オハナシ。~BHCOF10。~ | なるるのゆめ。

オハナシ。~BHCOF10。~

テッド達の前に立ちはだかる
ヨストレィクの方へ
ツォウトレィクが
向かって行きます。

【テッド】
「物騒な事言い出したな…
 そう言う言葉、良くないぞ~。」
テッドは
ツォウトレィクの後方から
冗談交じりに
そう言いました。

すると。

【ツォウトレィク】
「お前には関係ない…黙ってろ…垂れ耳…」
ツォウトレィクは
テッドの方へ
振り返る事も無く
そう言います。

テッドは
苦笑いをして
隣に居るガオンツェルと
顔を見合わせました。

【ガオンツェル】
「…二人共、複雑な状況だろうな…」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
テッドにそう言います。

テッドは
ガオンツェルの言葉を聞くと
クゥトレイネの方へ
目をやりました。

クゥトレイネは
テッドとガオンツェルの
少し後ろにおり
とても衝撃を受けている様子で
ヨストレィクの方を見ておりました。

ヴィアナとノエルは
クゥトレイネの傍で
心配そうにしておりました。

そして。

【ツォウトレィク】
「叔父さん。
 一応聞いといてやるよ…何で裏切った?」
ツォウトレィクは
ヨストレィクを睨み
そう聞きながら
武器を構えました。

すると
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
首を横に振りました。

【ヨストレィク】
「裏切り、と言われるのは心外だな…」
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
溜息交じりに
そう答えました。

ツォウトレィクは
不思議そうにして
ヨストレィクの言葉を待ちます。

ヨストレィクは
さらに続けます。

【ヨストレィク】
「元々、私やノンナニュードの民の多くは
 フェグラムナ幽谷の民を支持しているんだよ?
 境遇こそ違うが、幽谷の民とは同じ気持ちでね…
 ベーテルスファの一族が代々
 ドナルエリの代表面をしている事に
 わだかまりを感じていたんだ。
 いつの時代も、定式だと言わんばかりに
 あの一族が代表を継いでいる…
 やる事をやっているのなら目を瞑っても良い…
 だが、ベーテルスファの一族が代表を続けていても
 幽谷との交流は疎か、人族との交流さえ儘ならない。
 各地域、各地方と手を取り合おうと語る癖にね?
 対してノンナニュードの民は
 幽谷と一早く交流し、友好関係を築き
 "ドナルセラウ"の人族とは信頼関係にある…
 どちらがより、人々と手を取り合おうとしていると思う?」
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
そんな話をします。

さらに続けて。

【ヨストレィク】
「あの一族が代表のままでは、私達に進展は訪れない…
 ベーテルスファの一族は、極めて保守的で
 自分達の地位が守られていれば、それで良いんだよ。
 そんな奴等に、魔族の代表を任せておいて良いと思うかい?
 任せられないだろう…
 だから私達は幽谷の民と共に
 ベーテルスファを滅ぼすと約束したんだ…
 滅ぼす機会が来るまでは、進展を願い、見守るつもりで居た。
 だからこそ、ベーテルスファへの協力も惜しまなかったが…
 裏切ったのは、代表として何もしない、奴等の方じゃないかな?」
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
そう言いました。

