オハナシ。~イーギネファー 20。~ | なるるのゆめ。

オハナシ。~イーギネファー 20。~

バーニィ達が待つ広間へ
ビルが戻って来て
数十名の組織員も
集まって来ました。

集まった組織員は
組織の全員では無く
ビルが声をかけて
連れて来た者も居れば
バーニィが正式に
組織の指導者となる事を知り
バーニィの姿を
一目見て置こうと
集まった者も居ります。

そんな中へ
アビィを連れて
ミアもやって来ました。

【アビィ】
「ネル!ネル!」
アビィは
ネルを確認すると
そう言葉を発して
嬉しそうな様子で
ネルの胸に飛び込み
両籠手の腕で抱き付きます。

【アリィ】
「それが話してたネウダル?想像よりも可愛いね!」
アリィは
アビィを見て
笑顔でそう言いました。

アビィは
ネルに抱き付きながら
アリィの事を見つめ
不思議そうにしております。

【ネル】
「ネウダルの中でも特別なんだ…
 名前はアビィ。一緒に来たのがミアだよ。」
ネルは
アビィとミアを
アリィに紹介しました。

アリィは
アビィの事を気にしつつ
ミアの方を見ます。

【アリィ】
「あなたの事も聞いてた!
 私アリィ!よろしくね、ミア!」
アリィは笑顔で
ミアにそう言います。

【ミア】
「うちもドロフェルアさんから聞いてたよ。
 本当に無事で良かった…よろしくね、アリィ。」
ミアも笑顔で
一安心した様子で
アリィにそう答えました。

ドロフェルアは
アリィがネルやミアと
仲良くしている姿を
嬉しそうに見ています。

ネル達のやり取りを横目に
ビルはバーニィへ
話し始めました。

【ビル】
「テッドを除いてあと二名
 転移魔術を扱える者が居るんだが…
 その内の一人である“ザナ・ペーリアーリ”だ。
 彼女はテッドの知り合いで、ベーテルスファの街の案内も出来る。」
ビルはそう言って
ザナと言う女性を
紹介します。

【ザナ】
「ボクの事はザナで良いよお。よろしくねえ。」
ザナは笑顔で
バーニィにそう言うと
手を差し伸べて来ました。

バーニィは
軽く挨拶をして
ザナと握手を交わします。

【ビル】
「ザナの転移魔術に頼れば
 ベーテルスファへ向かう事は容易い。
 しかしテッド程の適性や魔力は無いらしく
 複数名での転移魔術は日に何度も行えない。」
ビルは
ザナについて
補足してくれました。

【ザナ】
「他の事と並行で考えたら
 行きと帰りの二回くらいだねえ。
 要は帰る時もちゃんと集まろおって事。」
ザナは
笑顔でそう補います。

【ビル】
「他に出来る事については…
 必要になった時に本人から聞くと良い。
 とりあえずザナは、今回の同行者としては最適だ。
 後は戦闘班の中でも、頼れる者達を揃えた。
 この中から誰を連れて行くかは、君が決めてくれ。」
ビルは
そう話すと
連れて来た数名の戦士達を
並べて紹介してくれました。

【バーニィ】
「…獄族の魔力を宿している人は同行して欲しいな。
 この魔力は後々誤解になりそうだし、力を示すにも良い…」
バーニィは
笑みを浮かべてそう言うと
ビルが連れて来た戦士の中から
二名選びます。

その二名は
獄族の魔力を宿しており
バーニィが適応者になる前に
適応者となった者達でした。

すると。

【アリィ】
「それじゃ私も行く!」
アリィが笑顔で
そう言います。

さらに。

【ドロフェルア】
「力を示せるかは分からないけれど…私もだね。
 アリィを守る為に、傍について居なければならないし。」
ドロフェルアは
微笑みながら
そう言いました。

すると。

【アリィ】
「私がパパを守るんだってば!」
アリィは笑顔で
ドロフェルアに
そう言い返します。

さらにさらに。

【ネル】
「僕も行くよ。ネウダル武装で力なら示せる…
 あとネウダルも連れて行きたいな…
 ネウダルも戦力になるけど、誤解されそうだし…」
ネルは
バーニィに対して
気まずそうにしつつも
そんな事を言いました。

