目立つ。

大ヒットしそうなシングル曲は見当たらないものの、シンプルな編成でボーカルの歌にじっくり聴き入ることができる。爽やかな好作である。

アルバムのコンセプトに目を向けると、デーモンは本作をパンデミックや友人の死を経験した自身の「余震の記録」と称している。

彼の言う「余震」とは何か?

「デーモン:大変動が起きた時、リアルタイムでそれに影響を受けるわけでもないよね?自分はその瞬間にいるんだから。そのことについて考えられるのは後になってからで、後で振り返った時に自分がどう変わったかを理解できるんだ。何であろうとも、その時はサバイバル・モードになっているんだから。そういう意味での“余震”ということだ」(Rolling Stone誌HPより)

歴史に残る未曾有のパンデミックを我々は経験したわけだが、今となってあなたはそれをどう捉えているだろうか?

ちなみにThe Ballad of Darrenとはダレンさんの物語という意味らしい。ダレンさんというのはバンドのボディガードを長年務めた人物でデーモンの友人らしい。

初めはこの友人が何か、パンデミックでどうとかそういう話かと思ったが、そういう情報は出てこない。どうも一曲目の制作を励ましてくれた人とか何とかという話のようだが色々読んでもどうもよくわからない。

まあそれはともかく早速全曲レビューしてみよう!


 

1.The Ballad ★★

「自分の人生を見つめてみたら、あなたが戻ってこないことがよくわかりました。時代は変えられないものだということが」



淡々としたボーカルによって始まり、ギターやコーラス、キーボードとストリングスが加わっていく。ポップな要素は少なく歌詞を聞かせる感じの美しい静かなバラード。
喪失感を抱えた歌詞だが、明るいとか暗いとかでもない。過去をじっと見つめて落ち着いて考えてる感じ。

間奏やアウトロのキーボードが好きだ。ストリングスを交えて安易な感動路線になりそうなところに、間の抜けた音色のキーボードが絡んでくるのがこの曲を面白いものにしている。

久々のアルバムの1曲目としてはかなり地味だが、最後まで聴いてから改めて1曲目を聴くとある種の代表曲になるのかなあという気もする。アルバムの底深くにある感覚を凝縮したようなそんな1曲。


2.St. Charles Square ★★★★

「それは床板の下に住んでいます。それは時計の上下です。ああ、ベイビー。私は永遠にあなたと一緒」



何か変なギター!! これぞブラーと言いたくなるヘンテコロック。奇怪なギターフレーズによって始まる。ミドルテンポのロック。

強引なメロディと絶叫コーラスのサビが60年代サイケな雰囲気が出ててすごくいい。

チャックベリー的ロックンロールのギターフレーズが採用されている。古き良きロック感は大好きだ。


サマソニで聴けたー!!!(注:8/19 サマーソニック観覧後にライブの感想などを所々書き足しました)




3.Barbaric ★★★★

「私が負けることなどあり得ないと信じてましたが、その感覚は失いました。さて、私はどこに行くのか?」



電子音的なピコピコから始まったかと思うと、超爽やかな音色のギターが入ってくる。
ボーカルのメロディがポップで楽しい!特にサビがよい。ライブで一緒に歌いたくなる感じ。
これも昔の自分を内省する感じ。でも心は前を向いてるみたいですね。これからのことを考えてる感じ。


これもサマソニで聴けたー!!!やっぱポップな感じのサビはライブ向けの感じですごくよかったです!!



4.Russian Strings ★★

「赤いドレスを着る。人形は弦楽器に合わせて踊る」


今なお続く戦争について触れた曲。冒頭の「Where are you now? (今どこにいるのか?)」という歌詞は、かの大統領に向けて歌ったものだという。

爆発音のようなSEで始まる。シンプルなドラムが目立ってて、ジョンレノンのバラードみたいな雰囲気。サビは少し盛り上がるが全体として静かに語りかけるような曲調。

この曲がなかなか印象に残らなくて、レビューを書くためにリピートして聞き続けていたら、私のお気に入りと判断されたらしく、サブスクでランダム再生するとこの曲が頻繁に流れるようになった笑。バラライカ〜♪


5.The Everglades (For Leonard) ★★

「私たちはエバーグレーズを探しています」



SEに続いて急にボーカルが来る。アコースティックギターな静かな曲。Evergladesとはアメリカの地名でフロリダの湿地帯らしい。

デーモンによると「エバーグレーズは美しい場所だがぬかるんだ土地だ。簡単に迷い込めるし、時に命取りになる」そんな場所・事態をイメージしたものらしい。


6.The Narcissist ★★★★

「鏡を見た。たくさんの人がそこに立っている。私は彼らに向かって歩く。いたるところに歪みがある」



シングル曲。繊細なギターに導かれて、デーモンとグレアムが歌い出す。ポップで良い曲。

爽やかで名曲感ある曲調。このアルバムでは親しみやすい曲なのではないか。
ライブで聴きたい!

ライブで聴けたー!ァー!ラスト近い曲だったかな。イントロが長くて期待感を持たせて、、すごく爽やかで、すごくよかったです!!


7.Goodbye Albert ★★

「さようなら。どうしてもう私と話さないの?私を罰しないで」



前曲からの流れが良い。ふにゃふにゃのギターに続いてGoodBye〜♪との歌い出し。
歌詞はちょっと深刻そうな感じ。地味だしこれ入れるならボーナストラックの方を採用してほしかった気もする。でも歌詞がいいのかも。英語はわからないので私としてはあれだけれども。
アウトロの訳わかんない感じは好きかな。フィードバックギターが残る感じ。

あ!これもライブでやった!イントロのギターはすごく爽やかな感じでいいね!Goodbye〜♪の歌い出しは耳に残った。そこだけはいい!地味だけど!でもやっぱお気に入りなんだなー。なんでこの曲をライブでやったんだろう???


