スペイン共和王国 | スペイン王室

スペイン王室

スペイン王室の現役メンバーから、遡ってその先祖の方々まで、おもしろそうな逸話をピックアップしてお届けします!

相変わらず、多忙と言うか体調不良で、真面目な記事を
書く余裕が無いので、今日は先日劇場でソフィア王妃と
ご同席させて頂いた際に気づいた、スペインならではの、
王室事情について軽く述べたいと思う。

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スペインは過去に2度の共和制を経験しているが、
第一共和制は、共和制側と軍部による衝突で長続きせず、
その後君主を代え、王政が復古。

第二共和制も混乱ばかりで、結果スペイン内戦をもたらし、
フランコ側が勝利すると、国王不在の王政の名の下、長年
の間、独裁政治が行われた。

そして、フランコ将軍死後、男子のいない将軍に後継者と
指名されていたフアン・カルロス王子は、即位式で故フランコ
将軍の取り巻きに囲まれ、いかにも独裁者の後継者と言う
印象を与えつつも、再びスペインに王政を復活させられた。
しかし、フランコ体制を引き継ぐ素振りを見せながら、徐々に
アドルフォ・スアレス首相を任命され、味方に付けるなどされ
ながら、スペインを徐々に立憲君主制の国にすることに
成功された。




↑フアン・カルロス国王の即位式、後ろを軍人が固める。

その後、一度テヘロ大佐を主犯者とする議会乗っ取りクーデター
事件が起こるが、同時に蜂起する予定だったスペイン中の
各師団が、半数は国王に忠誠を誓い、残り半数はマドリードや
サラゴサの大師団の様子見と言うことで動かず、結局バレンシア
の師団のみが蜂起した。その後国王が深夜になって、陸軍最高
司令官の制服姿でテレビに現れ、

“国民には憲法の遵守を、軍隊には最高司令官である国王へ
の従属をとそしてバレンシア師団長には解任を”

と命じられた。ここで、事実上クーデター未遂事件は失敗
に終わったと言われている。




↑陸軍最高司令官の制服に身を包みテレビ中継に臨まれる
フアン・カルロス国王

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話が長くなってしまったが、フランコ将軍死後、何故スペイン
人が王制を受け入れて来たかの理由がここにある。
“王制”と言うより“フアン・カルロス制”と言っても良いかもしれ
ない。

①スペインをフランコ独裁体制から開放してくれた。比べて
みるなら、フランコ独裁体制より立憲君主制の方が、発言の
自由、行動の自由も多く、ずっと良い。

②フランコ独裁体制に戻ろうとする軍部によるクーデター未遂
から国を救ってくれた。あんな日々に戻りたくない国民過半数。

まあ、その後も今は亡きウーゴ・チャベスに、気持ちよい一言
をかましてくれたりもしましたが、どちらかと言うと、まあその後
は、今までご苦労様と言う感じで王位にいらした。

しかし、その国王ご自身が、愛人スキャンダル(元々あったが、報道
規制されていた?)や象狩りスキャンダル(これも同じかも?)
にさらされたり、次女のクリスティーナ王女がお金のスキャンダル
にさらされたりすると、昔は良いこともしてくれたかもしれないけれど、
と、元々王制自体を支持していたわけではないので、スペイン人は、
そっぽを向くわけだ。

そして、スペインでは、お隣フランスから“自由・平等・博愛”と言う
民主主義の旗印みたいな言葉を直輸入し、学校でも、家でも、
とても大事な事として教え、それを自分の当然な“権利”として
主張することを子供の頃から教わる。

そう、

“平等”

平等、誰とも平等、そう、相手が誰でも。

例え、相手が国王でも、王妃でも。


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その結果、劇場では、

“王妃さまがご同席でも、皆平等に扱われなくてはいけない。”

と言う指令が出された。

とは言え、セキュリティー上、王妃様がいらっしゃるのは一番最後
で、お出でになるのは、一番先。しかし、それをマイクや大声で
アナウンスすると、スペイン人の気に障るから、王妃様が連れて
いらしたSPと劇場の関係者が体を張って、王妃様が立ち去るまで
一般客が動くのをブロックする。それでも、頑張って出ようとする
一般客がいるので、その場はとんでもないカオスだった。日本の
ように拍手する人なんていただろうか?いらしたときは、驚き
でざわめくばかりだったのは覚えているが。あんな中、よくにこやか
に微笑みながら、退席なされるな、とソフィア王妃を心底尊敬したく
なったものだ。

とは言え、スペイン人の中には、歴史的に、共和制は機能しない。”
と言う経験が二度ある。共和制→クーデター・内戦と言う苦い経験だ。
そのことから、王制があっても、と思う人もいるし、今もフランコ政権の
頃とシステムは大して変わっていない。“自分たちには選ぶ権利なんて
元々ないんだからどんなにスキャンダラスなことをやからしても、
王室は続くだろう。”、と投げている若者もいる。

新しく即位したフェリペ6世は、スキャンダルゼロで真面目な王様
だが、真面目過ぎる故に魅力が今ひとつ。スペイン王室の今後が、
危ぶまれる。