「国民をとことん貧しくする

日銀と財務省の大罪

高橋洋一著


p125


時計の針を少し戻そう。

実は、2007年に第1次安倍政権が倒された最も大きな要因は、「消えた年金問題」に取り組もうとして「歳入庁創設」を検討したことである。これが財務省の逆鱗に触れたのだ。私もその推進者だってのでよくわかる。

では、なぜ財務省が猛烈に抵抗したのか。それは、歳入庁ができると、先述した権力の源泉である「国税調査権」を手放すことになるからだ。もちろん、「国税庁を財務省の配下に置けなくなると、財務省からの天下りに支障がでる」というくだらない理由もある。

日本では会社員の税金は国税庁、社会保険料は日本年金機構と全国健康保険協会(協会けんぽ)にそれぞれ納めることになっている。そのため、とくに社会保険料の徴収漏れなどの問題が起きやすい。社会保険を充実させたいなら、放置されてきた社会保険料の諸問題について対策を打つ必要がある。その具体策が「歳入庁」の創設だったのである。


(中略)


しかし、歳入庁ができると内閣府の下に納まる形になる。内閣府になってしまうと、これまでのように財務省が自由に人事を行えない。財務省は、それがイヤなのだ。そういう背景があるため、日本では歳入庁の創設は簡単にはいかない。


歳入庁を創設すれば、保険料を給料から天引きしておきながら保険料を納めないという企業の不正も難しくなる。実は、厚生年金として支払われるべき金額を、多くの会社がネコババしていたことが、かつでの消えた年金問題の本質だった。「消えた」というが、もともと納めていないのだから「なかった」というのが正解なのだ。