4月19日にホームで行われた2025年明治安田J2リーグ第10節V・ファーレン長崎戦ですが、試合結果は1対1の引き分けに終わりました。ヴァンフォーレの得点は前半に挙げた孫選手のゴールでした。
☆先発変更は2人
スコアレスの引き分けに終わった前節の愛媛戦からヴァンフォーレは先発を2人変更。愛媛戦でシュートを打てず前半のみで交代したマテウス レイリア選手に代わり熊倉選手、そして肩を負傷し途中退場していた鳥海選手に代わって田中選手が起用されます。注目は第3節の富山戦以来の先発となる田中選手。開幕から短い時間での途中出場が続いていましたが、ルヴァンカップの藤枝戦で1ゴール1アシストを記録してから大塚監督の評価が上がり、カップ戦やリーグ戦での出場時間を伸ばしてきました。身長は162cmと小柄ながら相手の懐に入り込んでドリブルで仕掛けていくプレーは効果的で鋭さがあります。同じポジションで中心的な存在となっていた鳥海選手が負傷で出られないのはチームにとって痛手となる出来事でしたが、桐光学園で1年後輩の間柄だった田中選手が彼の代わりとしての活躍が期待されていました。そして大卒ルーキー熊倉選手は5試合連続でキープしていたスタメンの座を前節の愛媛戦で失いリベンジの機会を窺っていたはず。先発の座を再び奪取した今回、その悔しさをピッチ上でパワーに変えられるかも注目ポイントでしたね。
☆ファーストチャンスをモノにする長崎
最初に仕掛けたのはビジターチームの長崎でした。前半2分、左からのクロスボールをマテウス・ジェズス選手がゴール前で頭で合わせると一旦はGK河田選手が弾きますが、そのこぼれ球をいち早く押し込まれて失点。開始早々に長崎に先制点を奪われる試合展開となります。このシーンではヴァンフォーレの守備陣は長崎が右からマテウス・ジェズス選手にパスが出された時点では彼に複数人が対応できていたものの、そこから左に出されたときにはそちらにボールウォッチャーになっていてゴール前に入ってくる彼の動きを見逃しています。ゴール前で競り合おうとしていたマンシャ選手がマテウス・ジェズス選手に押されてバランスを崩しファールを取ってもらえなかったのは残念でしたが、今回はマテウス・ジェズス選手がマンシャ選手の背後を取った時点で勝負あったと個人的には思います。またキックオフ直後でヴァンフォーレの選手が完全に試合に入れておらず守備の集中力を欠いていたのも痛かったですね。
☆相手に勢いをつけさせない孫選手のゴール
ここ最近のリーグ戦で3連敗と苦しんでいた長崎が幸先良く先制点を挙げたことで強豪クラブが眠りから目覚めるきっかけを与えてしまったと思われたのですが、ヴァンフォーレも意地を見せてそうやすやすと相手に主導権は渡しません。前半15分、左サイドで得た荒木選手のロングスローに熊倉選手がバックヘッドで後ろに反らせると田中選手が左足でトラップ。トラップは少し大きくなりましたが近くにいた三平選手がそのボールをダイレクトにシュートし相手GKが弾いたこぼれ球を詰めていた孫選手がゴールに叩き込み、同点に追いつく得点を決めます。このシーンのポイントはまず荒木選手がこの試合3回目のロングスローの機会だったということ。得点を決めた前半15分の前に2度ロングスローを投げており良い感覚は掴めていたと思います。その影響もあって熊倉選手の頭にピンポイントで合いましたね。それと複数人の選手が攻撃に加わっているところも高評価。荒木選手から始まり熊倉選手&田中選手&三平選手と続き、最後は孫選手のフィニッシュで計5人が絡んでいます。セットプレーの機会はもともと複数人が絡みやすいのは確かにありますが、左から右に移って再び中央からファーサイドへと展開できれば相手の守備も振り回されて陣形が崩れ、その対応が難しくなります。今シーズンのヴァンフォーレがセットプレーから多く得点シーンを作れている理由がこのシーンで分かった気がします。
☆序盤の攻勢で得点が欲しかったヴァンフォーレ
先制点のショックはそれほどなく前半早々に同点に追いつくことに成功したヴァンフォーレ。意外にも中盤でのプレッシャーが少ない長崎に助けられ、計画的にボールを保持できる機会がみられます。しかしゴールに近づくにつれてシュートは打たせたくない相手守備陣の気迫が感じられ、有効なフィニッシュに繋げられません。前半の途中からこちらの圧力に慣れて次第に長崎ペースへと変わっていったので、攻勢に転じていた前半の中ほどまでの時間帯でパワーを使い追加点を奪いたかったのが本音だったと思います。
☆土屋選手をボランチに上げた策
