老人保健施設が商業施設だということを思い知らされました。

私達は、「助けてもらえる」と思っていてはいけなかったのです。


住宅事情から、また病気の性質上在宅介護はできません。

普通の老人ホームでは医師がいないことを理由に断られ、

特別擁護老人ホームは空きがありませんでした。

空きどころか施設自体が地方にあるのでとても現実的ではありませんでした。

今はそんなことはないと思いますが、それでも十分と言えるほど建っているのかわかりません。


老人保健施設の中では、人間性がくっきりとわかれました。


世話をしてくれるヘルパーさんは皆いつも汗だくで、

少人数で回していてキャパを超えているにも関わらず

一生懸命介助してくれました。


特にトイレの介助は大変そうでした。

食事が終わると大体みんな一斉にトイレへ行きたがります。

車椅子の方々は一人で便座へ腰掛けることはできません。

介助を求める呼び鈴(ブザー)は常に鳴り響き、

トイレの外では車椅子の長蛇の列、

トイレで排泄したいのに30分も待たされれば、我慢できずにオムツにしてしまいます。

介助する方もされる方も本当に気の毒でした。

でもヘルパーさんを増やせば利益は減ります。

そういうところでした。


では施設は簡易な建物で、質素でしたでしょうか?いいえ。

新しくできた建物で(建築費は自治体からの助成金も出たはずです)、

とても豪華な仕上げ(床や壁や天井などのオモテ側)を使っていました。

建築をやっていましたから、多少はわかりました。

「すごくお金をかけるものなんだなぁ」

とはじめは素直に感心しました。

設計もお金の掛かる設計でした。一面ガラスの陽光あふれるロビー。

天井は吹き抜けで高く、真ん中には大きな水槽があり、キレイな熱帯魚が悠々と泳いでいました。


さて、そのキレイなロビーは誰のためのものでしょうか?

ロビーには通常誰もいません。

面会に来た家族が行き来するだけです。

「廊下」の機能だけです。

申し訳程度にイスが脇にありましたが座る人は皆無でした。

「そういう設計」でした。老人の憩いの場にする気は元々なかったらしく、

ロビーと居住空間とは遠く離れていて、あろうことか階も違いました。

これでは身体の不自由な老人が憩いの場に使えるはずもありません。


話がそれましたが、施設でのそれぞれの人間性についてに戻ります。

看護婦さん、施設の長である医師免許をもった人、事務員はみなひどいものでした。

施設長は「経営者」でした。

看護婦さんは「看護したくない」人でした。

事務員さんは「我関せず」でした。


これだけ書けばだいたい想像がつくと思います。

経営者はなるべく手の掛からない老人をたくさん置いておきたいのです。

もし病気したら、自分のところから薬をもらうように言います。

潰瘍性大腸炎の主治医がいるのに、そこで薬をもらうなと言われるんです。

自分が儲けたいからです。

でも、もらえる薬の種類が微妙に違うので母は嫌がりました。

それを伝えても、「中身は一緒だから」の一点張りです。


母は脊髄小脳変性症のおかげで手のかかる、経営者にとって「悪しき利用者」となりました。

悪しき利用者は排除されます。執拗に出て行くように求められました。

最初は笑顔で迎えてくれたのに。。。


出て行きたくても、受け皿がないのです。

必死で探しましたが、どうしようもありませんでした。


そうこうしているうちに母が体調を崩しました。

おなかが痛い、と言って食事はおろか水も拒否していました。

経営者は医者なのに診てくれません

看護婦も何もしてくれません。点滴一つ打ってくれません。

「1日くらい食べなくても平気ですから」という信じられない言葉が返ってきました。

病院に連れて行ったら、即入院を言い渡され、脱水症状のため危険な状態でした。

すぐに点滴をうってもらいました。


「入院したので一度施設を退去したことになります。

退去の届けを出してください。」

紙切れ一枚渡されました。

書きたくなかったのですが、「審査して通ればまた入所できますから」と

嘘のような言葉にすがり、書かされました。

でもやっぱり嘘でした。何週間も待たされた挙句、やっぱりダメでした。

当たり前ですよね、追い出したくて治療しなかったのですから

ひどいものです。でもこれが現実です。