久美子「あすかっち、『Give Peace A Chance』刊行おめでとう」
あすか「ありがとう。今回の本が売れるといいんだけど」
久美子「初めての横文字タイトル、それも昔の歌から採ったものよね。思い入れ強いでしょ。歌のほうのファンも手に取ってくれるわよ」
あすか「だといいな。今回、帯はYouTuberのひなちゃんに書いてもらったんだ。彼女なら発信力抜群だから」
了くん(右)「これって『黄金の林檎』?作中にリンゴ出てくるけど」
あすか「ううん、普通のフジ。『黄金の林檎』の生産地は今、探してるけど見つかってない。みんな食べていいよ」
ツヨシ(左)「美味しそうだな、いただきます」
あすか「今回の本はテーマが重めなんだ。タイトルの中にある平和って、いくら国が平和でも、そこに住んでる個人がひとりでも貧しかったり、目立ちたがりだったり、欲の塊だったり、悪人に騙されやすい情報弱者だったりしたら成り立たないよね。かといって個人の自由を極端に制限する前提じゃ、本当の平和とは言えない。扱う人それぞれが責任を負わなきゃいけないものだ」
久美子(右)「本当に重いわね。確かに平和な世の中でも不安はなくならないし、みんなにスゴーイって言われたいとか、周囲についていけるようお金を稼ぎたいとか、静かな生活を1ミリでも損なわれたくないとか、欲が出て来ちゃうわ」
あすか(中央)「うん。結局、争いって絶対なくならないんだよね。ずっと競争だから」
了くん(左)「平和とカネも関わりが深いからな」
了くん(右)「他人を思い通りにしたいという欲望も平和とは遠いものだし……周囲に追従して脳内の快楽物質に酔いたいというのも、一見平和を維持させてるように見えて集団ヒステリーを誘う原因だ」
ツヨシ(左)「夢がないな。音楽や美術、芸術こそが平和の証だよ」
久美子「平和を標榜している、自由のない国にもつまらない歌や本や美術はあるわ。真の芸術は平和とは対極の位置にあるのかも……?」
ツヨシ「自由は平和よりさらに尊いって言う人もいたよ」
了くん「ツヨシ、廊下のピアノでラフマニノフよろしく」
ツヨシ「えー、この寒いのに」
久美子(右)「自由と平和って両立する?」
あすか「私はそれが両立しないと幸福じゃないと思うけど、人が幸せであるためには恐ろしくたくさんの条件が必要なんだよ。人によってはある種の他者の排除がそうだったりするんだ。そうでないと幸せを感じないってのは恐ろしいね。自分が安心できないから攻撃するのもまた自由、攻撃された方もやり返すのが正しいのか、逃げるのが正しいのかよく分からない」
了くん「人の安全、平和のためにはたとえば熊がいなくなるにこしたことはないんだけど、絶滅したらオレの生き甲斐もなくなっちゃうからな。ほどほどにいないと猟師は成り立たない」
あすか「言い換えれば、ほどほどに不満がないと作家業も芸術家も、何も生み出せないってことだね。やっぱり平和とは遠いけど、ある程度平和じゃないとそれさえ選択できないからなー」
久美子「あすかっちの『Give Peace A Chance』の焦点ってそこよね」
あすか「うん。平和そのものより、平和が訪れたその先の世界だね。ちっとも平和じゃないんだ」
あすか「世間が平和でも結局、人には格差があってみんなが幸せになれるとは限らないからね。全員が望んだものを手に入れることが出来るわけじゃないし、大切なものを失った人は不幸だと感じるだろう。心の平和はなかなか得られないので、せめて一冊一冊に夢を託していきたいんだよ」
久美子(右)「幸せって、あすかっちの場合は『災いのない状態』じゃなくて『夢を叶え続けること』なのね。それはハードル高いわ」
あすか(左)「災いのない状態はないんだって、コロナ禍で知ったせいかもね」
ツヨシ「あすかっちの今度の小説のタイトルってジョン・レノンの歌なんだね。ぼくは平坦な音楽より熱い演奏のほうが好きだ。燃え上がるように激しいものが心に響くね。何か欲しいものがあったら考えるより先に行動だよ。でなきゃあっという間に歳を取ってしまう。前進前進に尽きるよ」
了くん「お前の頭の中に平和の2文字はないんだな」
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今回、ジョン・レノンの「イマジン」「ギブ・ピース・ア・チャンス」のうち、どちらかをタイトルにするとしたら、より多くの人に知られているのは「イマジン」なんですね。ですが、物語のイメージが少し違うので後者にしました。「イマジン」はひとりひとりが変革することを促しています。「ギブ・ピース・ア・チャンス」は、たくさんの正義の中に埋もれている平和な状態ただそれだけにスポットが当たっています。「ギブ・ピース・ア・チャンス」は全編を通して必死感が半端ないのです。