ヨストレィクは
武器を構えていた手を下げ
何やら考えている様子です。

【テッド】
「…視点が違うと、拗れるもんだな…」
テッドは
笑みを浮かべて
呟く様にそう言います。

ガオンツェルは
テッドの心中を察している様子で
軽く頷いておりました。

するとその時でした。

クゥトレイネが
俯いた状態で
静かに歩き出し
テッドとガオンツェルの横を通り過ぎて
ヨストレィクの方へと
歩いて行きました。

テッドとガオンツェルは
クゥトレイネを止めようと思いましたが
悲し気な雰囲気を感じて
止めるに止められませんでした。

そんな二人の傍へ
ヴィアナとノエルが
近付いて来て
クゥトレイネの事を
心配そうに見ておりました。

クゥトレイネは
しばらく歩いて行くと
ツォウトレィクの横で
立ち止まります。

そして。

【クゥトレイネ】
「…叔父様…!
 昨晩の事…本心…ですよね…?」
クゥトレイネは
俯いたまま
ヨストレィクに
そう聞きました。

隣に居たツォウトレィクは
クゥトレイネの様子を見て
少し哀し気な表情を
浮かべておりました。

【ヨストレィク】
「当り前じゃないか…
 だから君の気持ちに応えたんだ。
 今の話…ノンナニュードでも
 若者達にはあまり浸透していない事だから
 説明の機会を設けなかった事は謝罪するよ。
 だが私は一度も君達を欺いてはいない…
 全てはノンナニュードの未来の為なんだ…
 だからクゥトレイネ…私と共に正しい道を歩もう。」
ヨストレィクは
笑顔でそう言うと
クゥトレイネに
手を差し伸べました。

それを聞いた
クゥトレイネは
俯いたまま
涙を零します。

それを見た
ツォウトレィクは
次の瞬間
武器を振り上げて
ヨストレィクへと
襲い掛かります。

ヨストレィクは
差し伸べていた手を引き
すぐに武器を構えると
ツォウトレィクの攻撃を
防ぎました。

【ヨストレィク】
「急にどうしたんだ、ツォウトレィク。」
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
そう言いながら
ツォウトレィクを
手にした武器で
押し返しました。

ツォウトレィクは
押し返されつつも
すぐに体勢を立て直します。

【ツォウトレィク】
「姉さんを泣かした…
 やっぱアンタは、裏切り者だよ。」
ツォウトレィクは
ヨストレィクを睨みつけて
そう言いました。

【ヨストレィク】
「早まるなよ…嬉し涙だろう?」
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
溜息交じりに
そう答えます。

ツォウトレィクは
苛ついた様子で
再びヨストレィクへと
襲い掛かりました。

【ツォウトレィク】
「違う…僕には分かる…!」
ツォウトレィクは
攻撃を仕掛けながら
そう言いました。

ヨストレィクは
余裕を持っている様子で
ツォウトレィクの攻撃を
捌いておりました。

突如
ツォウトレィクと
ヨストレィクが激突を始め
少し離れていたテッドも
行動を起こします。

【テッド】
「…やっと気が逸れたな。」
テッドはそう言いながら
ヴィアナとノエルの方を
向きました。

【ガオンツェル】
「話しながら、ずっとこちらを警戒していたからな。」
ガオンツェルは
そう言いながら
テッド達に背を向けて
ヨストレィクの方から
テッド達を身体で隠すように
少し移動しました。

ヨストレィクは
転移魔術を扱えるテッドを
ずっと警戒していたようですが
ツォウトレィクの攻撃に
対応し始めたため
一時的に気が逸れたようです。

テッドは
そんな状況を利用して
ヴィアナとノエルに
話し始めました。

【テッド】
「この隙にだ…ヴィアナ、ノエル。
 二人をベーテルスファに転移させる。
 …ベーテルスファ…って言うか、俺の家な。」
テッドは
笑みを浮かべて
二人にそう伝えました。

ヴィアナとノエルは
少し驚いておりました。

【ヴィアナ】
「何で?私達だけ戻っても…」
ヴィアナは
少し不安そうにして
そう言いました。

テッドは
ヴィアナの言葉を
遮るようにして
さらに話します。

【テッド】
「良いから聞いてくれ。
 すぐにベーテルスファに戻って、これまで聞いた話…
 ネールグスやヨストレィクが言ってた話を
 フェルグゥエルに伝えて欲しいんだ。
 ネールグス達がもう攻め込んでいる可能性もあるけど
 まだなら…まだであって欲しいから
 誰かが知らせに戻らなきゃならない。
 俺とガオンツェルは、ここに残って二人を助ける…
 ヴィアナとノエルには、ベーテルスファの方を頼みたいんだ。」
テッドは
笑顔を見せて
ヴィアナとノエルに
そう話しました。

