きしんちゃんのわきまえ | 祈るまえに、恋をして。

祈るまえに、恋をして。

ときどきぽつりと更新。

もし
イタリアで娘が
わたしの恋について
聞いてきたら
それなりにお話をしようかな
と思っていた。

平素わたしは
彼女の前で
リキシさんの存在を
極力消してしまうのだ。
混乱しちゃうからね。

祈るまえに、恋をして。
(フィレンツェ)


だけど
きしんちゃんは
なんにも聞いてこなかった。





帰国してからの彼女は
ヨーロッパを見て
ひとつ大人になった
自信みたいなものを
まとっていた。

ある日
わたしが、頬杖ついて
ニュースなんかみていたら

その視線を遮るように
あらたまって鎮座し
「ママ、ねぇ、ねぇ、恋人いるんでしょ?」
と聞いてくる。

逃げようのない彼女の視線に
戸惑いどうしたの?と聞けば

もう自分は十分に大人で
ママの恋愛とか恋人とか
ちゃんと理解できて
受け入れることもできるから
そろそろ本当のところを
教えてほしいと言うのだ。

きしんちゃんは大人なの!
ねーっねーっ教えて!
ママの好きなひとがホントは
誰かわかっているんだから!!
と叫んでいた。

そりゃそうだ。
その人にちがいない。
世の中が身動きとれなくなった
あの震災直後
突っ張り棒と食糧を持って
我が家を守りにやってきた
リキシさんを特別な人だと
教えてもいい。

でもね、でもね。と母は問う。

あなたさん、そのぉママが
じゃぁこの人がママの恋人ですって
答えたとしてホントーに受け入れられる?
ママの帰りが遅かったら
『わたしをひとりにして!デートなんて許せない!』
ってならないの?
後からうつうつ考えるでしょ?


彼女はこの母の問いかけに
しばらーく考えて
とっても丁寧に何かを扱うような
表情をしながらうーんうーんと考えて
少し照れたように
「そうなるかも」と言い
「やっぱ今は聞かなくていいやぁ!」
と自室に戻ってしまった。
鼻歌を歌いながら。

祈るまえに、恋をして。

きしんちゃんのはじめての
海外旅行は14歳のハワイ。

娘を連れて、初めての海外旅行。
ふたりきりっが心細くて
リキシさんに頼み込んで
ついて来てもらった。
あぁ正しくは
連れてきてもらった。

わたしとリキシは
それはそれは気を使った。
くっつかない、見つめあわない
会話は“おともだち”口調。
リキシさんは完璧なガイドに
徹してくれた。

「きしんちゃん、どこ行きたい?
何食べたい?どーしたい?」

初めての海外旅行は
彼女は始終むっすり。
外国なんて来たくなかったのに!
このおじさん、ナニ?
このおじさん、と、ママどんなカンケーっ?

そんな風だった。



祈るまえに、恋をして。

14歳のきしんちゃんが

ママ!あのおじさんと
くっついて歩かないで!!!
“ふうふ”じゃないんだから!!
とわたしに説教しながら
ぶーたれていた
ハレクラニのバルコニー。
(きしんちゃん撮影)