※アメリカの話です。
「まだ肉を食べているのですか」
ハワード・F・ライマン/グレン・マーザー著
p109
イギリスのある一つの新聞にあった記事が、ある病気を科学的な名前でこう呼んでいた。
「牛海綿状脳症」あるいは「BSE」。
その時点で、すでにイギリスでは2000から3000症例もの牛が確認されていた。
私は、直感的に疑った。その病気は、スクレイピーに感染した羊の死体の一部を牛に与えたためではないか?
スクレイピー(狂羊病)とは、次のような病気だ。まず感染した羊が痒みに耐えかねて体を柵や木などにこすりつける(スクレイブ)ことから命名された。羊に特有で、感染すると確実に死んだ。イギリスでは古くから知られる家畜の病気だ。
その新聞記事はこう記述していた。英国政府の役人は国民に対してこう確約していた。
「BSEについて何の心配もいらないーーなぜなら牛は、この病気の〝最終宿主〟であるからだ。人間に伝染することはありえない。よって英国の牛肉は安全である」
しかし、私は怪しいとにらんだ。
数多くの研究者たちに電話をかけまくった。しかし、彼らの誰一人として〝狂牛病〟を知っている人はいなかった。ようやく一人の脳専門の科学者と出会った。いわく「BSEは、脳退化症の一種です。他の例としては羊や山羊に見られるスクレイピー、ミンク感染脳症、鹿、ヘラジカに見られる退化症、ネコ科に発現するネコスポンジ脳症⋯⋯などがあります」
人間について、物語はいささか異様だ。ニューギニア高地のフォア地区。そこの原住民たちは人食人種であった。この部族の人々の間に脳が退化する〝クールー〟という奇病が蔓延していることが知られている。
〝クールー〟犠牲者たちの脳は、死後解剖の結果、アミロイド斑が観察された。これはタンパク質繊維が蓄積したもので、アルツハイマー病や、たまに起こる、緩慢に進行する痴呆症などでも観察される。さらにクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)でも同様である。
さらにこれらのスポンジ脳症が種の壁を超え感染することがミンクと牛を使った実験によって明らかにされている。
つまり、スクレイピー、CJD、クールー病などは、すべて、あらゆる種の間で感染することが立証されている。