猪苗代に20cmの雪が積もったとのこと。

寒さが刻々とこちらへも忍び寄っているようです。

この地ならではでしょうか、身を刺すようなその寒さは心の奥深くまで入り込んできます。

太平洋の風を浴びながら育った私にしてみれば、それは恐怖以外の何物でもないものでして。

この時期になりますと、見下ろすように取り囲んでいるあの山々から聞こえてくるんです。

エッヘヘと薄ら笑いを伴いながら「ほら、もうすぐだぞ」と。

そして、意を決して見上げる私の前にその白付いた太太しい姿を見せつけるのです。

こんなんなりましたけど、どうでっしゃろ? それとも、まだ足りまへんか?

白付くほど黒に染まっていくその恐怖は、彼らの期待通り絶望へと変わるんです。


クマに羽が付いていたら、彼らは貯えもそこそこに飛ぶことを選ぶでしょう。

不意に目覚めてしまった時の、あの喪失感と絶望感。

長く深い眠りへと就く前に脳裏をかすめるものは、新緑の春なんてものではなく、

不意に対する恐怖であり、目を閉じることでさえ苛まれる哀しく苦しい葛藤なのです。

アイツはもう寝たんだだろうか?

ふと、向こう山で暮らしている友人を頭に浮かべるのかもしれません。

吐露する言葉をぐっと飲み込み、「きっと大丈夫」と呪文のようにそれを掻き消すのでしょう。

そして小さな寝座のそれでも隅へと押し進み、壁に押し当て寄り添うようにその身体を沈めるのです。


「コーチ、バス届きましたか?」

それを羽と呼ぶのなら、鎖の付いた羽と言えばいいのでしょうか。

行ってきますと羽を広げ、引っ張られるようにただいまと羽を収める。

頭を向けた瞬間にあの姿を見せつけられるのかもしれません。

それでも、羽を広げるたびに彼らの力へと変わっていくのでしょう。

相変わらず薄ら笑いを浮かべるその顔に、

私の太太しいお尻を見せつけることにしましょう。

羽のないクマ。

あなたは何を見せつけてやりましょうか。



by paris