胡桃沢耕史 『シルクロード タクラマカン沙漠2500kmの旅』-2 | 短歌初心者 萬葉集 読書

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このシルクロードの旅は1988年の9月11日から9月25日まで、ホータンが開放都市になってすぐの


ころに行われた。


当時の生々しい様子が分かる部分を引用させていただく。


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カシガル市の旅行社の責任者が、


「バスはない。そんな約束はしていない」,


とゴテだしたのである。いくら日本でしっかり約束をしていても、そんなものは、中国においては、何の


効力も持たないのはここで二日も旅行すればよく分かってくる。こちらも、そんなことで一々びくついて


いては、中国本土内の旅行などできない。


言われた瞬間金さんはどんと胸を収いた。


「カシガル観光局や旅行社が、バスがないから、提供できないというのは、相当な事情があってのこと


だろう。あくまで無理に出せとはいわない」


中国や韓国の人々は、少し長い話になると、そこが道路であれ、家の前であれ、立ち話でなくしゃがみ


話になってしまう。日本の若い人の表現を借りれば、ウンチングスタイルである。


男性であろうと女性であろうと全く変わらない。


その朝の臨時緊急会議は、こちら側からは全行程の総合通訳の金さんと旅行社の添乗員の木島さん


と、ぼく、とカメラの正木君、先方からはカシガル旅行社の責任者と、女性の現地通訳辺さんである。


ホータンから随行してきた田舎マフィヤの手先の解通訳はもう自分の仕事が終了したので、姿を見せ


ない。


辺さんはいつもジーンズだ。まだ若いはずだが、民族の習性だから、何ら恥ずかしがることもなく、


がっちりお尻を据えてしゃがみこんでいる。先方の責任者は、こちらが意外にあっさり折れてきたので


却って拍子抜けしたような顔をして見ている。


「それでバスがなくてどうして旅行を続けます」


心配そうにそんな当たり前のことを聞いてきた。少しは白分たちのしたことが迷惑になっていることは


分かっているらしい。だから社会主義体制の中にいる人間の心理は理解し難い。


「歩いて行くさ」


事もなげに金さんが答える。


「えつ」


「二十四人の旅行者と共に、これから二千キ回の道をウルムチまで歩く」


「まさか」


「我々の旅行社は郡小平閣下のご長男が設立し、中国政府の官許を得て、現在のところ、中国では


最もサービスの充実した、旅行社ということになっている。旅行社というのは客に指定された旅程を、


ご注文どおりに実行しなければならない。もしこうしてカシガル旅行社の違約で、我々が、日本から


VIP一名(どうもぼくのことらしい)、ご婦人十一名を含む、二十四名の客を、砂漠の砂嵐の中に引き


連れ、全員が砂嵐に巻きこまれ、飢えと喝きの中に、行方不明となってしまったことが判明したら、


北京におられる郡小平閣下はどんなにお怒りになられるか分からない。ことは、カシガル支社長一人


の銃殺ぐらいではすまない」


(中略)


「これから先は、有名な砂の通る道がある。もし金員が、そこで倒れた場合、当然、それを放置した


カシガル市長以下市の責任者の銃殺もある。郡小平閣下が関係している旅行社だから国際信義上


放置できないだろう」


責住者は怖る怖る妥協案を出した。


「一日だけ待っていただけないでしょうか」


「不是」


(・・・・・・!)


金さんは間答無用と拒絶した。


(中略)


「待ってください。何とかします。実は他の旅行団のほうに回す予定の小さなバスが二台あります。


それをこちらにお回しします」


たとえ、他の日本人旅行者が、ここで泣くとしても、それをかまっていられない。こここではすべてが


戦いだ。譲ることは美徳でも何でもない。白分の死を意味する。


かくして、我々一行は、無事二台のバスを調達し……むしろ徴発したといったほうがふさわしいが、


定刻には、このカシガル市を出ることができたのだ。


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