137回って・・・

いったい何回から始まってるんだ

僕とマヨは夕焼けがきれいな港の見える丘公園のベンチにいる

渋谷の東急東横店の従業員出入口で待ってるとほどなくマヨが現れた

近況の話をしながら僕とマヨは東横線に乗り込み横浜に出た

『ところで札幌暮らしはどうなの?お父さんお母さんがロンドンなら楓君一人暮らし?』

『まぁなんとかね・・・すっかり孤独と哀愁漂う青年風情だよ』

『まぁ!どうだか!?彼女はいるの?』

『この哀愁にたちうち出来るつわものはなかなかね』

『そう?モテるだろうに・・・昔からギリシャ神話に出てきそうな顔だちだったしね!?』

『ソクラテスはいとこだったからね』

『フフ・・・そゆとこちっとも変わってない』

『そういうマヨこそどうなんだよ!?』

『フフ・・・マヨってなんだか懐かしいくていいね
私はご覧の通りのデパガ2年生よ
精一杯悩んだけどやっぱり大学行きたくなかったのかな?』

『かな?って成績良かったじゃない』

『親もね、そうして欲しかったみたいだし、やりたいこともなかったしね』

そんなマヨの横顔がずいぶん大人に見えた

『ご飯食べ行こうか!ボーナス入ったんだ』

『いいね!フカヒレの佃煮と燕の巣の漬物かぁ!』

『相変わらずね・・・フフ』

中華街でお腹をふくらませると

帰りはJRに乗り換えたのだけれど、かなり遅くなってしまった


『東村山には住んでないの?』

『今は一人暮らしなのよ
通勤に便利だしね
南大井なの
品川で乗り換え!
ギリギリ間に合うかなぁ』
品川に着いたら最後の電車に間に合った

『京王線もうないでしょう・・・泊まってく?』

『あっいや、オレは・・・』

『なに勝手に想像しちゃってんだか!ホテルにでも泊まるの?新宿から歩いて帰る気?』

『んじゃまぁ・・・始発が動きだすまで・・・』

『いいよ!気にしなくって』

マヨのマンションに着くまでもそれまでと変わりなく楽しい話がはずんだ

10年以上ぶりなのによくこれだけ話題が続くもんだ

普段の僕なら考えられない
もちろん質問は一方的にマヨだけど・・・


『どうぞ?』
手慣れた仕草で鍵をあけるとマヨは僕を部屋に導いた

『都内なのにここらあたりはずいぶん涼しいのかな』

関係ない話題をふりながらちょっぴり緊張気味の自分に気がつく

マヨのみすかされたような視線を感じ

『ハハハ・・・』
などと言ってみる

『なぁに?緊張してるの?初めてなの?女の子の部屋は
適当に座って? 』

涼子の部屋とはちょっとばかし勝手が違う

『初めてっていうか・・・その・・・』

『汗かいたからシャワー浴びちゃっていいかしら』

(シャッシャワー!?)

『冷蔵庫にビールあるから飲んでてね』

涼子ならこゆときぜったいサイダーだな・・・

『あっ、うん』

このしゅちえーしょんはVシネマ的な感じだ

テレビでスポーツニュースをやってるけど

いつもの集中力はない

なんなんだこの展開は・・・

まぁ始発が出る時間までだから

なんて考えてるってだけでなんだか情けない

バタッとドアが開いただけでぎこちない

『こんな格好でごめんね
楓君だからいいよね?』

(こんな格好?)
(どんな格好?)
(振り返れないし・・・)

『楓君も使えば?
汗かいたでしょう』

『あっいやオレはいいや
女の子の部屋でシャワー使うなって我が家の言い伝えがあって・・・』

(なに訳わかんないこと言ってんだ・・・)

『明日は遅番でゆっくりでも平気だから寝坊してもいいんだ
楓君ベッドの右側と左側どっちがいい?』

『うにゃ?』

声が上ずる

『あっいやオレはソファーで・・・』

『そう?』

マヨは鏡の前で化粧水をペタペタしながら答える

今さらだけど涼子の部屋とはまったく違う匂いがしてる

『疲れたから寝よっか?』

というマヨの言葉に変にホッとしたりする

マヨはベッドに
僕はソファーに身を預ける

『でもさぁ・・・ほんとに久しぶりだよねぇ?
あすこで楓君とばったり会うなんてねぇ?』

『ほんと!ほんと!
まるで鶴の恩返しだよ』

『なにそれッ!?』

『一流のギャグ』

『ぜんぜんわかんない!』

(とにかく笑ってるからいいか・・・)

しばらく続いた話が途切れた

『楓君寝た?』

(はい、寝たふりしてますとは答えられない)

『ねぇもう少し話してていい?せっかくだし』

『いいよ・・・』

ここは素直に言えた

『こっち来て話してくれない?』

『初めての女性の部屋ではベッドで話すなってヒーヒーおじいさんの遺言があって・・・』

『お願い・・・』

『・・・』

『少しの間でいいから・・・』

『日本のベッドは右側通行だよな?』

『うん・・・ありがとう』

『それにしてもかなり低い確率だよなぁ・・・おもちゃ売り場で再開できたのは・・・』

と、同じ話題を繰り返したとき

背中のTシャツごしにマヨの胸のふくらみが伝わった

そのまま二人はひとつになった


《ハッピーエンド第138回につづく》