オハナシ。~イーギネファー 17。~ | なるるのゆめ。

オハナシ。~イーギネファー 17。~

イーギネファーの地下施設で
ネル達の元を去ったテッドは
転移先の実家を通って
ベーテルスファ神殿の屋上に
やって来ました。

テッドはある決意を固めて
神殿の天井にある吹き抜けから
神殿内部へと入って行きます。

テッドは
大きめの椅子が置いてある
広い空間へと着地して
大きめの椅子を
じっと見つめておりました。

【テッド】
「…フェルグゥエル…ごめんな…」
テッドは
笑みを浮かべて
そう呟きました。

するとその時です。

【ガオンツェル】
「…一昨日は街を挙げてフェルグゥエル代表を弔ったぞ…」
ガオンツェルが
そう言いながら
テッドの方へと
近寄って来ます。

テッドは
歩いて来るガオンツェルの方を見て
再会の挨拶を軽く交わすと
ある事に気が付きました。

【テッド】
「あれ…?お前…両腕…」
テッドは
そう言いながら
ガオンツェルの両腕に
目を向けます。

ガオンツェルは
先の戦いによって
両腕を失った筈ですが
失った部分には
岩の様な質感のものが
両腕として存在していました。

【ガオンツェル】
「あぁ、これか。これは魔生物生成の応用で
 魔力で生成している…言わば魔力の腕だな。
 多少慣れは必要だが、これなら失う前と変わらない。
 維持には魔力を消耗し続けるが、魔力の良い修練にもなる。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そう説明してくれます。

【テッド】
「はは…俺も片方失ったから
 少しは共感してやれるって思ったのにな。」
テッドは
笑みを浮かべて
冗談交じりにそう言いながら
身に纏った外套で隠れていた
自身の失った右腕を見せました。

【ガオンツェル】
「お前その腕…何があった?」
ガオンツェルは
少し驚いて
そう聞きます。

【テッド】
「昨日、ちょっとした戦いがあってな…
 組織を抜けてネウリクセンについて行った
 ディナって子が、ギスキームって奴を連れて来たんだ…
 結果的にソイツは何とかなったんだけど
 ソイツとの戦いで仲間を庇って、腕を吹き飛ばされた。」
テッドは
そう答えて
軽く笑いました。

さらに。

【テッド】
「ま、失ったもんは仕方ない。
 それに俺も魔力で何とかしようと思ってたんだ。」
テッドは
笑みを浮かべて
そう言います。

【ガオンツェル】
「土の魔力なら物体化は容易いが…
 風や雷の魔力だと、物体化や維持が難しいかもな。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そう言いました。

【テッド】
「その辺も含めて、ちょっと考えがあるんだ…
 それはそうと、今後の首長と代表はどうなったんだ?」
テッドは
笑みを浮かべて
そう言います。

【ガオンツェル】
「そうだ…お前が去ってから色々とあったんだ…
 その事もそうだが、他に重要な事もある…何から話すべきか…」
ガオンツェルは
そう言いながら
少し悩みました。

【テッド】
「ん?順を追って話せば良いさ。」
テッドは
少し不思議そうにしつつ
そう答えます。

テッドの言葉に
ガオンツェルは頷いて
話し始めました。

【ガオンツェル】
「一昨日、ネウリクセンが去った後
 街中にフェルグゥエル代表の事が伝えられ
 その日街は、代表を弔う雰囲気に包まれた…
 街の者達は各々弔い、この神殿に足を運んだ者も居る。
 街中がその余韻に浸ったまま翌日を迎えたのだが…
 昨日、ノンナニュードの民がある報告に現れた。
 ネウリクセンがノンナニュードへ攻め込んだと言う報告だ…
 俺が対応したから街の混乱は避けられたが
 俺はすぐさま有志を募り対策を考え始めた。
 すると、ある者がネフトキュリム様に報せようと言い出した。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そんな事を言います。

【テッド】
「ネフトキュリム様…って、リリィ・ネフトキュリムの事か?」
テッドは
驚きながら
思わずそう聞きます。

【ガオンツェル】
「ああ、その通りだ。」
ガオンツェルは
何やら嬉しそうに
そう答えると
話を続けました。

【ガオンツェル】
「さらにその者はその場で、直ちに報せられると言い出した。
 その者はフェルグゥエル代表の側近の一人で
 以前ネフトキュリム様が代表に会いに来た際
 緊急時に報せを伝えられる様、準備を済ませていたらしい。」
ガオンツェルは
少し不思議そうにして
そう言います。

テッドは
納得した様子で
話を聞いていました。

【テッド】
「…思念伝達の魔術だな…
 相手の魔力を知っておく必要があるんだよ。
 フェルグゥエルも使えたみたいだけど
 居場所も把握してなきゃならないとかで
 出来る相手は少ないって言ってたっけ…
 俺は出来ないけど、組織にも使える子が居るよ。」
テッドは
笑みを浮かべて
そう言います。