【アビィ】
「ネル!ネル!」
アビィも
ネルに賛同する様に
そんな言葉を発します。

【バーニィ】
「…ネウダルか…確かに王国でも誤解されていたな…
 よし、ネルもネウダルと一緒に同行してくれ。
 ネウダルも頼もしい味方だと伝えられる良い機会になる。」
バーニィは
笑みを浮かべて
ネルに賛同しました。

ネルは
バーニィの言葉を聞いた後
ミアに手を差し伸べます。

するとミアは
何やら道具を
ネルに二つ渡しました。

バーニィは
それが何なのか
気になりつつも
ベーテルスファへ向かう同行者を
改めて確認します。

【バーニィ】
「…とりあえず先遣としては
 この七人とネウダル少数で十分かな…
 それでネル、連れて行くネウダルは?
 その…アビィって子だけで良いのかな?」
バーニィは
同行者を確認しながら
ネルにそう聞きました。

その場には
アビィ以外の
ネウダルと思しき存在は
見当たらないので
バーニィは
不思議そうにしています。

【ネル】
「あぁ、言ってなかったね…コレがそうなんだ。
 正確には、コレで呼ぶ事が出来る。だから僕の準備は出来てるよ。」
ネルは
そう言いながら
先程ミアから渡された道具を
見せました。

バーニィが
その道具を良く見て見ると
転移魔術が宿った道具と
何処か似た様な印象を受けます。

【バーニィ】
「…少し大きいけど、転移道具みたいだな…
 転移道具と同じで、込められた魔術で呼べる感じかな?」
バーニィは
不思議そうにしつつ
そう聞きました。

【ネル】
「コレには招致魔術が込められてる…
 転移道具と似てるけど、コレの場合は
 対象をコレの場所に転移させる事が出来るんだ。
 と言っても、実際の招致魔術とは違って
 コレの対象はネウダルだけだし
 前もって対象を限定しておかないといけないし
 作って貰うのも大変だから、大量に用意は出来ないけどね…」
ネルは
視線をバーニィから逸らしつつも
道具の事を話します。

【バーニィ】
「そうか…そんな貴重な物なのに良いのか?」
バーニィは
少し心配した様子で
そう聞きました。

【ネル】
「貴重でも飾り物じゃ無いから…
 それに地上では使った事無いから、試用も兼ねてる。
 もし招致が失敗しても、ネウダルならアビィが居るし。」
ネルは
バーニィから視線を逸らしたまま
アビィを撫でながら
そう言います。

バーニィは
それを聞いて
納得しました。

そんな二人のやり取りを
聞いていたアリィが
興味津々に
ネルが手にした道具を
見つめています。

【アリィ】
「それ使う時は言ってね?
 どうなるのか見てみたい!」
アリィはネルに
笑顔でそう言いました。

ネルは
アリィに対して
微笑むと
軽く頷きます。

バーニィとネルが
話を終えると
バーニィ達はついに
ベーテルスファへと
向かう時が来ました。

【カーラ】
「皆、無事に戻って来てね。
 私は治癒班で集まって準備しておくから。」
カーラは
笑みを浮かべて
バーニィ達に
そう言います。

【ビル】
「私の方は戦闘班を集めて、戦いに備えて置こう。」
ビルは
その場に残される
戦士達と顔を合わせて
バーニィ達にそう言いました。

【ミア】
「シンディと他の子達の準備もしておくね?
 必要になったら皆連れて、うちも戦いに参加するから…!」
ミアは笑顔で
ネルにそう言いました。

【ネル】
「ありがとう、ミア。そっちは任せたよ。」
ネルは微笑んで
ミアにそう言います。

その他の
地下施設に残る者達も
バーニィ達へ
しばしの別れを告げると
それぞれ準備に取り掛かる為に
バーニィ達の元から
離れて行きました。

そして。

バーニィは
ベーテルスファへと
同行する仲間に
声をかけます。

【バーニィ】
「これから俺達はベーテルスファへと向かう。
 初めは当然、警戒されるかも知れないし
 獄族の魔力の所為で、誤解される事もあるだろう。
 しかしきっと手を取り合える筈…
 キースがやろうとしていた事を始めるんだ…
 ヒトと魔族の架け橋となる組織を目指す為に
 魔族達と手を取り合う為の大きな一歩にしよう!
 ここからが、イーギネファーの新たな出発となる!」
バーニィは
同行する仲間達を
奮起させるように
そう言いました。

