ぺんてる ビクーニャ公式ブログ(仮)

ぺんてる ビクーニャ公式ブログ(仮)

~世界一のなめらかさ。~油性ボールペン【VICUNA ビクーニャ】をご紹介します! ビクーニャは「美しいボディ」「美しいインキ」「美しい書き味」の3つの美でできています。

Amebaでブログを始めよう!

さて、突然であるが、当「ぺんてる ビクーニャ公式ブログ(仮)」はあくまでも(仮)の存在であって、公式に認められているのだかいないのだか、会社がやっているのだか個人がやっているのだか、というややアンダーグラウンド的なブログであったのであるが、この度、正式に公式ブログとして認められる運びとなった。めでたいことである。たぶん。


ブログを書いている本人も知らぬ間に、着々とビクーニャ公式ブログの開設準備は進められ、そして現在。こんな内容が連載されるにはややためらうほどの、ちゃんとした正統なビジネスブログっぽいカチッとしたクールなデザインの公式ブログがスタートした。アドレスも一新である。


ぺんてる ビクーニャ公式ブログ
http://ameblo.jp/vicuna-pentel


すでに過去の記事は移行してあるが、こうしてみると、本当に外見と中身のギャップが激しすぎて困るね。こんなので公式ブログにしてしまった良かったのかなあ。


ともかく。そうしたわけで、これからは新・公式ブログの方で引き続き、更新が行なわれる予定である。こういうときこそ、この文句で締めるのが適当だろう。


サンダーたちの冒険は始まったばかり!

ビクーニャ先生の次回作にご期待ください!


──それでは、新ブログにて。

それからが大変だった。
リノさんが俺をどこに連れて行ったかといえば、それは──文具売り場であった。一店舗だけではない。店を出たらまた次の店へと、およそ普通の市民としてはありえないだろうコースをたどり、延々と筆記具コーナーを見物したのだ。休憩、と言ってカフェに入って一息、なんてこともなしに、ずっと。飽きもせずに、何時間も。


今まで、どう間違えても、文具売り場めぐりツアーなんて愉快なプランを一度たりとも実施した経験のない俺としては、まず、街のあちこちで文具が売られているという事実、それ自体が新鮮な発見だった。

先に「文具店めぐり」ではなく「文具売り場めぐり」と言ったように、文具は専門店以外にも、あちこちに売り場を持っている。小さな文具店から、全国チェーンの雑貨店、デパート、書店、コンビニ、ドラッグストア。コーナーの大小はあれども、基本的な筆記具は押さえられていて、だからこそ我々は普段、出先でうっかりペンがないよというときにだって、慌てず対処することができるというものだ。


そして、ワンフロアすべてが文具コーナー、というような広大な売り場は、改めて見ると、すさまじい種類の競合品がひしめきあっている戦場なのだった。意識しなければ、同じようなペンが棚に並んで、特に目を留めることなく通り過ぎてしまう場所。しかしながら、何らかの目的をもって、たとえばある特定の1本のペンを探すとなれば、たちまち各メーカーの各製品の各色のバリエーションあふれる大海に放り込まれ、のまれてしまう、底知れぬ場所。


人は、意識せずとも、見慣れたものに目がいってしまう性質があり、だから我々は人ごみの中から顔見知りを見つけることができるわけであるが、シャープペンシルの棚からジェイクラブシャープペンシルを探すのは、東京ドームの満員の観客席からクラスメイトを探すようなものだといっても過言ではない。過言かもしれないが、気分的にね。


ところで、俺は7年前の.e-Tintを除いて、筆記具の衝動買いをすることはなく、いつもマイ定番を指名買いするという方式を貫いていた。新製品が出ていないかなあと思って売り場をうろつくことはなく、よりよいペンを求めて、目に留まったものを試し書きしてみる、なんてこともなかった。


しかし、そういう俺とは違って、売り場ではじめて購入の意思決定をする人々も、もちろんいるのであって、いるどころか多数派なのかもしれなくて、だとしたら、これだけの種類の中から1本を選ぶ決め手はいったい、何なのだろうか。

全種類を端から試すのは物理的に難しそうだから、まず手に取るかどうか、そして試し書きしてみるかどうか、比較してみるかどうか、などと段階的に選別が行なわれているはずであって、その判断基準とは、いかなるものなのだろうか。


どのようにして、選んでいるのか。
──選ばれるためには、どうしたらいいのか。


「なにぼーっとしてんのサンダー、こっちこっち!」


珍しく、ぺんてる社員っぽく販売戦略に思いを馳せかけてみたりしたというのに、場をわきまえない元気な声によって雲散霧消である。世紀のアイデアが、ビビビッと浮かぶところだったかもしれないシーンで、まったく罪な先輩だ。まあ、ぼーっとしていたのは事実ですよはい。同じようなものの延々とした繰り返しっていうのは、催眠状態を誘うものなのです。


呼ばれるままに、油性ボールペンの一画へと向かう。これまで、あまりまじまじと見つめたことはないコーナーであったが、周囲を見回して、俺は思わず嘆息していた。


「よくぞ、こんなに……」


物珍しげにあちこちに視線を向ける俺の挙動に、リノさんはあきれたようにつぶやく。


「ふつう、メーカーに入ったら、売り場を気にして他社製品にも詳しくなるものなんだけどねえ。文房具屋さん、行かないの?」


「特に……興味はないです。自社製品は覚えましたけど」


「まあ、そのうち自然と詳しくなるわ。イヤでもね」


気のせいだろうか、最後の一言に妙に力を込めて言われた気がする。「油性ボールペン嫌い」発言が未だに尾を引いているのかもしれない。いや、そんな積極的に嫌いとか、そういうことはないんですけどね、なんて今更言うには遅すぎる。もう油性嫌いキャラをつき通すしかないんじゃないか俺。それってかなり異端じゃないか。先が思いやられるね。

