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「ノックアウトマウス」とは何か?
ノックアウトマウスとは実験のために、ある遺伝子を意図的に欠損させたマウスのことを言います。1990年代からノックアウトマウスの研究が盛んになりましたが、それまでは遺伝子の本当の機能はわかっていませんでした。遺伝子のDNAがATGCの4つの異なる塩基からできていることはわかっても、具体的にどの遺伝子がどの器官を作るか、どの病気を引き起こすかなどは、遺伝子を直接コントロールした実験で初めてわかるようになったのです。ある遺伝子を欠損させたことによって、現れる現象をフェノタイプ(表現型)と呼びます。通常はこの遺伝子を欠損させると、こういうフェノタイプになるだろうと、仮説を立ててマウスを作るのですが、必ずしもその通りにはならず、意外な関係が明らかになることも多いのです。
糖尿病のメカニズムが明らかに
ノックアウトマウスで遺伝病や生活習慣病を引き起こす遺伝子がわかった例もあります。糖尿病は食べ過ぎなどによってインスリンのレセプター(受容体)の感受性が落ちてしまい、その分、すい臓がたくさんインスリンを出そうとし、すい臓のベータ細胞が疲れてしまうために起こる病気です。あるノックアウトマウスを調べると、通常より高いインスリン感受性を示しており、ちょっと食べると一時的にインスリンが上がってインスリンレセプターが効きすぎて血圧が下がることがわかりました。遺伝子の働きによりインスリンレセプターが効きすぎてしまう動物(人)がいるという糖尿病のメカニズムの一端が、ノックアウトマウスによって明らかになったのです。
実験動物と倫理
このように遺伝子を人為的に操作し、今までに知られていなかった新しい機能を見つけるのにノックアウトマウスのような実験動物は欠かせません。人間では倫理的に許されない実験をすることもありますが、獣医師は獣医学の倫理にのっとって、無駄な死を増やさないよう考えながら実験をしているのです。
麻布大学
獣医学部 獣医学科 教授
山下 匡 先生