旅立つ前に(1)~北朝鮮って「行ける」の?~ | 長いブログ (旧:ぶらり北朝鮮)

長いブログ (旧:ぶらり北朝鮮)

以前は北朝鮮旅行記でしたがネタ切れで変更。
その名のとおり、記事一本がやたら長いです(笑)
書くのも、読むのもしんどい。
いや、わかってんですけどね…なんかこうなっちゃう。
お疲れの方は何度かに分けてお読みください。
その方がアクセス数上げられr@うxぁp…

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◆おことわり◆

 

すでに広く報道されているとおり、北朝鮮の事実上のトップ

朝鮮労働党の金正恩総書記が2024年1月15日に行った

最高人民会議での演説でこれまでの南北の平和統一路線を大きく転換しました。

 

韓国を「不変の主敵」と呼んで敵対国に位置付け、

同族同胞の国とは認めないとして平和統一も目指さないことに。

南北間の経済協力や平和統一のために設置されていた各種機関も即刻廃止したようです。

 

このブログは2018年の訪朝経験をベースとした内容で記述しています。

当時はまだ南北統一が究極の目的、民族の悲願であり最優先事項という状況下でした。

 

これから当ブログをお読みくださる皆さまには

南北関係や現地の市民感情などに関する記述が

いまでは現状からみて異なる点があるということをご理解の上

それぞれの記事をお楽しみいただけると幸いです。

 

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…そう。まずはコレですよね。

 

おそらく多くの日本人の皆さまはこれが第一の疑問でしょう。

「北朝鮮に行く」と言うとまぁほぼ全員に

「え?」と聞き返されるのがその証拠。

 

確かに

「ハワイへ行くんだ♪」

「韓国へ行くねん!」

という、普段聞きなれたセリフじゃありませんからね。

最近よく耳にするようになったとはいえ、

まだまだ気分的にはなじみの薄いお国です。

それに耳にするとは言っても

ニュースにしろワイドショーにしろ

だいたいが核だ拉致だ独裁だ…、と

あんまりよろしくない内容とのセットばかりだし。

●結論から言うと、「行けます。」

まぁ、現にワタシが行ってるので(笑)

 

ただそうは言っても

駅前のJ●Bなんかへふらりと立ち寄って

カウンターのお姉さんにいきなり

「今度の連休に家族で北朝鮮3泊4日」

などとオーダーしたり、

ふと思い立って

「本場のピョンヤン冷麺が食いたい!」

とばかりにサクッとネットで予約…、とは

さすがにいかないんですけどね。

 

それに一応かの国について

わが国の外務省ホームページでは

「渡航を自粛してください」

ということになってますので、

あんまりそう大っぴらに

ほいほいと行けるトコでもなさそうです。

 

でもこの渡航自粛ってのは

べつにテロや内戦でヤバいから、ではなく

北朝鮮への制裁圧力を加える意味での

政治的措置としての交流制限なんですね。

 

だから実際

その外務省の安全情報マップでは

おなじみイラクやアフガニスタンのように

マジ超危険な赤とかオレンジや

それでも微妙に危険な黄色、ではなく

世界で唯一

 

グレー

 

で塗られてます。

 

つまり

注意や退避といった

危険度レベルでのカテゴリーには入らない

いわば分類不能、な区分。
まさに文字通りの

「グレーゾーン」(笑)

 

例えばお母さん的(?)に言うと

「あそこは危ないから行っちゃダメっ!」

ではなくて

「あんなとこに行くもんじゃありません!」

というようなニュアンスですかねww

    ↑凡例がありません…「レベル外」なんですね

 

●危険な場所でもありません

なので何も「行けない」ことはないんです。

街なかを武器持ったゲリラが闊歩してるわけじゃないし、

ギャングがナイフ持ってうろついてるわけでもありません。

まぁテロや内戦はないとしても

「行ったら拉致られるんじゃないか」とか

「規則破ったら収容所に送られるんでしょ」とか

そういった心配は確かに多く聞きます。

 

そのへんの「危険」はどうなのか、ですが

よほど不審な行動をしなければ大丈夫です。

具体的にはもう警察に捕まるレベルですかね。

モノ盗ったり、勝手にどっか不法侵入したり、とか。

特に注意が必要なのは

政府や軍関係施設まわりでの怪しまれる行動ですが

それは他の国でもおなじこと。

ニッポンが緩すぎるんですよ、ほんとは。

 

くわしくはこの後の記事でご紹介していきますが

基本的に現地ではずっとガイドが一緒なので

捕まるような悪さをするスキがありません(笑)。

それに、仮にいま日本人を拉致したところで

がっぽり身代金を取れる見込みはないし

労力に見合うメリットが全くないので

そもそもそんな面倒くさいことしないでしょう。

むしろいまの北朝鮮の立場としては

対外的なイメージアップに努めたいところ。

それに旅行者はありがたい「お客様」ですからね。

 

