暇なので小説を書いてみます。
今回は即興ですので、出来は悪いです
少し長くなってしまったのですが・・・そこは・・・
『美しいもの』
女の子が一人、街を歩いていました。
彼女の硝子の様に透き通る肌とバラ色の頬を備えた
あまりにも端正な美貌は生気を感じさせません。
それでも、人形のように完璧な女の子に興味を惹かれ、
すれ違う人々全員が女の子に声をかけます。
「お嬢さん、どうしたのかしら?迷子?」
「小さいのにお遣いかい?偉いねぇ。」
すると、女の子はニコリともせずに端正な美貌を相手に向けて、
低くてよく通る声で一言答えます。生気を感じさせずに。
「美しいものを探しているの。」
人々はみんな戸惑い、不気味がって、去っていきます。
一人の青年が彼女に声をかけました。
「美しいものを探しているの。」
青年は少し考えてから、
「この先に丘があって、そのてっぺんから見える海が素晴らしいよ。」
女の子はそこへ行ってみました。とてもきれいなところでした。
丘には木々がさんざめいていて、鳥が軽やかに歌いながら
パタパタと飛び回っています。
周りに絡みついた蔦にはダイヤの様な水滴。
純白や瑠璃色や金色の華奢で可憐な花々。
それらからみなぎる生命の活気が溢れだし、
丘を横切る小川に流れています。
そして、その先にある海はどこまでも果てなく続きます。
女の子は無表情にそれらをみていましたが、しばらくすると
また、街へ戻りました。
そして、美しいものを探し始めます。
一人の婦人が女の子に教えました。
「美しいのは人の心よ。愛とロマンと情熱と、憎悪に嘆きに失望。
最も美しいものは誰もがも持ってるの。」
ロマンチストな婦人はそう言ってにっこり笑いました。
そして、無表情な女の子に言いました。
「笑うのは美しい心をちゃんと持っている証。お嬢さんも
にっこりしないと美しいものを逃しちゃうわよ。」
女の子は促されて笑おうとしましたが、なかなか上手くいかず、
夫人はため息をついて去って行きました。
また、さっきの青年が来て訊きました。
「美しいものはみつかった?」
女の子は首を振りました。
青年は静かにまた言いました。
「あのね、泣くのも心を持ってる証拠だと思うよ。」
女の子は悲しくなって泣いていました。
けれど、それを聞いてとても嬉しくなって笑いました。
青年はもう去った後でした。
女の子が街を歩いています。
あまりの美しさにすれ違う人々が声をかけました。
「楽しそうだねお嬢さん?」
女の子は得意そうに笑って、
「私の美しいものをみつけたの」
と言います。
「おやおや、お嬢さんより美しいものもあるのかい。」
みんな笑ってそう言うと去っていきます。
女の子は前より幸せな気分で街を歩いています。
女の子を見た人はみんなそろってこう思います。
「あんな幸せそうな美しい笑顔は見たことない。素晴らしいなぁ。」
-End-