ヴィアナは
心配そうにしつつも
納得した様子で
頷きました。

すると。

【ノエル】
「…ガ…ガオンツェル様が傍に居ないと、私、不安です…!」
ノエルは
とても不安そうにして
そう言いました。

【ガオンツェル】
「大丈夫だノエル…!自信を持て…!
 さっきも俺抜きで、皆を助けてくれただろ?
 今度は、ベーテルスファの人々を助けるんだ!」
ガオンツェルは
テッド達に背を向けたまま
ノエルにそう言います。

ノエルは
不安そうにしつつ
ガオンツェルの言葉を聞いて
谷底へと落ちて行く皆を
助けた事を
思い返していました。

すると次の瞬間。

ヨストレィクは
ツォウトレィクを突き飛ばすと
間髪を容れず
テッド達の方へと
素早く向かって来ました。

【ヨストレィク】
「何をこそこそ話しているのかな?」
ヨストレィクは
そう言いながら
武器を構えて
テッド達の方へと
接近して来ます。

接近してきたヨストレィクは
大振りの攻撃を仕掛けてきましたが
ガオンツェルが武器を取り出して
ヨストレィクの攻撃を防ぎます。

【ガオンツェル】
「ノエル…!行くんだ…!
 ライルウェンの首長達の事も、頼んだぞ…!」
ガオンツェルは
そう言いながら
ヨストレィクを
押し返そうと
対応しておりました。

【ノエル】
「…わ、分かりました…!私、がんばります…!」
ノエルは
決心した様子で
声を震わせながら
そう答えました。

テッドは
ノエルの返事に関わらず
二人を転移させる準備をしていたので
すぐに取り掛かります。

【テッド】
「ノンナニュードの首長や護衛には警戒してくれ。」
テッドは
笑みを浮かべて
ヴィアナとノエルにそう言うと
続けて
「"ディメイブ"!」
そう叫ぶと
ヴィアナとノエルの姿が消えて行き
二人を転移させました。

すると次の瞬間
ガオンツェルが
テッドの方へと
突き飛ばされてきました。

テッドは咄嗟に
ガオンツェルを支えると
武器を取り出して
構えました。

【テッド】
「…大丈夫か?」
テッドは
ヨストレィクを警戒しつつ
ガオンツェルに
そう聞きます。

【ガオンツェル】
「問題ない…押されただけだ。」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そう言うと
体勢を立て直し
テッドと共に
武器を構えます。

【ヨストレィク】
「…一番警戒しておくべきだったんだけどね…
 どうせなら、四人とも転移した方が良かったんじゃないか?」
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
そう聞いてきます。