もちろんそうは言っても

一般市民の中には日本に対して

特別な感情を持った人が多いのは事実。

「日本軍ワルいやつ」な教育は浸透してますし

    北朝鮮の宣伝ポスター。

     「先軍の銃隊で米日侵略者どもを

      永遠に消し去ってやる!」と書いてます。かなりの迫力。

 

社会通念や規則習慣もお互いに違うので

ニッポンではさほど問題にならないような

発言や行動がトラブルになることも。

 

こちらは子供向けに自国史を教えるマンガ。

日本の統治で古典や文化財が破壊された、

神道を強制された、伝統楽器を捨てさせられた…とか

失業者、貧困者、演説や請願をする人などを

手続きや裁判もなしに思うがまま処刑し、

中世よりも過酷な拷問で苦しめた…とか書いてます。

右側のページのタイトルは

「朝鮮人民の民族精神を抹殺するための日帝の策動」。

ほんっとに日本人が憎々しげに描かれてますね(苦笑)

 

もちろん今の日本人までを本気で憎み、

恨んでいるような人はほとんどいませんが

一般市民の感情のベースにはこういう教育がある、

我々と根本的な考え方には違いがあるということは

前提として知っておいた方が良いでしょう。

さすがにいきなり殴られたり

石を投げられたりすることはないですが

やはりそのへんの細やかな注意は必要です。

 

 

また、そもそも国交がない国のことですから

パスポートをなくしたりケガしたり、

現地で何かトラブルがあった場合に

いろいろ対応が難しいというリスクがあるのも事実です。

 

それでも

外国を訪れているという適度な緊張と

相手に対する敬意さえ忘れずに

純粋に旅行を楽しむ姿勢でいれば

何の問題もないはずで

ふつうの海外旅行と変わりませんよ。

先入観を取っ払って行ってみれば

実際に現地へ行かなきゃ見えないもの、

感じられないものがきっとあると思います。

 

●ただ、高い…

そうして心の中に

北朝鮮へ対する興味と

行ってみたい気持ちが沸き起こった時、

それを阻む大きな壁があります。

 

それは、価格。

 

 

だいたい基本的なコースだと

5日間でおよそ20万円くらい~ですかね。

海外旅行のお値段がぐんと低くなった現在、

これってもうヨーロッパへも軽く行けちゃう金額です。

もしシングル一人旅だとそこへさらに

数万円の一人部屋割増料金もかかります。

正直、「ちょっと行ってみるか」と言うには

かなり思い切りが必要な金額。

 

いったいなんでこんなに高いねん!と思っちゃいますが

一言で言うと

「ぜいたくなパック旅行だから」

でしょうか。

 

ずっとガイドが同行しますし、移動はすべて専用車。

まぁつまりタクシーを借り切って旅行するようなもんです。

それに旅行中は3度の食事もぜんぶ

ちゃんとしたレストランかホテルでおナカいっぱい提供されます。

      名物アヒルの焼き肉。むっちゃうまいよ。 こういうのもツアー代込み。

      あ、水以外のドリンク類は別料金ですので念のため。

 

そしてホテルは現地の高級ホテルをブッキング…

これって、よく見る新聞広告的な表現だと

 

「五つ星ホテル確約!

全行程お食事つき&専用車+あなた専属のガイドと巡る5日間♪」

 

などと言えちゃうような内容ですから

これはもう日本で考えてもVIP級、

まさに「富裕層向け」のツアーでしょう(笑)

 

で、いやウチは富裕層じゃないから

グレード落としてもっと安くしてくれ~、と言っても

安い旅館に変えてもらったり

専用車やガイドを外したり

食事を大衆食堂に変更したりはできません。

 

やはり国交がない国からの観光は

現地にとっても特別なことなので

どうしてもいろいろお膳立てをして

これに従う条件でしか受け入れられない、

という事情があるようなんですね。

自由にウロウロされてなんか起きたらかなわん、という

修学旅行のときの先生的な考え方に通じるものがあります。

 

まぁ、そもそもがまだこの北朝鮮という国が

外国人に大きく開放されていない現状では

街なかにある一般の商店や食堂だと

そこにいる従業員や利用客が慣れていない、というか

ビビったり警戒したり、物珍しげに見たりと

お客さん相手としてしっかり対応できないだろうことと

もうぶっちゃけ手配や説明の段取りがメンドクサイのも

向こうとしては原因のひとつなんでしょう。

 

そんなわけで北朝鮮への旅行は

定型のパッケージツアーが基本。

またはいくつかの既定パーツの組み合わせになります。

最近は一部の専門旅行代理店が

かなり個性的なツアーも企画販売しているようですが

やはり現実にはほとんど自由度がないのが事実です。

そしてホテルにしろ食事にしろ専用車にしろ、

競争の原理は働かないので割引なんかはあり得ない。

それどころか外国人価格という

イヤな言い方をすれば「言い値」で払うしかないので

どうしても高額に積み上がっていくのは仕方ありません。

 

それでもなかなかその素顔を見ることができない北朝鮮。

一度は実際に自分の目で見てみるのも良いのでは。

とりあえず、案外簡単に行けますよというのが今回の結論。

ただし、おカネと時間は必要ですがww