萬葉集の「藤の花」を詠んだ歌-その1 、その2 で24首紹介させていただいた。
萬葉集にはこの24首以外にも「藤」を詠んだ歌が2首ある。
巻3-413
須磨の海女の 塩焼き衣の 藤衣 間遠にしあれば いまだ着なれず
巻12-2971
大君の 塩焼く海人の 藤衣 なれはすれども いやめづらしも
この2種に出てくる「藤衣」について「着衣」とするか、「枕詞」とする2通りの解釈があることを見つけた。
まず「着衣」としているのは手元の本では「小学館 日本古典文学全集 萬葉集」と「伊藤博 萬葉集釋注」
である。
「小学館 日本古典文学全集 萬葉集」では巻3-413の注解で「藤衣」について「藤衣-藤布の粗衣。
藤布は秋採集した藤の皮を灰汁で煮てとった繊維を紡いで糸にし、冬の間に織って布を作った。麻布と共に
庶民の衣料とされた。」とある。
「伊藤博 萬葉集釋注」では「藤衣」について「須磨の海女が塩を焼く時に着る服の藤の衣、その衣はごわごわ
していて、時々身に着けるだけだから、まだいっこうにしっくりしない。」書かれている。
これらに対して「旺文社 全訳古語辞典」では「藤衣」について「藤や葛の繊維で作った着物。・・」と、『「枕詞」
「間遠」「馴る」「おれる心」にかかる。』とされており、萬葉集巻3-413と巻12-2971 の「藤衣」は「枕詞」
として記述されている。
また「岩波書店 広辞苑」では萬葉集巻3-413に出てくる「藤衣」を「序詞」とされている。
なぜか萬葉集の本か辞典かで解釈が分かれてしまっている。
読み下しは田中先生の「万葉集を携えて 」から引用させていただきました。