「お願いがあるんだけど、もうちょっと早く練習会場に着きたいんだ・・・」

 

物理的な問題は別にして、こう子供からお願いされている親はどれぐらいいるのだろう。

 

練習が18時から始まるとしよう。

 

そうするとチームの大多数はその時間にグランドに入れるよう10分前くらいに会場入りしてくる。

 

開始に合わせて、「はい集合!」と言われれば集まれるような準備時間だ。

 

もちろん、そのグランドにはゴールのほか、全ての準備は整っている。

 

そうして全体の練習がスムーズにスタートしていくのである。

 

少数派は2つに分かれる。

 

そのひとつ、練習の30分前くらいから集まってくる子だ。

 

彼らは、早々に格好を整えると、私と一緒に練習の準備を始めるのだ。

 

道具の搬入、ゴールの設置、等々。

 

練習の始められる準備に取り掛かり、それが終わるとボールを思い思いに蹴りだすのである。

 

思い返しても、こうしたグループが多い世代は非常に強くなっていったものだ。

 

不平不満を口にせず、自分とチームを大切にしていくことを同時にやっていった世代だった。

 

保護者の送迎が必要な土地柄である。

 

物理的な問題を抱えてながらも、隙間を作りながらどうにか間に合うように進めているのが現状であろう。

 

会場に行く、練習をやる、会場を後にする。

 

繰り返されていく日々の中で、いつしか当たり前になっていく作業。

 

行けば時間通りにサッカーが始まる。

 

それでも、そうした中に、あのお願いの感覚を持ち合わせている人間が生まれていくことを望む。

 

シューズを履きかえるその視線の奥に交差する、ゴールを抱え運ぶ仲間たち、ボールを蹴る仲間たち。

 

普段の風景に、ふとそんな考えを持つことがある。

 

 

by paris