$はぐれ獣医 純情派~異論!ワン論!Objection!~-key-x-ray3歳児ぐらいまでの乳幼児と同じように、犬も小さな物に興味を示したり、何でも口に入れてしまう傾向があります。

「今日はハマチのいいのが入っているよ!」と寿司職人がハマチを勧めたら「ハマチを仕入れすぎ」と想像することが大原則ですが、犬が中毒物質を飲み込んだ時は、基本的に「水や牛乳を飲ませ、誤飲したものを素早く体外に出すために吐かせる」というのが大原則です。しかし、逆に吐かせない方がよいものもありますので注意が必要です。

犬が誤飲した場合の応急処置の流れ
①「いつ」、「何を」、「どのくらいの量」を飲みこんだのか?を確かめる。
②吐かせてよいのか?吐かせない方がよいのか?を見極める。
③犬が異物を飲み込んだことがわかっていて自宅で吐かせる場合は、犬に塩を飲ませます。量は個体差がありますが、通常体重4~5kg当たりティースプーン1杯の塩を飲ませると吐かせることができます。10~15分経過しても吐かなければもう一度試します。
④吐いてはいけない場合は、毒性を弱めるために牛乳を飲ませることもあります。小さい異物で便に出て来そうな場合は、フードにかぼちゃやふかしたサツマイモなどを加えると便のかさが増えるかもしれません。
⑤動物病院で獣医師の診察を受ける。もし、飲み込んだ物と同じ材質の物や誤飲した一部分があれば忘れずに持参するようにします。はぐれ獣医 純情派~異論!ワン論!Objection!~-x-ray

【使い捨てカイロ】
「ロの中をきれいにして、水を飲ませて、様子を見る」
使い捨てカイロは、どのメーカーの物でもほぼ同じ成分です。主成分は鉄粉、水、バーミキュライト、活性炭、塩類(塩)などが使用されています。これらの成分の毒性は低く一般的には中毒を起こす心配はありません。

【ヒキガエル】
「1秒でも早く水で口を洗う」
犬がヒキガエル(ガマガエルやイボガエルなどの異称をもつ)をくわえると、強力な毒液(ブフォトキシン)で中毒を起こすことがあるので、口の中を水ですぐによく洗い流します。

【タバコ】
「原則として何も飲ませず、吐かせる」
実際は、タバコを誤飲しても胃の強い刺激やニコチンによる脳への嘔吐作用により大部分を嘔吐するので、大きな問題に発展することは多くありません。基本的にニコチンは胃からは吸収されにくく(胃内のpHではニコチンの溶出が遅れ吸収されにくいため)、胃を通過し、小腸に至ると急激に吸収がすすみます。従って小腸に到達する前に胃内の刺激で吐くことは生命を守るためには必要なことです。誤飲してすぐであれば、吐かせることは有効ですが、吐かせるために牛乳等を飲ませることは、タバコを小腸の方に流し込んでしまう可能性があるので避けた方が無難です。
また胃酸がニコチンの吸収を抑制しているので胃酸分泌抑制剤(ガスター10など)は使ってはいけません。

【人間用医薬品】
「水や牛乳を飲ませ、吐かせて、すぐ動物病院へ」
薬により危険度は違いますが、まず吐かせて、飲んだ薬を持って動物病院へ。特に精神安定剤、降圧剤、強心剤などは危険です。

【乾燥剤・除湿剤】
1.シリカゲル
「水や牛乳を飲ませ、様子を見ます」
新しく購入した衣服や靴あるいはスナック菓子などには、乾燥剤としてシリカゲル(二酸化ケイ素)が使用されています。シリカゲルは化学作用を引き起こさず、毒性もありません。腸管から吸収されないので全身性の中毒症状もほとんどみられません。ペットが少し食べた程度であれば心配する必要はありません。症状は、粘膜びらんを起こす程度です。
2.生石灰
「口の中をよく洗い、水や牛乳を飲ませて、動物病院へ」
海苔によく使われている白色の粒状のもので、成分は生石灰(酸化カルシウム)です。生石灰で出来た乾燥剤は水分を吸収して生石灰が消石灰になるときに高熱を発するため危険です。

【防虫剤(和服用の樟脳などは最も毒性が高く危険)、ナフタリン、パラジクロルベンゼン等】
「水を飲ませて、牛乳は飲ませないで 、すぐ動物病院へ」
防虫剤等は脂肪に溶けやすいので、牛乳の脂肪分と反応し吸収を早めてしまうので牛乳を飲ませてはいけません。

【灯油、ガソリン、ベンジン等の揮発性物質】
「何も飲ませず、吐かせず、すぐ動物病院へ」
無理やり吐かせると、吐いたものが気管に入り肺炎などを起こすので吐かせない。ほんの少し舐めた程度なら、様子を見ることもあります。

【マニキュア除光液】
「何も飲ませず、吐かせず、すぐに動物病院へ」
化粧品など,一般に人間の肌に直接使用するものは毒性が低いものがほとんどですが,マニキュアの除光液などは有機溶媒(アセトン,酢酸エチル,トルエン等)が含まれており,少量でも毒性は高いので危険です。吐かせたものが肺などに入ると肺炎を起こすことがあるので、何もせずに、至急動物病院へ。

【画鋲、ピン、針、ガラス、電池等】
「何もせず、すぐ動物病院へ」
先端が鋭く、とがったものは、胃や腸管に穴をあけてしまうことがあります。飲んだと思ったら、何もせず、同じものを持参し至急動物病院へ。必ず取る必要があります。ボタン型電池や乾電池が食道や胃に長時間停滞していると、粘膜を腐食します。

【トイレ用洗剤、漂白剤等の強酸、強アルカリ】
「牛乳を飲ませて、吐かせずに動物病院へ」
無理に吐かせると食道などの粘膜を傷つけてしまいますので吐かせないで、胃の粘膜を保護するためにミルクなどを飲ませて至急動物病院へ。

【漂白剤、台所用洗剤、洗濯用洗剤】
「水を飲ませて、吐かせずに動物病院へ」
飲んだ場合は、吐かせると食道やのどの粘膜を再び傷つけてしまいます。水を飲ませ、吐かせずにすぐ動物病院へ。舐めた程度なら、問題ないこともあります。

【香水・コロン】
「水を飲ませて、吐かせる 」
主成分は毒性のないアルコール類ですが、大量に飲むとアルコール中毒を起こすこともあります。水を飲ませて吐かせ、動物病院へ。少量であれば様子を見ることもあります。

これらの応急処置法は、あくまでも緊急時の対応ですので、できるだけ早く動物病院の診察を受けて、獣医師の指示を仰いでください。$はぐれ獣医 純情派~異論!ワン論!Objection!~-saa