後半ホームの大声援を後押しに再び勢いに乗りたいヴァンフォーレの大塚監督は後半17分に動きます。前線の幅広いエリアを動き回っていた三平選手に代わり、これまた運動量の多い大島選手を起用。そしてボランチの平塚選手に代わってCBの小出選手をピッチに送り出します。陣形はそのままに小出選手が3バックの一角に入り、3バックを務めていた土屋選手がボランチの位置に上がりプレー。土屋選手はボランチでも遜色なくこなせる守備能力の高い選手ですが、平塚選手のような攻撃的なタイプではなかったことと30℃を超える厳しい暑さのなかですでに67分間プレーしていたので攻撃への貢献度はあまりなかったように思います。中盤の守備の安定を図りたい気持ちは理解できますが、ボランチはチームの心臓というべき活力を生むポジションなので、ホームで勝利を手にするためにもここのポジションのテコ入れをしてほしかったのが個人的な希望でしたね。
☆強力外国籍選手に苦しめられる
完全にペースを握った長崎は勝ち越しを目指すため、ベンチにいたFWフアンマ・デルガド選手やマルコス・ギリェルメ選手など攻撃性能の高い外国籍選手を同時に起用し一気に得点を狙います。突破力のあるマルコス・ギリェルメ選手の仕掛けからフアンマ・デルガド選手の高さを活かした長崎の攻撃は脅威そのもので、ヴァンフォーレはその迫力に押されて防戦一方に。そしてさらに元ヴァンフォーレの関口選手や長身FW山崎選手らを使いヴァンフォーレゴールをこじ開けようと試みますが、GK河田選手やマンシャ選手を中心とする守備陣が懸命にディフェンスしピンチを逃れるとそのまま試合終了。なんとか引き分けて勝ち点1を獲得する結果となりました。
☆引き分けた要因は?
この試合引き分けに終わった要因として気になった点と良かった点の2つを挙げたいと思います。まず気になった点として交代枠の使用が4人だったこと。この試合のキックオフ時が30℃ととても暑く、上位クラブの長崎との対戦でいつになく気合いが入っているところに炎天下での戦いがプラスされ、選手たちのスタミナの消耗が心配されていました。動き続けないといけないハイプレスの堅守速攻スタイルを維持するためには、戦術的な交代よりも疲労した順に交代しフレッシュな人材を入れていくことがいつも以上に求められていたと思います。しかし今回の交代は後半17分の大島選手と小出選手&後半34分のマテウス レイリア選手の3人が事実上の疲労した選手との入れ替えで、後半43分に内藤選手が入ってきますがアディショナルタイムが5分で計7分間の出場と疲労面からはあまり効果のない交代だったと思います。5人交代できるのに4人しか交代枠を使用しておらず、しかも交代するタイミングが遅いものがあるのも気になります。もちろん1点を争う緊迫した展開でリスクをかけずにチームバランスが崩れない策を取ることも時には必要ですが、5人交代&後半早めのタイミングでフレッシュな人材を次々と投入することで、攻守ともにアグレッシブな状態を保つことができたと個人的には思います。現段階の長崎は調子があまり良くない印象だったので、守りの采配ではなく勝ちに行く攻めの采配が見たかったですね。
良かった点は守備に安定感があったこと。前半開始早々の失点こそありましたが、大半の時間帯はJ2屈指の攻撃性能を誇るマテウス・ジェズス選手に対して終始伸び伸びとプレーさせず、後半途中からフアンマ・デルガド選手やマルコス・ギリェルメ選手などの強力な個の力に悩まされながらも懸命なディフェンスによって追加点を許さなかった守備陣の頑張りは評価できます。孫選手を中央に置きマンシャ選手と土屋選手が両脇を固める3バックの連携は抜群で、最近の試合で守備のメンバーを固定できたことによりチームに安定感が生まれていると思います。攻撃面は依然として改善が必要ですが、守備面で自信を得られたのは今後の戦いにプラスに繋げられそうですね。
…この引き分けによりヴァンフォーレの今シーズンの成績は、3勝3分け4敗の勝ち点12で順位は15位と前節と変わらず。しかし現在のJ2中位順位は稀に見る大混戦状態で勝ち点12が8チーム並ぶ大集団となっています(10位山形&17位札幌も勝ち点12)。1試合や2試合の勝利では簡単に抜け出すことができないと思うので、実際のマラソンのようにヴァンフォーレが常にこの中位グループの先頭を走り、後に力強く抜け出す力を発揮してくれることを期待しています。
【ヴァンフォーレ甲府×V・ファーレン長崎|ハイライト】2025明治安田J2リーグ第10節|2025シーズン|Jリーグ