自然界では、人間や動物に対し有毒性を示す植物が多く知られていますが、それらの有毒植物の中には、薬として使用されている
ものもあります。
同じ植物が、毒草にも薬草にもなりうるということです。
そのような植物は、山奥などにあるというものではなく、身近にもたくさんあります。
例えば、チョウセンアサガオ、ジギタリス、トリカブト、センダンなどです。
今回は、その有毒植物を経口摂取した中毒性疾患の症例です。
秋田犬 3歳 23㎏ 雌(未避妊)
数日前より、水様性下痢(血便)、嘔吐(吐血)、元気・食欲なし
異物を食べた可能性はあるものの、何を食べたかまでは不明でしたが、中毒性疾患及び感染症疾患を疑い治療を開始しました。
<血液検査結果>
パルボ(ー)
肝酵素(GOT、GPT)の異常な上昇
GPTは5倍希釈して測定しましたが、それでも1000を振り切っていました。GPTは、5000 U/l 以上ということになります。
当初は吐血・下血などがあり、かなり危険な状態でしたが、輸液、抗生剤、抗炎症剤、強肝剤、肝機能改善剤、制吐剤、止血剤など、5日間治療を行ったところ、食欲も少しづつ回復し、吠えて威嚇するようになったため、退院としました。
後に、判明したことですが、飼い主から「センダンの実を食べていた!」とのことで、結果的にはセンダン中毒と診断しました。
センダン中毒については、ネット情報においても、多数の報告が見られます。
田舎にはセンダンの木がどこにでもあるようで、我が家にもありました。葉などは枯れ落ちて、実はありませんでした。
<ネット情報>
センダンの実は動物が食べると中毒を起こし、最悪死に至る場合もあります。逆に薬としては、しもやけなどの外用剤や整腸剤、鎮痛剤としての内服剤、樹皮は除虫効果があるようです。最近はインフルエンザウイルスを不活化するとの報告もあるようです。
ちなみに、センダンを使用したペット用サプリメントも存在します。
センダンの葉の抽出物を使用したものです。
ペットの体力維持や栄養補給を目的として投与する健康補助食品ですが、ペットの腫瘍性疾患やエイズ・白血病などに有効性を示したとの報告が多々見受けられます。
まさに、毒にも!薬にも! なり得るということです。
身近にある草木や観葉植物が、動物たちにとって有害な影響を及ぼすことがあります。まだ十分に分かっていない植物もあることから、散歩中の異物誤飲には注意が必要です。