雅やん「ばあちゃん、元気?」
ばあちゃん「元気なもんかね。医者に胃がんだって言われたよ」
雅やん「えーっ、ばあちゃんが?マジ?」
ばあちゃん「胃を切るか化学療法か緩和ケアか選べって言われたよ」
雅やん「そんなに悪いの?」
ばあちゃん「転移なぞはないけれど、がんが大きいと。切除すれば体力がなくなって辛い生活になるから、無理に取ろうとせんほうがええちゅうてるが、ばあちゃんあの医者嫌いだよ」
雅やん「医者の言うとおりにしたら?おれ病院ってほとんどかかったことないからよく分からないけど」
ばあちゃん「いやだね。医者の言うとおりにしたら年金もらう前にお迎えが来るよ」
雅やん「なんでさ」
ばあちゃん「ばあちゃんは完治したいから切ってほしいと言ったけど、枯れ木のようになって生きてどうすると言われたよ。孫も大学卒業して思い残すこともないだろうって。抗がん剤も副作用がしんどいだろうから緩和ケアを勧めてくるんだよ」
雅やん「ばあちゃんそんなに悪いなら医者の言うこと聞いてくれよ」
ばあちゃん「ばあちゃんはまだやりたいことがたくさんある。富士にも登ってないし『ファイナルファンタジー』も6までしかやってない。『アストリッドとラファエル』の最終回も観たい。自転車もまだ古くないから直したい。緩和ケアになったらもうそれも叶わない」
雅やん「ばあちゃん、それは間に合うよ」
ばあちゃん「ばあちゃんはあと30年は生きるつもりだ。生きているうちに『ベルセルク』の最終巻読みたいね」
雅やん「作者は未完のまま亡くなっちゃったよ」
ばあちゃん「作者のお友達が続きを描いてる」
雅やん「よく知ってるね」
ばあちゃん「お前も早く連載せえ」
雅やん「編集会議ってものがあって、それを通らないと連載出来ないんだよ」
雅やん「ばあちゃん、おれ、ばあちゃんのこと忘れないから先生の言うこと聞いてくれよ。エンディングノート用意して、ちゃんと終活してくれよ」
ばあちゃん「お前までばあちゃんが要らないのかい。ばあちゃん悲しいよ。ばあちゃん医者を替えるつもりだよ。あの医者はダメだ、ばあちゃんみたいな年寄りは診たくないって、この国は高齢化しすぎているからばあちゃんが生きていても生産性がないとはっきり言った。子供をもう産むこともないし、著名人でもない。ばあちゃんは周囲に惜しまれつつ去るのが花じゃと。ひどい医者だよ、自分も年寄りのくせに」
雅やん「ばあちゃん、今日来たのはそんな話聞くためじゃないんだ。なんにも聞かずにお金貸して!10万、いや5万でいいから」
ばあちゃん「お前、お金無心に来たのかい。淋しいね。仏壇の上にあるよ」
雅やん「じゃあ、ばあちゃん、おれはこれで。元気でね」
ばあちゃん「お前とはもう話したくない。金もこれ以上やらん。二度と顔を見せるな」
ばあちゃん「淋しいね。あたしゃまだ心の中は18の乙女と一緒だよ。こんな婆さんになっても、まだまだ生きて人生を楽しみたいよ。それはみんな同じなのに、みんなであたしを邪魔にする。ちゃんと年金かけてあるのに、どうして自分の人生を他人に決められなきゃならないんだ。雅治も大学の入学金出してやったのはあたしなのに、それ以降、金策にしか来ない。用が済んだらさっさとあの世へいけってかい。冷たいね、冷たいね」
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雅やんのばあちゃんは医者を替え、胃を1/3切り取りました。そのあと超人的な回復力を見せ、翌年、富士山登頂成功させ、ゲームやコミックに興じている毎日です。雅やんはしばらく実家に入れてもらえませんでした。