月曜日から、カレンダー通りに5日間の勤務。そして今日は、待ちわびた休息、土曜日である。

思い返せば、大学時代は週3日登校しかも午前中のみ、みたいなものだったから、平日も休日もあまり気にしていなかったけれど、土曜日というのはこんなにありがたいものだったのだなあ、と社会人としての実感をかみしめるばかりである。

翌日も休みというのが、また日曜日にはない良さだね。ちょっとした小旅行もできてしまいそうだよ。まあ俺の場合は、あえて家でゆっくりと時間を過ごすことこそ、最高のぜいたくだと信じているけれど。8月の炎天下なんて、わざわざ好きこのんで体感せずとも、空調の効いた快適な室内から、他人事のように眺めるだけで十分だ。


……などという、気分でいたというのに。

土曜日は聖域であると、信じて疑わなかったのに。

朝っぱらから、俺は休日出勤モードであった。断っておくが、別にワーカホリックというわけではない。いわば、つきあい残業ならぬ、つきあい出勤みたいなものだ。なんだろうな、この社会人っぽさ。


実際、昨日の業務時間終了までは、こんなことは予定にはなかったのである。さて週末はのんびりとテレビ見て雑誌読んで、普通にだらだら過ごすか、という魅惑の娯楽タイムスケジュールが、俺の脳内で着実に組み上げられていた。
そのささやかな夢想をぶち壊しにしたのは、言うまでもなくリノさんであって、彼女は俺の肩をとんとんと叩くと、当たり前のような口調で、「明日、12時。ヒマな大学生っぽい格好をして駅に集合ね! 昼食は済ませてくること!」とのたまった。そして俺が何か言おうと口を開く前に、「じゃ、お先に~」とさっさと職場を後にしてしまったのだ。

ちょっと待ってくれ、俺の優雅なる週末の予定はどうなるんだ。何で、もう当たり前に了承した、みたいな流れになっているんだ。そのコスチューム指定は何なんだ。

言いたいことは次々と浮かんで尽きなかったが、すでに言葉のキャッチボール相手はいない。投げることのできなかった球を、俺は胸のうちに飲み込むほかなかった。


そして土曜。

現在時刻、12時。見上げれば、爽やかな夏の青空が広がっている。世間は夏休み真っ盛り、開放感あふれたいい笑顔ではしゃいでいる地元の小学生たちがうらやましいぜ。存分に少年時代を満喫するがいい。俺は仕事に励むからな。やれやれ、俺もできることなら、ずっと大好きなオモチャに囲まれた子どもでいたかったものだ、なんて現実逃避したくなるのも仕方がない。


しかし──とはいえ。


急な呼び出しでありながらも、そう悪い気分ではない、というのも確かである。眩しい太陽に照らされて、鮮明さを増した街の景色を眺めて、俺は思う。普段の土曜日だったら、間違いなく家の中でクーラーかけて、何も起こることなく怠惰に過ごしていたであろう、こんな日に、外に連れ出してもらえたことは、素直に感謝すべきことかもしれない。どうせ、だらだらとして、妹にさげすまれ、何となく一日を終えるだけなのだから。改めてみると、なんだかとても無駄な人生を送っているっぽい描写だなこれ。


それにしても、なぜ研究所ではなく、駅に集合なのだろう。なぜ、「オフの日の社会人っぽい格好」ではなくて、「ヒマな大学生っぽい格好」とのご指名なのだろう。いったい、どんな仕事が待ち受けているのだろう。
あれ、というか、今まで何の疑問も抱いていなかったが、もしかしてこれ、呼び出されたの俺だけ? おーいシオさん、いるなら出てきてください。と、俺が周囲を見回したとき。


「やほーサンダー! 遅れず来たのね感心だわ! 社会人は時間厳守しないとね!」


陽気な声は、だいぶ遠くからリアルタイムで近づいてきて、頼むから公共の場でその愉快なあだ名を叫ぶのはやめてくれと思いつつ、俺は振り返った。
そこには、もちろんリノさんが立っていて、いつもどおりのポニーテールで、ただし、今日は白衣なしバージョンであった。当たり前か。休日らしいカジュアルファッションは、普段が「化学部の高校生」だとすると、今日は「休日の高校生」といったところだ。そのまんまだな。


「それじゃ行くわよ! ついてらっしゃい!」


宣言すると、リノさんは迷いなく歩き出した。俺はまだ行き先も目的も聞いていないわけだが、説明は一切なしなんですね。まあ、たとえ説明されたところで、「それならやめます」なんて、言えるはずもないのだけれど。残念ながら、下っ端の俺には、先輩に抵抗するすべはない。
それに。
行き先も目的も聞いていなくても、俺は自分から、ここに来たわけだし。


「サンダー! 迷子になるわよ!」


かなり先の方から、振り返って叫ぶリノさん。わざとやってるんじゃないかと思うね、この人。ぼやぼやしていると、何度でも繰り返し呼ばれそうなので、通行人の方々の好奇の視線を感じつつ、俺は急いで、リノさんのもとへと走ったのだった。