臨床上、廃用症候群に伴う嚥下障害、というのはよくオーダーが入ります。

主科もさまざま、疾患もさまざまで、結構難しい分野ではないでしょうか。


私が経験した、思い出深い廃用の嚥下障害患者さんは消化器外科の患者さんです。

2年半に及ぶ入院、何回にもおよぶオペ、そして2年の絶食(栄養は点滴only)。

出会ったときは精根尽き果てた、といった様子で、痩せており、声も聞き取れないくらい小さく、ADLは全介助でした。

リハビリに対しても、拒否的でした。帰れないこと、治らないこと、食べられないこと、自分でトイレに行けないこと、声が出ないこと、全てのストレスを私にぶつけてきて、物を投げつけられたり、ひどい言葉で罵られたこともありました。


先輩の言語聴覚士と交代で入りながら、理学療法士も交え、リハビリは半年続けました。


はじめは殆どカウンセリング状態。言いたいことを喋ってもらっていました。

声帯は痩せているだけで麻痺が無かったので、そんなこんなで話しているうちに、声が太くなってきました。それに患者さん自身も驚いたのか、家族の励ましもあり、半月後、音声リハや嚥下リハに参加するようになりました。

そこで初めての診察。


ベッドアップで血圧低下があり、サチュレーションも下がってきてしまいます。

酸素はリザーバー、5L。痰が多く、吸引を必要としていました。

自分の舌で唇を舐めることができませんでした。

また、嚊む力も落ちており、ガーゼを10回も噛むと疲れた、といいます。

頸部の可動性は著しく低く、横を向いたり上を向いたりすると痛みがあります。

舌骨は下垂し、固くなっていました。臥位で頸部を挙上することができません。

自分で唾を飲み込むことはできましたが、喉頭の挙上は一横指に及ばず。


通常の嚥下リハに加え、医師、PTと相談しながら段階的に離床を進めました。

起きられるようになったら、OTを加えて手の練習。スプーンを自分で持って、口元まで運ぶ練習。

栄養師さんに相談して、栄養バランス、腸管使用の提案。

STではカウンセリングを続けつつ、音声リハ、嚥下リハのほか、上肢帯と頸部のリラクゼーションと筋トレ、舌骨上下筋のストレッチ、モビライゼーション、氷片嚥下などを段階的に行っていました。


3ヶ月目に固形物(ゼリー)を使った嚥下リハを開始。

消化器外科術後なので、消化器症状の有無を確認しながら通常よりゆっくりと進めました。

途中何回かアクシデントがありましたが、何とか一人で軟らかいおかずにおかゆが食べられるようになるころには、リハ開始から5ヶ月以上経っていました。歩けるようになり、身の回りのことは自分で出来るようになると、退院の話が出ました。


2年近く食べていなくても、胃や腸は受け入れてくれるんだな、と勉強になった患者さんでした。

この方は医師の理解があり、リハビリがうまく進んだ例だと思います。ペースト食で家に帰されてしまう患者さんも多い中、家族との話し合いの場も持て、患者さん本人との関係も良好に保つことができました。


消化器外科は、疾患、手術内容、医師の理解、看護師との連携など、いろいろ難しいような。

もちろん消化器に限ったことではないのですが…