東京新聞の2021年6月27日(日)のコラム欄「時代を読む」は浜さんの最終回だった。見出しは「2009年と今を比べてみれば」であった。

 このテーマの本旨ではなく、そこに記述された指摘に我が意を得たりという部分があったので引用しておく。

 

 (二〇)一二年には、自民党が政権に帰り咲いた。そこで首相の座についてアホノミクスの大将、すなわち安倍晋三氏は、目指す最終ゴールとして「戦後レジームからの脱却」を打ち出した。上述通り、日本政治の戦後レジームとは、自民党一強構図にほかならない。そこからの脱却を目指すというからには、自民党支配体制からの脱却を目指していることになってしまう。/実は、いまや真相は判明している。安倍氏が目指したのは自民党独裁体制からの脱却ではなく、戦後世界から戦前世界への回帰であった。二十一世紀版大日本帝国の構築だった。そのような意味で「戦後からの脱却」を目指していた。だからこそ改憲に固執した。そして今、アホノミクスの大将に変わってスカノミクス親爺菅義偉氏が政権を掌握している。スカノミクス親爺は、特段、二十一世紀版第日本帝国を目指してはいないかもしれない。だが、その権力掌握施行は前任者に勝るとも劣らない。だからこそ、国民の懸念も専門家の諫言(かんげん)も無視し、五輪開催の国威発揚効果を手に入れようと躍起になっている。

 

 そういえば「アホノミクス」命名者はほかならぬ浜さんだった。その浜さんがまた命名した「スカノミクス」。スカスカの日本社会になりそうで気分が滅入ってしまう。

 

 この浜さんのお話を直接に聞いたことが一度だけある。そこで驚いたこと、それはまったく手ぶら状態でいらしたことだ。

 依頼してテーマはもちろんあった。私などはレジュメや資料を準備して臨むのであるが、浜さんは、その場での質問を受け付け、それに答えるという方法でテーマに関する話をまとめていくのである。途中、メモの一切とらず、資料など一切みず、筋道を立てて話されたのである。

 

 「恐れいりました」としか言いようがなかった、経験である。