描きたい人、描かれたくない人 | 高峰明日香の明日はどっちだ!

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1/6のSFホームドラマお人形劇場やってます。PCオススメ。
ジェニフレ・バービー・12インチフィギュア達で構成されてます。
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私が監督でドールは役者です。記事は予約投稿です。

あすか「このうす~い本のキャラ、了くんとツヨシくんじゃない?描いたの多分、うちのクラスの人だと思う。特徴をよく観察してる。まさかうちのクラスから有名同人漫画家が……って、だいたい思い当たるけど」

 

久美子「そうなのよ。気味悪いわよ。『メロ○ブックス』で2000円で買ったんだけど、これだけ絵が上手くて、なんで身近な人物をモデルにこういう本出すのかしらね」

 

あすか「2000円は大きい額だね。かなり自信あると見た。二次元キャラやアイドルだけじゃ飽き足らないんだろう。まあ、あの2人のことをあれこれ妄想してみたくなったかな。でも、男子同士でこんなベタベタした気遣いはしないよ。全年齢推奨っていうけど、やーらしいと思う」

 

久美子「そうよね。了くんやツヨシくんにこの本読ませたら描いた人に苦情言うと思うんだけど」

 

あすか「2人には黙っておこう、クラスに波風は立てたくない。それに同人誌って『イヤなら見るな』の世界でしょ。彼女も2人に一定の好意があってこういうの描いたんだと思う。歪んでるけど。妄想を共有してくれる人とだけ楽しみたいだけだから、こちらに危害は加えてこないよ」

 

久美子「危害なら充分加わってるわよ。陰で同人作家のご飯になってるなんて誰だって思いたくないでしょ」

 

あすか「私は描きたい人の気持ちも、描かれたくない人の気持ちも分かる。私は昔書いたものの中にモデルがいたけど、今はもうモデルは作らない。友達いなくなっちゃうからね。去った友達は仕方ない、私が悪いんだから。でも、書きたい気持ちはどこへ行っちゃうんだろうと思うと、やっぱり2人には言えないよ」

 

久美子「アンタだって書かれたことあるでしょ」

あすか「あるけど、もう気にならないよ。この業界よくあることだもの。他人の陰口で友人が離れたことだって山ほどあるけど、それもよくあること」

久美子「よくあるからって許せることでもないと思うけど。この同人の人って有名なんでしょ?アンタのクラスの人なんでしょ?2人の知るところとなってもおかしくないと思う」

 

あすか「同人はクチが固いから、普段同人やってるようには見せないよ。それに了くんとツヨシくんがギクシャクしたらイヤなんだけど」

久美子「そんな事なかれ主義――」

 

藤村博士「昨日はありがとうございました」

あすか「あー、藤村博士、今の話」

藤村博士「大声だったからよく聞こえましたが、1000円で問題の本、引き取りますよ。花湖小鳩の同人誌『禁断の花園』でしょ。もうメロ○ブックスでは売り切れて、うちにも古本回ってきてないか問い合わせ来てます。古本屋に了くんもツヨシくんも来ることはないから、大丈夫じゃないですか?」

 

藤村博士「けっこう。ではいただいていきます」

久美子「まるでハイエナね」

藤村博士「また掘り出し物があれば、よろしく」

 

久美子「2人に知らせて、描いた人に抗議すべきだわ」

あすか「どうやって立証する?名前も架空のだし、設定がスナイパーとピアノを弾く少年ってトコだけで、うちのクラスの人間しか分からない。クラスのみんなに知らせたら、却って2人が困ることになるよ。ツヨシくんだってピアノリサイタル近いし、了くんだって大会がある。描いた人に謝罪させたところで、本は回収できないんだよ。描いた人の妄想じゃん。だいたい、巻末に『この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等一切関係ありません』って書いてあったし」

 

あすか「その人の妄想そのものはやらしーと思うけど、ジャンルも成人向けじゃなくてほのぼのジャンルにされてるからね。その人がもしも成人向けを描いたら抗議しようか。言いがかりだって一蹴される気がするけど。私が言うとどの口がになっちゃうんだよね。それに私達4人とも一般人じゃないでしょ。言いにくい」

 

久美子「アンタそれなりに有名だったのね。知らなかった」

了くん「?」

 

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かつて田中芳樹氏が「アルスラーン戦記」のアニメ化にあたって「二次創作はOKだけど、成人向けNG」と発表したことがあります。同人界では「殿下があんなに可愛いのに、描いちゃダメなんて、ヘビの生殺し」と悲鳴があがりました。そのせいか同作はあまり後になっても騒がれていません。どんなものでも描きたい人、描かれたくない人がいるけど、描きたい人は隠れてでも描くでしょう。

2次元はそれでもいいのですが、3次元は問題が起こりやすいのです。クリストファー・ロビンが父の傑作「くまのプーさん」の版権を早々にディズニーに売ってしまったのは、自分の子供時代をモデルに描かれたことに対する反発と言われています。