【ガオンツェル】
「その魔術の事は詳しく無いが、早速報せを頼んだ。
 フェルグゥエル代表の事と、敵が迫っている事…
 するとだ…しばらくしてネフトキュリム様がこの街に現れた。」
ガオンツェルは
そう言うと
得意気に笑いました。

【テッド】
「嘘だろ…会ったのかよ!」
テッドは
少し羨ましそうな様子で
そう聞きます。

【ガオンツェル】
「此方が呼んだのだから、対応するのは当たり前だろう?
 …まぁ、浮かれ気分の者は居たよ…俺もまぁ…
 いやいや、そんな事よりもだ…
 ネフトキュリム様には改めて代表の事を伝え
 ネウリクセンの存在と、ノンナニュードの現状も伝えた。」
ガオンツェルは
気を取り直して
そう話しました。

【テッド】
「待て…ネフトキュリム様にそんな事伝えたら
 ノンナニュードに向かっちまうんじゃないか?」
テッドは
冗談交じりに
そう言います。

すると。

【ガオンツェル】
「結果から言えば全くその通りだ。
 ネフトキュリム様は俺達にある要件を伝えた後
 ネウリクセンと話しをして来ると仰り
 ノンナニュードから来た者による転移魔術で
 単身、ノンナニュードに向かってしまわれたよ。」
ガオンツェルは
苦笑いをして
そう言いました。

【テッド】
「いやまあ…そりゃそうだよな…
 …ほんと、伝承通りの人なんだな…って言うか…
 もしかしたら全部解決しちゃう可能性もあるよな…」
テッドも
苦笑いをして
そう言います。

【ガオンツェル】
「まぁそれならそれで、とても有難い事だ…
 そもそもはそれを頼っての報せでもあったからな…
 一先ずノンナニュードの事はお任せして
 俺達はネフトキュリム様の要件に注力する事にした。
 ネフトキュリム様から承った要件は二つで
 この街を立て直す事と、ベーテルスファ首長の後任を決める事…
 ドナルエリ代表の後任に関しては
 他の地域と話し合う必要もあるから、後回しでも良いとの事だ。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そう言うと
さらに続けて。

【ガオンツェル】
「それで、この街の首長後任を決めようとしているんだが…」
ガオンツェルは
そう言いながら
言い淀みます。

【テッド】
「どうせ誰もなりたがらないんだろ?」
テッドは
笑みを浮かべて
そう聞きました。

【ガオンツェル】
「あぁ…候補になりそうなベーテルスファの一族も
 側近だった者達も、前任程の大役は務まらないとの事だ。
 フェルグゥエル代表の手腕もさることながら
 ネフトキュリム様が登場した事もあって
 首長後任への自薦は、皆気後れしている様だな…
 俺が決める訳には行かないが、強く推薦したい者は居て…」
ガオンツェルが
少し困った様子で
そう話していると
その時。

「…私も断った筈だけど…?」
そう言いながら
一人の女性が現れました。

現れた女性はヴィアナで
テッドとガオンツェルの元へ
近付いて来ます。

【テッド】
「…推薦したいって…ヴィアナの事か。
 俺もヴィアナで良いと思ったんだけどな。」
テッドは
笑みを浮かべて
そう言いました。

【ヴィアナ】
「勝手な事言わないでよ…
 雷の魔力だって継いでないのに…
 そう言う意味では、テッドがなったら良いと思うけど…?」
ヴィアナは
困った様子で
そう言います。

【テッド】
「俺はこれからやる事があるんだ…
 それに俺の事、良く知ってるだろ?
 俺もヴィアナの事はよ~く知ってるぜ?
 ヴィアナは責任感があるし、面倒見も良いし
 ベーテルスファの一族の中でも人望ある方だろ?
 それに魔力なんて関係無いさ。
 歴代首長にも雷の魔力を継いでない奴は居たし
 他の奴等に無理矢理やらせるよりは適任だと思うぜ。
 首長とは言わなくても代行とかさ!首長代行でどうだ?」
テッドは笑みを浮かべて
ヴィアナを煽てる様に
そう言いました。

【ヴィアナ】
「…別に、本当に誰も居ないなら…仕方ないとは思ってたけど…」
ヴィアナは
少し気恥ずかしそうにして
呟く様に言います。

【ガオンツェル】
「そうと決まれば早速、他の者達に伝えなければな。」
ガオンツェルは
テッドの後押しに感謝しつつ
ヴィアナの気が変わらない内に
更に後押ししました。

