天気屋 | 青木 宝代 (Takayo^¥^のPrecious thing)

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幸なる訪ずれ♪
晴眼にて素敵に偶詠する♪♪

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麻子は、どんなに晴れていても、雨が降る時があると、それを感覚的に信じている少女だった。家族や友人は彼女を「天気屋」と呼び、彼女の予測はかなり外れるのだが、そのたびに笑っていた。しかし、麻子は意に介さなかった。特に高校生になると自転車通学をしたが、雨の日はバスで行くようにする等、彼女にとって空模様を読み解くことは、カンを養うことで至極特別な意味があったからだ。


麻子の祖父、源五郎は昔から天気を予測する力があると言われていた。源五郎は元漁師で、天気の変化を感じ取ることが命綱だった。現役だった頃、彼は雲の形や風の匂い、波の動きから天候を読み取り、嵐が来る前に港へ戻ることができた。しかし、彼もまた予測が常に正確であったわけではなかった。彼はいつも「わしらは自然には絶対に逆らえない」と麻子に言い聞かせていた。


ある日、麻子は今は亡き祖父の古い航海日誌を偶然見つけた。そこには、天気を予測するための数々の観察記録とともに、祖父の心の内が記されていた。「天気はまるで人の心のようだ。予測しようとしても、その本質を完全に捉えることはできない。しかし、少しでも近づけるために努力することに意味がある」


麻子はこの言葉に子供心に感銘を受けた。彼女は祖父がただの天気の予報士ではなく、彼が他界するまでは、常に自然との対話を続ける人であったことを理解した。麻子は自分もまた天気を通して、自然と心を通わせたいと思うようになった。


そして、麻子は平緒という新しい友人と出会った。平緒は、天気に対してとんと無関心であり、常にスマートフォンの天気予報に頼っていた。麻子は彼に自分の方法を教えてあげた。雲を見上げ、風を感じ、自然の声を聞くことの大切さを伝えた。初めは興味を持たなかった平緒も、次第に麻子の言葉に耳を傾けるようになった。


ある日、二人は近くの山にハイキングに行くことを計画していた。天気予報は快晴だったが、麻子は空を見上げてしばし風を感じると、「今日は雨が降る気がする」と突如言った。「うっそだー」と平緒は笑っていたが、麻子の目には確信があった。彼は麻子の言葉を信じて、念のため傘を持っていくことにした。


そして、その判断は的が当たっていた。午後になると、突然の雨が降り始めたからだ。人々は慌てて雨宿りを探していたが、麻子と平緒は傘の下で雨音を聞きながら無事に山から降りられた。平緒は麻子に感謝の言葉を伝え、彼女の「天気屋」としての才能を認めた。


麻子は微笑んだ。彼女にとって、天気を予測することはただの趣味ではなく、自然と心を通わせる大切な時間だった。そして、彼女はこれからも、祖父源五郎の言葉の数々を胸に秘めながら、まずは気象予報士の資格を取得すると、自分の道を歩んでいくことを決意した。