8.Far Away Island★★★★★

「今夜は何してるの? 踊ってるの? 演奏する新しい曲はありますか? 遠くの島。あなたがいなくて寂しい」



奇妙なキーボードのイントロから3拍子の曲が始まる。切なげな曲。冬の夜って感じ。
間奏はギターもキーボードも変な音だが、それが彼らの味か。誰かを想いながら大事に歌っているのが伝わる名曲。これ好きだな。大好きと言ってもいい。私も弾き語りしてみたい。

これはライブでやらなかった。がっくし。


9.Avalon ★★

「灰色に塗られた飛行機が飛び越える。戦争に向かう途中。あなたを幸せにできたらいいのにどういうわけか引き裂かれた。アバロンの海岸で墜落する」



ほぼいきなり歌が始まる。やや無理矢理気味のメロディはとっつきにくいが、サビは逆にその強引さが少し面白い。これも歌詞の世界観を楽しむ感じなのかな。


10.The Height ★★★★

「いつか高所で会いましょう。私もそこに着きます。私は最前列に立っています。あなたの隣だと思います」



名曲。ギターのコードストロークの後、デーモンが語りかけるように歌ってくれる。英語を理解したい。歌詞を聞いてすぐ理解できたらいいのに。
アルバムのラスト曲っぽい感じの壮大な曲。いやラスト曲なわけだが。ヒリヒリしたギター。堂々としたドラム。ストリングス。
真剣な感じで前向きな曲調。この曲も好きだな。ラストはノイズ!大音量で聴くと気持ちいい。BeatlesのI Want Youみたいに突然終わる。


これライブでやりました!しかもSong2の後!!超盛り上がった後に、しっとりとした曲が始まって、これ新作だろうなあ、でもどの曲だっけ?、どの曲も雰囲気結構似てるんだよなーって思ってたら、サビでこの曲とわかりました!すごくいいメロディ!ボーカルに無理がなくて、普通に感動的でした!!

で、終わりにはやっぱりギターのノイズがあってそれもよかった!!




通常盤は以上。以下はdeluxe versionのボーナストラック。どっちも好き。聴かないのはもったいないですよ!!


11.The Rabbi ★★★

「道に迷ってしまった。(迷った)。でもあなたが救ってくれました」



明るいギターのイントロ。ボブディランみたいな力強いメロディ。サビの入りもかっこいい。雰囲気変わるね。
そしてグレアムとの掛け合い!これもライブで聴きたいな!なぜこれを本編に入れないのか。良い曲じゃないか!!!


12.The Swan ★★★

「あなたがいなくなったら(この世から去ってしまったら」



ドラムに続いてジョンレノンのイマジンみたいに明るいのか悲しいのかわからないイントロが始まる。それは歌詞を読んで私が感傷的になってるからだろうか。

これも本編に入れるべきだ。今からでも遅くない。通常盤に入れて再発すべきだ。日本から英国へ断固主張しよう!12曲入りにすべきだ!デーモンさん!!


以下は、日本盤のボーナストラックだった曲で、最近ストリーミングでも公開されたようだ。

13.Sticks and Stones
それは私の顔の上に書かれています。スリープゾーンなし。私のスーツケースを開けてください。棒と石」



ボーカルはギターのグレアム。声がイメージと違いすぎて全然わからなかった。歌詞も和訳を見ただけではよく意味がわからない。サウンドは同じフレーズを繰り返す感じの古典的ロック。

ピンクフロイドの1stみたいな寓話調サイケデリック風味も感じる。Blurはシドバレットとか好きなのかな?前作1曲目のLonesome Streetも初期ピンクフロイド的メロディあったし。

まあこれはボーナストラックかな。マニアックで聴き手を選ぶ曲。


 

以上、全曲レビューでした!

全体的には、デーモンアルバーンが中心の作風でソロアルバム用の曲をバンドでやってみた的な雰囲気を感じました。ベースのアレックスの存在感があまり感じられなくて少し寂しい気も。アレックスのよく動くベースラインが好きなんですよね。
正直もっとポップな感じでシングルヒットを狙って欲しかったなって思うところもありますが、好みの曲も何曲か見つかったのでとりあえず聴けてよかったです。

でも全然悪いわけではなくとても良いアルバムだと思います。平均点が高いと言うか。地味なんだけどメロディのところどころに聴きどころがあって、そこはさすがBlurは才能が溢れてるなっていう風に思いました。

大人なBLUR!このアルバムが今後どのように評価されていくのか楽しみです。

一方でパンデミックのことはなかなか書きにくいのであれですが、歌詞を聞かせるアルバムでもあると思うので、参考文献のリンクから制作の裏事情を知って聞くと印象が変わるような気もします。

今週末はサマーソニックで来日予定なので(もしかしたらもう日本に来てるのかな?)、思いっきり楽しみたいと思っています。


 

ライブ楽しみました!!!新旧おり混ぜた選曲ですごくよかった!一曲だけ知らないやつあって!どのアルバムの曲かまだわかってないですが、それもよかったので、探してみようと思ってます!!今帰りの電車です!!ブラー!Blur!!新作も旧作もめちゃめちゃおすすめです!!!


読んで頂いてありがとうございました。
浮見亭でした。

参考文献