江戸時代の老人嘆きでも「最近の若いものは・・・」とあるとおり、いつの時代でもモラルの低い人間は存在するものだ。ただ、ここ最近の世の中の流れは、従来のものとは異なる点がある。


①モラル低下は、インターネット普及による情報化社会と密接に関係している。

②モラル低下に対しては、法令強化、厳罰化に向かっている。


まず、①モラル低下は、インターネット普及による情報化社会と密接に関連している、というのは、良い情報も「悪い情報」も瞬時に不特定多数に伝わるため、情報化社会以前であれば面と向かって説明するのも恥ずかしいような内容の情報であっても、容易に確実に不特定多数の者に伝達することが可能となった。


その結果、「誰でも簡単にもうかる」といった類の話があふれる結果となっている。一方で「勤勉に働く」といった概念に対して嘲笑する向きすらある。


資本主義・自由競争主義が社会を貫徹する傾向が強まっているのに対し、日本の社会は「勤勉」「禁欲」「恥」といった概念を「真面目に」とりあうことを躊躇している様である。


モラルに自信がない大人が、その子供に対し「嘘をついてはいけない」「恥ずかしいことをしてはいけない」とういった、まさにモラルを教えることができるのか。結果、社会全体のモラルは、世代を重ねる毎に加速的に低下する。


一方で、②モラル低下に対する処方箋として、法令強化と厳罰化によって対応する傾向が顕著である。道路交通法の厳罰化は良い例である。


その結果、社会は自立的な判断=モラルを失い、誰かが決めたルール=法令に唯々諾々と従わざるを得ない状態となる。自立的な個人の意思無くして、健全な社会の発展は困難だ。


最近のモラル低下を憂い、法令強化・罰則強化で対応しようとしている者よ。その目的と効果からは、その手段で本当に正しいのか?発想は良いことでも、悪い結果となる可能性はないのか?深く自省するべきである。

人の自由な行動と自由な心は侵してはならない。法令強化は心の自由も奪うことについて、肝に銘ずる必要がある。