シルエット (講談社文庫)/島本 理生

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島本さんのデビュー作「シルエット」「植物たちの呼吸」「ヨル」3編収録。近年発表された作品と比べると、当然のことながら粗削りだし、未熟な部分もあるけれど、それでも十代でこのような作品を書けるのは本当に凄い。持ち前の言葉のセンスの良さ、瑞々しい感性がキラリと光る。表題作の、お互い想い合ってるのに、どうすることもできない感情のすれ違いがとても切ないです。こんな恋愛ができるのはまだ若いからかなとも思う。併録の「植物たちの呼吸」の雰囲気がとても好き。振り返ってみると、島本さんの作家としての成長振りが良く解る1冊。


ロリヰタ。 (新潮文庫)/嶽本 野ばら

¥432
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「ロリヰタ。」に出てくるファッションブランドが懐かしい。本作は野ばらさん自身を思わせるロリータファッションを愛する作家の「僕」が9歳の美少女に恋する話。こうして書くと邪な、インモラルな関係だと思ってしまうけれど二人の間あったのは限りなくピュアな感情だった。そして「言葉」とは時として伝えたい思いとは乖離して誤読され、歪められてしまう怖さがあるのだと感じた。併録の「ハネ」も切ない物語。この2つの物語にあるのは異端ゆえに迫害され、苦悩、葛藤する姿だ。それでも己のスタイルを貫き通す主人公達の精神は気高く、美しい。



生まれる森 (講談社文庫)/島本 理生

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好きになってはいけない人を好きになってしまった。こんなにも好きなのに貴方に近づけない--短い物語だし、内容も淡々としてるけれど、鮮烈な印象を残す。それは傷跡に似ているかもしれない。引っ掻けば簡単に血を流すような。失恋の傷を癒すのは時間だ。人を愛した記憶が薄れていく切なさもあるけれど、忘却の彼方へ去っていくそれはとても優しいものでもあるのだ。そして周囲の人々との温かな触れあいも傷の痛みを和らげてくれる。傷付いた「わたし」が新しい恋をするまであと一歩。過去の傷を乗り越えることで彼女は強く、大きく成長するだろう