【ドロフェルア】
「…キースの為にも…」
ドロフェルアは
笑顔でそう呟きます。

【アリィ】
「がんばろ!」
アリィは
心躍らせた様子で
そう答えます。

獄族の魔力を宿した
二名の組織員も
頷いて答えます。

【アビィ】
「ネル!ネル!」
アビィは
そう言葉を発して
ネルの周りを動き回って居ますが
ネルは気性に合わず
静かにしていました。

【ザナ】
「それじゃ行こお。ディメイブ・ゲイト!」
ザナは
そう叫びながら
両手を地面に添えます。

すると次の瞬間
ザナの前方に
大きな魔力の門が
出現しました。

バーニィ達は
ザナが出現させた
魔力の門を
潜って行きます。

そして
バーニィ達が
魔力の門を潜ると
ベーテルスファの街の
南東方面の入口付近へと
辿り着きました。

バーニィ達の中には
先日のネウリクセンの襲撃時に
ベーテルスファへと
来た事がある者も居りますが
ベーテルスファの街に詳しいのは
ザナだけなので
バーニィ達は
ザナを先頭にして
街へと入って行き
ベーテルスファ神殿の方へと
案内してもらいます。

バーニィ達が
目的地を目指して歩いていると
すれ違う街の人達が
明らかにバーニィ達の事を
警戒している事を
感じました。

バーニィ達の大半が
獄族の魔力を宿しており
さらにそれは
先日街を襲撃したネウリクセンと
同質の魔力である為
警戒されるのは
無理も無い事です。

するとその時
バーニィ達の方へ
男性が近付いて来ました。

「…良く知る魔力も感じると思ったら…ザナ、君だったか。」
その男性は
バーニィ達に近付きながら
そんな事を言います。

【ザナ】
「ガオンツェル!久しぶりい!」
ザナは笑顔で
男性にそう答えました。

【ガオンツェル】
「君がイーギネファーの一員だったとは驚きだな。」
ガオンツェルと呼ばれた男性は
笑みを浮かべて
ザナにそう言います。

ガオンツェルの言葉に
バーニィ達は
少し驚き戸惑いました。

【バーニィ】
「…俺達の組織の事を知っているのか?」
バーニィは
戸惑いつつも
不思議そうにして
そう聞きます。

【ガオンツェル】
「テッドから聞いているよ…君達を待っていた。
 俺の名は、ガオンツェル・ライルウェン。
 最近結成された、新生魔族騎士団の指揮者でもある。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そう言います。

ザナを除いて
バーニィ達は
少し戸惑いつつも
テッドの名前を聞いて
安心しました。

【バーニィ】
「知っているなら話が早い…
 俺はイーギネファーと言う組織の指導者の
 バーニィ・エンドレイフだ。
 指導者と言ってもなったばかりで
 まだそんな大それた存在では無いかな…
 現状は組織の代表者程度に考えて貰えると助かる。」
バーニィは
笑みを浮かべて
そう話すと
ガオンツェルに
握手を求めます。

ガオンツェルは
笑みを浮かべて
バーニィの手を握ろうと
身に纏った外套から
腕を出しました。

するとその時
バーニィは
ガオンツェルの腕を見て
少し驚きます。

ガオンツェルの腕は
岩の様な質感の腕に
なっており
ザナを含めて
他の同行者達も
少し驚きました。

【バーニィ】
「…その腕…魔力の腕か?それは一体…」
バーニィは
そう言いながら
ガオンツェルと
握手を交わします。

【ガオンツェル】
「先日のネウリクセンの襲撃で失った。
 そう言えばあの時、君と数名は
 我々を助けにこの街へ来てくれたんだよな…感謝するよ。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
バーニィ達に改めて
感謝しました。

【バーニィ】
「街を助けられた、とは言えないけどな…」
バーニィは
申し訳なさそうにして
そう言います。

ネルとドロフェルアも
当日街に居たので
少し後悔しておりますが
同じく当日街に居たアビィは
ガオンツェルの腕を
興味津々な様子で
見つめておりました。

ザナや
同行者の戦士二人も
バーニィ達と同じ様な
気持ちでおりましたが
アリィだけは
アビィと同じ様に
魔力の腕と言うものに
興味津々です。

そして
バーニィと握手を交わした
ガオンツェルは
気を取り直す様にして
街の事と魔族の事を
話し始めました。

【ガオンツェル】
「テッドは組織の事を俺にしか喋っていない筈だ…
 街の者達が警戒しているのは、その所為でもあるな。
 しかしテッドも街の者達に言えない理由がある…
 それは君達の組織名の所為だ…
 イーギネファーと言う名は、過去に封じられた名で
 特にベーテルスファの一族にとっては、禁忌とされている。」
ガオンツェルは
そんな事を話してくれます。

