どうしようもない男と付き合っていたことがある。
周囲に流され見栄をはる。
女性がこの上なく好きで
私の目の前でこれみよがしに
わざとイチャついて見せる。
こちら側の自尊心が傷つくように傷つくように
動くその男が、なぜか好きだった。
でも嫌いだった
こんな恋をする度、思い出すことがある。
高校生の私は彼氏と喧嘩をした。
強い握力で腕を握られたのか、叩かれたのか
覚えていないが右手にあざを作って家に帰った。
両親の帰りはいつも仕事で夜遅く、
その日もバレないだろうとドアを開けたら
目の前に父親がいた。
私を見るや、ものすごい形相で腕を取る。
「これ、どうした?」
当時父との関係は良くなかったのもあって
その反応にも驚いたが、
「図書館のドアに挟んだ」と嘘をついた。
「このあざは違う!」驚く私に、
執拗にどんな風にしてついた傷だと問いただす。
「お父さんは、こんなっ!お前にこんなあざを作られるような
そんな育て方してない!誰だ!」
顔を真っ赤にして怒鳴りちらし、
半分以上何を言っているかわからなかった。
『僕は君を大切に育ててきたんだ。
僕は傷一つ、君に付けたりしないように』
父親のあわあわと叫ぶ言葉を訳せばこうだった。
愛されてないとばかり思っていた父の、愛だった。
私はとんでもない男に出会うと
あの時の父親の姿を思い出す。
私は目の前にいるくだらない男に
「私はね、あんたごときにこんな扱いされるような
育てられ方はしてないのよ」
そう心でつぶやいて、踏ん切りをつけてきた。
父の想いは、
今も私を守ってくれているようだ。
どうしようもない男を好きになることはある。
そんな時ほど盲目的に、自分を傷つけながら
深みにはまってしまうもの。
でも考えてみてほしい。
その男は父親以上にあなたを守ってくれるだろうか?
父親じゃなくてもいい。
自分が存在するために力を尽くしてくれた人が、
この世には必ずいる。
“どうしようもない男”からわが身を守るため、
最も愛された記憶を思い出してほしい。
私は今、娘に口うるさく伝えている。
「ママは、あなたが傷つけられるような育て方はしていない」
いつか娘を“どうしようもない男”から守ってくれる呪文のように。