久美子ちゃんのNY話 | 高峰明日香の明日はどっちだ!

高峰明日香の明日はどっちだ!

お人形劇場。永遠の時を生きる「ジルコニア」の少年少女たちの日常と夢と愛と悩みがドールによる劇場で石神井公園・池袋・新宿を舞台に繰り広げられます。闇深いです。コナン時空です。1/6ドール(ジェニー・リカ・バービー・六分の一男子図鑑等)注意:PG12

1月末。

久美子「みんな、ただいま」

あすか「久美子ちゃん、ニューヨーク楽しかった?」

ツヨシ「フフフ、洋行帰りがまたひとり」

了くん「おかえり」

 

久美子「正直、ニューヨーク初めて行ってみたら、あんなにしんどいと思わなかったわ。大人は子供みたいだし、子供は大人みたい。日本っていいね」

 

ツヨシ「やっぱり食べ物が和食じゃなかったから?」

久美子「アンタじゃあるまいし。食べるものはお父さんや妹が作ってくれたけど、懐かしい味だったわよ」

 

あすか「伯父さん、休みを取ってくれたんだね」

久美子「うん。街の人も多忙ながら親切で、悪くなかったんだけど。でも、遊びに来た従姉妹達が、ちょっとね……」

 

ツヨシ「食事のマナーにうるさい?」

久美子「逆よ。あっちがなってない。それに、話題がアイドルと男の子とダイエットと買い物しかないのよ。オペラのオの字も知らないの、話題が合わない。似たような歳なのに、アタシだけ宇宙人みたいな気分だったわ。お母さんからもらって読んだ『エイリアン通り』の人達とは全然違った」

あすか「ロサンゼルスとニューヨークじゃかなり違うはずだよ」

 

了くん「従姉妹さんたち、どこに住んでるの?」

久美子「ギリシャ危機の時移住してきて、今ボストンよ。言語は通じるのに、意味がまるで違うの。初日から日本に帰りたかった」

了くん「それは残念だね」

 

あすか「適当にニコニコって、久美子ちゃんは無理だよね」

久美子「あそこではニコニコしてた方よ。だけど、従姉妹達は妙に、向こうのものの見方でアタシを見るのよ。なんだか束縛感じてさ。そりゃ最後は見送りに来てくれたけど、次会う時までにまた印象ガラッと変わってるかしらね?」

あすか「大丈夫だよ、久美子ちゃんって成長するから、久美子ちゃんのほうで向こうの人とトコトン話せるようになるよ」

 

久美子「聞いたら、妹が飛び級してアタシより学年が上になってたわよ。ストレートに悔しいわ。さらにアタシが声楽家デビューしたって言ったら自慢の姉だなんて言って、さらに悔しいわ。手のひら返したように優しくなって何今さらって」

あすか「あはははは、まー、優しくなって良かったじゃん」

 

あすか「久美子ちゃん大真面目なのに、猫かぶってるように思われて分かってもらえないんだよね。根がルーズだから損だよ。気性までは変えられないから……お祖母ちゃんに似て自由人だって自覚はある?」

久美子「耳が痛いわ」

 

ツヨシ「ドイツ行こうよ。ドイツ人真面目だし厳格だけど、真摯だし、実は優しいよ。オペラも分かってくれる」

久美子「アタシ、そんなに真面目じゃないのよ」

ツヨシ「ぼくに比べりゃ真面目だよ。あのね、向こうの人は、自分の気持ちを相手が分かってくれるまで、理性的に説明するの。だから、こちらが自分の言いたいことをはっきり正直に言えば、応えてくれる。そして意見が飛び交って、お互い納得した時にすごく嬉しくなる。これ、向こうの人と仲良くなる醍醐味」

 

あすか「でも、真面目にやろうと頑張ってる久美子ちゃんだから、学校でも舞台でもみんな好感持ってくれるわけだし、セルフプロデュースも以前より上手くなってきてるよね。プライヴェートで活かされないだけで」

久美子「まあ、そうね。プライヴェートは不器用なままよ」

 

了くん「久美子ちゃんにとっては自由の国より東京の方が寛容だったってわけだね」

久美子「そうね、でもいつかは海外で公演したいわね。あの従姉妹達、どんな顔するかしら。アタシにとっては東京が一番自由だわ」

 

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自由の都・NYの風は久美子ちゃんには冷たすぎました。真面目という言葉のベクトルひとつとっても、久美子ちゃんの常識と違う方向を向いているのです。久美子ちゃんにとってこの短いニューヨーク滞在は、強盗に遭ったわけでもないのの、「怖い」と感じたようです。久美子ちゃんはいつも初対面は人見知りです。

実は従姉妹達は、久美子ちゃんに全く悪意はなく、束縛するつもりもなく、ただたくさん話したかっただけなのです。久美子ちゃんに受け入れるだけの度量がまだありませんでした。私は、久美子ちゃんが理性的な喋り方を身につけられたらいいと思います。