するとその時
テッドはある事に気付き
ヴィアナに確認します。

【テッド】
「そう言えばヴィアナ…
 ヴィアナもネフトキュリム様に会ったのか…?」
テッドは
真剣な面持ちで
ヴィアナに
そんな事を聞きました。

【ヴィアナ】
「…会ったけど…?それ、今重要?
 別に昨日以外にも、少し前にも一度会ってるし…」
ヴィアナは
不思議そうにして
そう答えます。

【テッド】
「…何でだ…何で俺は会えない…」
テッドは
少し悔しそうに
笑みを浮かべて
そう言いました。

【ガオンツェル】
「親し過ぎてつい忘れてしまうが
 ヴィアナは代表の側近の様なものだったからな…」
ガオンツェルは
納得しながら
呟く様にそう言います。

テッド達が
そんな他愛の無い会話をしていると
神殿の入口方面から
誰かが一人
テッド達の方へと
近付いて来ました。

近付いて来るのは
ツォウトレィクで
ツォウトレィクは
テッド達の傍で立ち止まると
互いに軽く挨拶を交わします。

そして。

【ガオンツェル】
「ツォウトレィク、どうした?何かあったのか?」
ガオンツェルは
不思議そうにして
ツォウトレィクに
そう聞きました。

【ツォウトレィク】
「…ネフトキュリム様はネウリクセン達と
 ノンナニュードの街の外れにある邸宅で
 話し合ってる筈なんだけど
 昨日から動きが無くて様子がおかしいんだ…
 そして今朝突然
 ネフトキュリム様の魔力を感じられなくなった…
 他の皆も感じないって…まるで突然、消えてしまったようにな。」
ツォウトレィクは
険しい表情で
そう教えてくれます。

【ガオンツェル】
「…突然消える…どう言う事だ…
 それで、ネウリクセン達はどうしたんだ?」
ガオンツェルは
不思議そうにしつつ
心配してそう聞きました。

【ツォウトレィク】
「奴等の魔力は感じるから、まだ居る筈なんだけど
 これと言った不審な動きは見られ無いんだ…
 それもまた不気味だ…
 様子を見に行こうにも姉さん達は
 決裂に繋がる事を恐れて、皆に待機を命じてる…
 ネフトキュリム様にも任せろと言われているからな…」
ツォウトレィクは
淡々と状況を
話してくれます。

【ガオンツェル】
「…何が起こっているか分からないが
 やはり戦いに備えて置く必要はありそうだな…」
ガオンツェルは
何やら悩みつつ
そう言いました。

ツォウトレィクは
ガオンツェルの考えに
賛同しています。

【ヴィアナ】
「…それにしても、突然消えるなんて…
 転移魔術で何処かへ転移させられた…とか?」
ヴィアナは
テッドと顔を合わせて
そう言います。

【テッド】
「…まあ、その可能性が…
 いや…もしかしたら…なる程な…
 …でも動きが無いのが気になるな…」
テッドは
何かに気が付いた様子で
独り言の様に
そう呟きました。

【ツォウトレィク】
「…テッド、何か気付いたのか?」
ツォウトレィクは
テッドの様子が気になり
そう聞きます。

【テッド】
「…いや…いやいや…何でもないよ。」
テッドは
そう言ってはぐらかすと
さらに続けて
「それよりツォウトレィク…
 お前もネフトキュリム様に会ったのかよ。」
テッドは
真剣な面持ちで
そう聞きました。

【ツォウトレィク】
「…?会ったけど、それが何か問題か?」
ツォウトレィクは
不思議そうにして
そう聞きます。

【テッド】
「…会えてねぇの、俺だけかよ…!」
テッドは
悔しそうにしつつ
笑みを浮かべて
そう言いました。

ツォウトレィクは
不思議そうにして
首を傾げます。

ヴィアナとガオンツェルは
少し呆れていました。

そして。

【ツォウトレィク】
「良く分からないけど、伝える事は伝えたし
 僕は姉さんの事が心配だから、一度戻るよ。
 何人か連れて来たから置いてく…何かあれば役立ててくれ…」
ツォウトレィクは
そう言いながら
その場を後にしました。

【テッド】
「…相変わらずだな…安心したぜ。」
テッドは
ツォウトレィクを見送りながら
笑みを浮かべて
そう言います。

【ガオンツェル】
「とりあえず…早速戦士を集めよう。二人とも手伝ってくれ。」
ガオンツェルは
気を取り直して
テッドとヴィアナに
そう言いました。

するとその時。

【テッド】
「済まねぇ、俺は手伝えない。
 さっきも言ったけど、ちょっとやる事があるんだ。」
テッドは
笑みを浮かべて
そう言いました。

【ヴィアナ】
「やる事って何なの?
 ネフトキュリム様やノンナニュードの事よりも重要な事?」
ヴィアナは
不思議そうにして
そう聞きます。

【テッド】
「…まあ…俺にとっては最重要だな。」
テッドは
笑みを浮かべて
はっきりとそう答えました。

【ガオンツェル】
「…一体何をやろうとしている?」
ガオンツェルは
不思議そうにして
そう聞きます。

【テッド】
「…ちょっと雷の魔界に…“ザンナメアル”に行ってくる。」
テッドは
笑みを浮かべて
そう答えました。

ガオンツェルとヴィアナは
テッドの言葉に
何やら衝撃を受けている様子で
一瞬言葉を失います。


おしまぃ。(o_ _)o