【テッド】
「…仲間だからな…仲間は見捨てないよ。」
テッドは
笑みを浮かべて
そう答えました。

【ガオンツェル】
「そう言う事だ…二人を置いて行く訳にはいかない。」
ガオンツェルも
笑みを浮かべて
そう答えました。

【ヨストレィク】
「強がらなくても良い…
 実際にはそんな暇が無かっただけだろう?」
ヨストレィクは
笑みを浮かべてそう言うと
改めて武器を構えます。

すると次の瞬間
ツォウトレィクが
ヨストレィクの背後に接近すると
大振りの攻撃を仕掛けました。

しかし
ヨストレィクは
それに気付いていたようで
ツォウトレィクに背を向けたまま
武器を巧みに操り
長い柄の部分で
攻撃を防ぎました。

【ヨストレィク】
「相変わらずしつこいな…」
ヨストレィクは
呟く様にそう言うと
身体を回転させて
武器を振るい
ツォウトレィクを
テッド達の方へと飛ばします。

ツォウトレィクは
テッドとガオンツェルの足元へ
転がって来ました。

ガオンツェルが
そんなツォウトレィクに
手を差し伸べようとすると
ツォウトレィクは
それを無視して
自力で立ち上がります。

【ツォウトレィク】
「手を出すな…僕がやる…!」
ツォウトレィクは
ヨストレィクを睨みつつ
テッド達に
そう言いました。

ツォウトレィクは
それまでの戦いで
致命傷では無いものの
何度か攻撃を受けたようで
疲弊しておりました。

【ガオンツェル】
「意地を張っている場合ではない。奴は手強いぞ。」
ガオンツェルは
そう言いながら
ツォウトレィクの傍に寄り
武器を構えます。

【ツォウトレィク】
「うるせえ…」
ツォウトレィクは
呟く様にそう言うと
武器を構えて
一歩前に出ます。

テッドは
想定通りの反応に
苦笑いをしつつも
加勢する構えで
おりました。

すると。

【ヨストレィク】
「…うん…
 前々から気になっていたんだ…
 何故そんなに私を憎んでいるんだい?」
ヨストレィクは
不思議そう
首を傾げて
ツォウトレィクに
そう聞いてきました。

ツォウトレィクは
その言葉を聞くと
少し離れた所に居る
クゥトレイネの方へと
顔を向けました。

テッドとガオンツェルは
不思議そうにして
クゥトレイネの方を見ました。

クゥトレイネは
今だに俯いたままで
立ち尽くしておりました。

テッドは
クゥトレイネが
ヨストレィクの話を聞いて
ヨストレィク側に傾く可能性も
感じており
少しだけ不安が残っております。

すると次の瞬間
ツォウトレィクが
口を開きました。

【ツォウトレィク】
「…僕は…姉さんを愛しているんだ。
 家族としてだけじゃない…一人の女性として…
 そんな姉さんに愛されているアンタが…
 その気持ちを知りながら
 姉さんを利用し続けているアンタが、憎いんだよ…!」
ツォウトレィクは
ヨストレィクを睨みつけ
そんな事を言いました。

そして
ツォウトレィクは
ヨストレィクに向かって
再び攻撃を仕掛けます。

テッドとガオンツェルは
ツォウトレィクの
思いがけない告白に
一瞬動きを止めてしまい
反応が遅れました。

【ヨストレィク】
「…"アクアバレット"…!」
ヨストレィクがそう叫ぶと
ヨストレィクの前方の空間に
水の弾丸が幾つか現れ
ツォウトレィク目掛けて
飛んで行きました。

ツォウトレィクは
幾つかの水の弾丸を
両腕と胴体に受け
動きを止めてしまいます。

テッドとガオンツェルは
少し遅れて動き出し
ツォウトレィクの元へと
駆け寄りました。

すると次の瞬間
ヨストレィクは失笑し
大笑いします。

【ヨストレィク】
「ハハハハ!面白い事を…!
 本気で言っているのかい?
 姉を愛している?女性として?笑い話だよ全く…」
ヨストレィクは
笑いながら
そんな事を言いました。

ヨストレィクの笑い声に
クゥトレイネが反応し
顔を上げて
テッド達の方を見ておりました。

ヨストレィクは
言葉を続けます。

【ヨストレィク】
「まあ、一番身近に居たんだ…憧れは仕方ない。
 けどお前の身勝手な憎悪を、私に当てるなよ…
 確かにクゥトレイネの気持ちは知っていたが…
 利用しようだなんて、少しも思っていないよ。
 だからこそ彼女の気持ちを受け入れたんだ。
 受け入れた上で、私の立場を話しただけじゃないか。」
ヨストレィクは
笑みを浮かべて
ツォウトレィクに
そう話すと
さらに続けて
「私は何も変わっていない…
 そうだろう?クゥトレイネ。
 私と共に歩もう。共に幸せになろう。」
ヨストレィクは
クゥトレイネへ向けて
そう伝えました。

