藤村博士「こんにちは、サブカルチャーと専門書の古書店・哲山堂です。今日は散歩がてら、あすかさんからお預かりした古本が1冊売れましたんで、代金を届けに来ました」
あすか「ホントに売れたんだね」
藤村博士「西村佑子・著『魔女の薬草箱』が売れました。この本を口説き落とした甲斐がありましたよ。この著者はいま有名なドイツ文学者で、10年以上前に出版したこの本は装丁が凝っていて紙の質もいい。魔女に憧れる若い女性のアイテムとして持っていてもいいし、中身も薬草の紹介だけにとどまらず読み物としても面白いです。ヲタク的な人に受けるかなと思いましたが、あすかさんの学校の制服を着た女の子がお買い上げくださいました」
あすか「本の中身、全部暗記してるから手放したけど、うちの中学であれ読みこなせる生徒いるかなあ」
藤村博士「中学生なら隅から隅まで読むというより、好きなところをピックアップして読むでしょうね。内容はかなりマニアックですからね……あ、領収書よろしく」
あすか「お、手応え充分。古本屋さんって意外と美味しい?」
藤村博士「古物商の資格を取れば、古本屋は誰でも開けるんです。商品を手っ取り早く集めるには古書籍組合に入って、交換会の入札で自分の本屋で売れそうな本の束を手に入れるのがスタンダードなんですけど、ぼくの古書店は副業であり、これを生業にしているわけではないので、組合に入れてもらえないんです。だから、いい蔵書を持ってくるお客さんはありがたい存在です。ではまた」
翌日、学校で。
薫(右)「あすかっち~、昨日買った古本にね、恋のおまじないが載ってたの。セージの葉を3枚用意して、一枚目に『アダムとイヴ』って書いて、二枚目に自分の名前、三枚目に好きな人の名前を書いて、それを燃やして灰にして好きな人の食べ物に混ぜて食べさせると両思いになれるって。ツヨシくんのお弁当にコッソリ入れちゃった」
あすか(左)「え?」
あすか「ひょっとしてその本、『魔女の薬草箱』って本じゃない?」
薫「そうだけど……どうして知ってるの?」
あすか「その本は私が古本屋に売った本なんだよ」
薫「あー、あすかっちの本だったのか!」
あすか「な~んだ、買ってくれたの薫ちゃんだったのか。古本屋に売らずに薫ちゃんに譲ればよかった」
薫「それはダメだよ、あすかっち」
薫「タダじゃ素敵なおまじないの載ってる本の効果なくなるよ。たとえあすかっちから譲られたものでも、薫、対価は払うよ」
あすか「薫ちゃん、きみってつくづくいい人だねぇ。誰かにだまされないようにね~」
薫「薫が買った本はいい本だよ。騙されてないよぉ」
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薫ちゃんがいい人でよかったね、めでたしめでたし、なエピソードでした。「魔女の薬草箱」は、魔女が使っていたと思われる薬草を中心に解説していく本ですが、雑談も蘊蓄も多く、ジャンルとしては読み物と思っていいと考えられます。面白い本なので、本屋で見かけたら買ってみて下さい。