【バーニィ】
「…仲間から聞いてるよ。
 解放の魔神としてのイーギネファーの事も…
 ベーテルスファもフェグラムナも…
 ネウリクセンがフェグラムナ幽谷の奴だって事も…」
バーニィは
少し哀しげな様子で
そう言いました。

事情を良く知るザナや
アビィとアリィを除いて
魔族の事情を少し知っている者達も
少し哀しげな表情を浮かべます。

すると
バーニィは
何やら決心した様子で
ガオンツェルに話し始めました。

【バーニィ】
「それでも俺達の組織は、解放の魔神由来の
 イーギネファーと名乗る事を選択するよ。
 掛け替えのない友人が名乗り始めた名前でもあるから…
 彼が居た証としても、俺は名乗り続けたいんだ。
 封じられたと言っても、強制力の無い話だし
 名乗って何かが起こる訳では無い…
 例えあっても、それは意固地から生じる諍いで
 名乗る名乗らないの問題ではないよ…
 それに隠し続けても、魔族達は過去を知っている。
 ヒトだけが知らないまま、魔族がヒトを遠ざけ
 ヒトも誤解したまま、魔族を避ける様になっては
 ヒトと魔族が手を取り合う未来は程遠い…
 例えそれが…悲しい過去だったとしても…
 過去を知るべきだし、過去から学ばなければ…
 俺は、魔神ベーテルスファの決断を尊敬している。
 後世、他の一族から蔑視される事があったり
 フェグラムナの一族から恨まれ続ける様な
 そんな存在のままであってはならない筈だ…
 何も知らないから変わらないんだ…だから知らなければ…
 知らせなければ…その為にもイーギネファーと名乗り続ける。」
バーニィは
真剣な表情で
じっとガオンツェルの目を見て
淡々とそう話しました。

バーニィの言葉に
同行者達は
表情を変えて行きます。

特にネルは
バーニィの言葉の一部に
強い共感を感じました。

でも何処か
気まずそうにもしていて
少し思い悩んでいます。

ガオンツェルは
バーニィの言葉を聞き
笑みを浮かべて
頷いておりました。

しかし。

【ガオンツェル】
「…良い決意と決断だとは思うが…
 場所を変えて話すべきだったか…?」
ガオンツェルは
そう言いながら
辺りを軽く見回しました。
頷いておりました。

バーニィ達が
会話をしていた場所は
広い道ではあるものの
声量を抑制して
喋っていた訳でも無く
街中ではあるので人通りがあり
バーニィ達の話を
聞いてしまった者や
聞き耳を立てていた者も居り
怪訝な様子で通り過ぎたり
恐ろしそうに駆け足で
バーニィ達から離れる者も
居ります。

獄族の魔力を宿した者が居る上に
禁忌とされている
イーギネファーの名を出した事で
バーニィ達の話を耳にした者や
聞き耳を立てていた者達からは
更に警戒されてしまったのでしょう。

すると。

【ガオンツェル】
「…しかし悪い事ばかりでもなさそうだな。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そんな事を言うと
ある方向を見ます。

バーニィ達が
その方向を見ると
少し離れた所に
魔族が一人居り
バーニィ達の方を
見ておりました。

すると
バーニィ達が
その人を見た次の瞬間
その人は
笑みを浮かべながら
手を軽く挙げて
賛同の仕草をして見せると
すぐに何処かへと行ってしまいます。

さらにその様な人物は
一人だけではなく
ほんの数名ほど
似た様な様子の人が
見られました。

【ガオンツェル】
「…ベーテルスファの民とは言え
 必ずしも全員が全員
 イーギネファーの名に否定的では無いと言う事だな。
 苦難の多い道だが、俺は全面的に強力するつもりでいる。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そう言います。

組織としての目的は
漠然としたものではありましたが
バーニィは
ほんの少しだけ
希望を感じられました。

他の同行者も
各々希望を持って
嬉しそうにしております。

こうして
バーニィ達は
ガオンツェルの案内で
街の何処かへと
連れられて行きました。


おしまぃ。(o_ _)o