その言葉を聞いた
クゥトレイネは
再び俯くと
ゆっくりと
テッド達や
ヨストレィクの居る方へと
歩き出しました。

すると次の瞬間
ツォウトレィクは
傍に駆け寄って来た
テッドとガオンツェルを
損傷した腕で
強引に押し退けると
地面に置いていた武器を手にし
ヨストレィクへ
さらに攻撃を仕掛けました。

【ヨストレィク】
「…物分かりが悪い子だ…お前から殺してあげるよ。」
ヨストレィクは
笑みを浮かべてそう言うと
素早く武器を構えて
ツォウトレィク目掛けて
勢い良く振り抜きました。

しかし
ヨストレィクの攻撃は
空を切ります。

ヨストレィクの前には
ツォウトレィクの姿は
ありませんでした。

ヨストレィクは
一瞬戸惑いますが
すぐに理解して
上方を見上げます。

そこには
ツォウトレィクを
抱きかかえたテッドが
浮遊しておりました。

【ツォウトレィク】
「降ろせ…垂れ耳…!僕の問題だ…!」
ツォウトレィクは
相変わらずの態度で
テッドにそんな事を言います。

しかし
大分疲弊している様子で
テッドから自力で逃れる事は
出来ない様子でした。

テッドは
ガオンツェルの近くに着地すると
ツォウトレィクを
ゆっくりと下ろします。

そして。

【テッド】
「どんな呼び方をしたって構わない…
 けどそれは、助けない理由にはならないんだよね。」
テッドは
屈託のない笑顔で
ツォウトレィクに
そう言いました。

ツォウトレィクは
何故だか何も言い返せず
テッドから顔を背けながら
座り込みました。

テッドは
ツォウトレィクの反応を見届けると
ゆっくりとヨストレィクの方へ
向きました。

【テッド】
「人の愛を笑うやつは、許せないな…」
テッドは
笑みを浮かべて
ヨストレィクにそう言います。

【ヨストレィク】
「ハハ…君に何の権利がある?
 あんな事を恥ずかしげも無く言うなんて、おか…」
ヨストレィクが
笑いながら
そんな事を言っていると
突然
顎や口元の辺りに
強い突風が吹きつけ
喋るのを止められました。

テッドの方を見てみると
右掌をヨストレィクに向けて
構えておりました。

ヨストレィクは
そんなテッドを見て
突風がテッドの仕業だと
理解しました。

【テッド】
「…アンタはもう喋んなくて良いよ…
 アンタはああ言う事を
 恥ずかしげも無く言えるような相手に、出会えなかったんだな。」
テッドは笑みを浮かべて
そう言います。

【ヨストレィク】
「…だから君に…何の権利があるんだ…!」
ヨストレィクは
少し苛ついた様子で
しかし笑みを浮かべて
そう叫びながら
テッドに攻撃を仕掛けてきました。

すると次の瞬間
先程よりもさらに大きく
そして強い突風が
ヨストレィクに襲い掛かりました。

その突風によって
ヨストレィクは
大きく吹き飛ばされます。

【テッド】
「…風を操る権利、かな?」
テッドは
笑みを浮かべて
冗談交じりに
そう言いました。

そして。

【テッド】
「ガオンツェル…俺だけじゃ奴を止められない。
 機を見て強力な一撃と、その後の拘束を頼むぜ。」
テッドは笑顔で
ガオンツェルに
そう言いました。

【ガオンツェル】
「…分かった…任せておけ…!」
ガオンツェルは
笑みを浮かべて
そう言うと
針の様な槍系の武器を
地面に突き刺し
ゆっくりと埋めて行きます。

そしてテッドは
自分達の方へ
近付いて来ている
クゥトレイネに気付きます。

クゥトレイネは
テッドと目が合うと
申し訳なさそうにして
足を止めましたが
テッドは
そんなクゥトレイネに
笑顔を見せた後
座り込んでいる
ツォウトレィクへと
目配せします。

