移染とは
福島原発事故で放射性物質が広範囲にわたってまき散らされた。濃度の高い地域には二度と人が住めないであろう。さほどでもないところでは、放射性物質で汚染された部分を取り除く作業が始まっている。その作業を除染というらしい。屋根を洗い流し、表土を削り取る作業が報道されている。
原発そのものもそうであるが、この除染という言葉にもまやかしがある。除染すればそれで万事解決するかのように錯覚させられる。とんでもないことで、根本的なところは何も解決しないのである。つまり、除染とは放射性物質を移動させるだけのことで、この地球上から除かれるわけではない。右から左へ、上から下へ移すだけのことである。汚れたものを移動することを、どうして取り除くと言うのか。除染ではなく移染とでも言うべきであろう。
この取り除かれた土、水、草、樹木等の最後はどうなるのか。知ってか知らずにか、原子力関係者は誰も何も言わない。おそらくは、下北半島のどこかに深い穴を掘って隠してしまうのであろう。ずるい彼らのことであるから、それを行うのは、福島原発事故が忘れられかけたころであろう。浮気なマスコミは、遅かれ早かれ福島原発事故をニュースとして取り上げなくなるはずである。その時期を狙って、下北半島へ原発ゴミを運び込むのではないか。そのことをひた隠しに隠し、今は中間貯蔵所のことしか言わない。汚い連中である。
軽薄なマスコミは、そろいもそろって除染することにしか関心がない。原発のみならず、原子力関係の廃棄物の行方を追及しなければならない。下北半島へ隠したくても、今はまだ隠し場所が出来上がっていない。膨大な量の原子力関係のゴミが日本中のあちこちにひそかに保管されている。その保管場所を逐一明らかにすることを、まず手掛けよ、とマスコミには言いたい。
東北地方の被災地の瓦礫を、東京都をはじめとする自治体が受け入れを申し出ている。その数はまだまだである。中には、受け入れに対して反対している住民もいる。反対の理由は瓦礫に含まれている放射性物質の存在である。国や自治体はその濃度はゼロではないが自然界と変わらぬ程度である、と説明している。それでも反対者は、国や自治体等のお上の言うことなんか信用できるか、と言う。反対されて残念ではあるが、彼らの言うことにも一理ある。
しかし、反対する人たちには一言言っておきたいことがある。「灯台もと暗し」と言うではないか。君たちのすぐそばに危険な核物質のゴミが隠れているかもしれない、と。その心配をなくすには、この際、信頼のおける人に徹底的に測定してもらうしかあるまい。
それにしても、国や自治体に対する信頼がなくなった現状をみると、やり切れなくなる。「民は信なくんば立たず」と孔子様はおっしゃったが、まさに至言である。
２０１２－１－２９