すると
クゥトレイネは
再び歩き出して
テッド達の方へと
向かって来ます。

テッドは
クゥトレイネの様子を
見届けると
ヨストレィクの方へと
向き直りました。

ヨストレィクは
既に立ち上がっており
武器を肩で担ぐようにして
ゆっくりとテッドの方へと
向かって来ていました。

テッドは
少し浮遊して
先にヨストレィクの元へと
近付きます。

テッドが近付くと
ヨストレィクは
足を止めました。

【ヨストレィク】
「…垂れ耳だと思って、侮っていたよ…
 しかし君のは攻撃では無い…それでは私を殺せないぞ!」
ヨストレィクは
笑みを浮かべつつも
苛ついている様子で
そう言うと
テッドに向けて
攻撃を仕掛けてきます。

【テッド】
「ああ…そんなつもり、無いからな…!」
テッドは
笑みを浮かべて
そう言うと
浮遊しながら
ヨストレィクの周りを
回り出します。

攻撃を仕掛けた
ヨストレィクですが
テッドの行動に警戒します。

すると次の瞬間
テッドが通過した空間から
ヨストレィク目掛けて
突風が放たれます。

【ヨストレィク】
「また…姑息にも程が…」
ヨストレィクは
突風を受けて
軽くよろめきつつ
そんな事を言いましたが
さらに続けて
突風に襲われます。

そうして
ヨストレィクは
その後も続けて
何度か突風を受けては
軽くよろめきつつも
テッドから目を離さず
反撃の機会を窺っておりました。

【テッド】
「…アンタの立場とか、この際どうでも良い…
 それはこれから、弁明でも何でもしてくれ…
 だけど…これだけはアンタに言っておきたい…!」
テッドは
ヨストレィクの周りを
回りながらそう言うと
移動を停止し
浮遊したまま
ヨストレィクの方へと
勢い良く飛んで行きます。

ヨストレィクは
それを反撃の機会と見て
向かって来るテッドに合わせて
武器を振り抜きます。

しかし
ヨストレィクの攻撃は
再び空を切りました。

ヨストレィクは
テッドの放つ突風によって
気付かない内に翻弄されており
さらにテッドが向かって来る勢いに
無意識に気圧されてしまい
少しだけ早く
攻撃してしまったのです。

思い切って
武器を振り抜いた
ヨストレィクは
体勢を崩してしまいます。

テッドは
そんなヨストレィクの懐に入ると
顎の辺りに軽く右掌を添えました。

【テッド】
「…受け入れるにしろ断るにしろ…
 愛されたのなら、真摯に向き合えよ!
 相手の気持ちを、利用してんじゃねぇ!」
テッドはそう叫びながら
右腕を突きあげ
それと同時に右掌から
突風を発生させて
ヨストレィクを
上方に吹き飛ばします。

飛ばされたヨストレィクは
無防備になって
地面へと落下して行きます。

そして
ヨストレィクの落下地点には
ガオンツェルが待っておりました。

【ガオンツェル】
「"グランドコレクト"…!」
ガオンツェルは
そう言いながら
武器を構えます。

ガオンツェルの
針のような槍系の武器の先端には
石や岩や土などが集まっており
その塊は戦鎚系の武器のような形状に
なっておりました。

さらに。

【ガオンツェル】
「"クラードクラッシュ"!」
ガオンツェルは
落下してくるヨストレィクに合わせ
そう叫びながら
武器を振り抜きました。

無防備に落下していた
ヨストレィクには
ガオンツェルの攻撃を
回避する事も出来ず
見事に直撃しました。

そうして
ガオンツェルの攻撃を受けた
ヨストレィクは
勢い良く地面を転がっていきました。

さらに
攻撃が直撃したのと同時に
ガオンツェルの武器に
集まっていた塊が崩壊し
幾つもの欠片が
ヨストレィクへと向かい
拘束します。

クゥトレイネは
ツォウトレィクの元へ
合流しており
二人は戦いの決着を
見届けていました。

テッドは
ガオンツェルの元へと向かい
傍に着地すると
テッドとガオンツェルは
頭上で互いの掌を合わせました。


おしまぃ。(o_ _)o